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1枚のタッチモニターへ多くの機能を集約

ボルボのまったく新しいコンパクト電動クロスオーバー、EX30が英国にもやって来た。そのインテリアには、実際に押せるハードスイッチが殆ど存在せず、メーター用モニターもない。1枚のタッチモニターへ、多くの機能が集約されている。過多なほどに。

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縦長のタッチモニターは、確かに大きい。とはいえ、車載機能を操作するスイッチやノブ、メーターパネルなどを有意義なカタチで省けると、ボルボのデザイナーは本気で考えたのだろうか。本当にシンプルで軽量で、サスティナブルだといえるのだろうか。


ボルボEX30 ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラ(英国仕様)

筆者には、EX30のインテリアへ疑問を抱かずにいられない。未来を見据えたクロスオーバーを作るため、他にできることがあったのではないかと思う。

部品点数を減らせば、製造時の複雑さは減り、省エネや時短に繋がる。環境負荷を多少は抑えられるだろう。同時に、ボルボは製造コストも抑えることができる。

しかし、同社が伝統的に強みとしてきた、使いやすさや親しみやすさなどへ、悪影響がないとはいえない。優れたデザインとは、見た目だけでなく、全体的に優れたソリューションを導くものではないかと思う。

AUTOCARでは、EX30のライバルを数台揃えて、比較試乗をしようと計画している。バッテリーEVとしての走りだけでなく、インテリアデザインについても、他のモデルとの比較を通じて考察する予定だ。

プレミアムな雰囲気を醸し出す内装

誤解しないで欲しいが、基本的に、新しいEX30は素晴らしいクロスオーバーだと思う。デジタル的な使い勝手に関して、冒頭の数センテンスを割いてしまうのは、残念に感じるほど。同社のデザインの次章として、見た目も望ましい。

EX30は、スマート#1とプラットフォームを共有している。その広々とした車内と比べると、リアシート側は若干狭く感じられる。とはいえ、フロントシート側は身長の高い大人でも不満は出ないだろう。


ボルボEX30 ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラ(英国仕様)

エントリーグレードの内装でも、ドアパネルなどに特徴的な素材が用いられ、落ち着いた造形と相まって、プレミアムな雰囲気を醸し出している。僅かに残された、ハードスイッチのタッチはソリッド。製造品質の高さも、指先を通じて感じ取れる。

ダッシュボードの中央には、先述の大きなタッチモニターが据えられている。ボルボの担当者は、無線通信によるソフトウエアのアップデートに対応し、今も改良は継続中だと説明していた。

現在のシステムは、カーナビのマップ画面から音楽のプレイリストへの切り替えや、スピードメーターとトリップコンピューターの表示などに、数回のタップが必要。日常的な運転で想定される操作でも、前方への集中が疎かになる可能性がある。

ある程度覚えてしまえば、確かに短時間で実行できることは事実だ。オートワイパーの間欠時間の変更などは、慣れれば5秒もかからずにできるだろう。それでも殆どの場合、メニューを2・3回掘り下げなければならない。

428psを効果的に活用できないシャシー

5秒以上前方から目線が逸れると、ドライバーの監視システムが警告を鳴らす。煩わしい場合は、監視システムをオフにはできる。だが、それは安全といえるだろうか。

ドライバー監視システムという技術は、現在のモデルへ求められる重要なものだと思う。この点で、ボルボを批判するつもりはない。表示情報の多いヘッドアップ・ディスプレイが装備されていれば、ずっと運転のしやすさは高まるはず。


ボルボEX30 ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラ(英国仕様)

今回試乗したEX30は、ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラというグレード。最高出力は428psもあり、場面によっては不必要に感じるほどパワフルだった。これほどの動力性能を備えているなら、見やすいスピードメーターは歓迎されるだろう。

全長は、新しいフォルクスワーゲン・ティグアンより約300mmも短い。それでいて車重は1885kgあり、遥かに重い。パワフルなツインモーターを搭載するが、ストロークの長いサスペンションも与えられている。

0-100km/h加速は、少々誇張気味のようだが、3.6秒が主張されている。しかし実際のところ、秀でた動力性能を効果的に活用できるほど、姿勢制御や操縦性に締まりはないといえるだろう。

このクラスのクロスオーバーとして、加速力は例外的に鋭い。だがシャシーはそれに追いつけず、速く運転するほど、深みにハマっていくような印象だった。

シングルモーターの方がバランスが良い?

滑らかなアスファルトでは好印象で、幹線道路やロータリー交差点での落ち着きも良好。ところが郊外の道を飛ばし始めると、姿勢制御が落ち着かなくなっていく。かつてのボルボのように、ドライバーを優しく包み込む安心感や信頼感は得にくい。

実際にステアリングホイールを握っていないので、推測ではあるが、シングルモーター版の方が、動力性能とシャシーとのバランスは優れるのではないかと思う。ボルボも、ツインモーター版より売れると予想しているから、準備ができ次第試乗してみたい。


ボルボEX30 ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラ(英国仕様)

今回のツインモーター・パフォーマンス・ウルトラは、方向性が定まりきっていないといえるだろう。持続可能性を優先しているのか、過激な走りを求めているのか。

EX30に載る駆動用モーターは、ボルボXC60の後継モデルに当たる、次期バッテリーEVにも搭載予定だそうだ。小さなクロスオーバーには、少し手に余るユニットなのかもしれない。

ボルボEX30 ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラ(英国仕様)のスペック

英国価格:4万4495ポンド(約841万円)
全長:4233mm
全幅:1836mm
全高:1549mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:3.6秒
航続距離:449km
電費:5.7km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1885kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
バッテリー:64.0kWh(実容量)
急速充電能力:−kW
最高出力:428ps
最大トルク:55.2kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)