80歳を超えた方から片づけの依頼を受けることも多い、整理収納アドバイザーの木村充子さん。じつは、実際にお宅に伺うと、捨てることに抵抗感を示す方がほとんどだと言います。そんなときにはまず3つのものから捨てることで、抵抗感が少なくなるそう。詳しく語ります。自分で行う「実家の片づけ」の参考に。

「口に入れるもの」から処分して捨てることに慣れる

筆者がご高齢の方のお宅に伺った際に、最初に捨てていただくのは傷んでいる食品、消費期限や賞味期限の切れている食品やサプリメントなどです。口に入れると健康上好ましくないものは、最優先で処分します。

どのお宅にもあるのが、評判を聞いて購入したものの続かなかったサプリメントや健康食品。賞味期限が切れている場合、万が一トラブルが起きても補償の対象外となるため注意が必要です。

さらに注意が必要なのが定期購入している食品やサプリメント。手軽に申し込める反面、一度申し込みをすると止めるのが面倒で、気づいたらストックの山、というお宅を多く見てきました。消費できる分だけ購入することが大切です。

食品やサプリメントから捨てるのは、健康上好ましくないものを口に入れることを防ぐ目的に加えて、期限が明記されているため、捨てることに抵抗のある高齢の方でも捨てやすく、捨てることに慣れていただくことができるためです。

古い靴は壊れてケガにつながることも

次に玄関に行き、靴を確認します。玄関に靴がところ狭しと並んでいても、実際に履いている靴は数足で、大半は何年も履いていないことがほとんどです。

手入れをしていない古い靴は、靴底が剥がれたり、素材によってはボロボロと崩れることもあります。外出先でそのようなことがあっては、大きなケガにつながりかねません。危険性を説明し、捨てるか、すぐに修理に出すかを1足ずつ決めていきます。

古い靴を捨てる理由はもうひとつあります。玄関は小さなスペースなので、古い靴を捨てるだけで見違えるようにすっきりするからです。小さなスペースから片づけることで達成感を得やすく、家全体を片づける大きな後押しになります。

「ないほうが安全で清潔」なマットも捨てる

靴の次は、家じゅうのマット類を捨てます。

なぜなら、マットがすべって転倒する危険を未然に防ぐため。どうしても敷きたい場合は、必ず滑り止めをつけます。

ご高齢の方は、床の汚れ防止のために「トイレやキッチンにはマットを敷くもの」と思いこんでいることが多いのですが、マットを剥がすとゴミだらけだったり、しばらく洗っていなかったり、不衛生な状態のことがほとんどです。マットを捨ててこまめに床を拭くほうが、はるかにラクで衛生的です。

あるのが当然だと思いこんでいたものでも、ないほうが暮らしやすくなることを実感すると、捨て上手へ一歩近づきます。

ご高齢の方の捨てることへの抵抗感は、期限のあるものから捨て始め、小さなスペースが整う喜びや、ものがないことで暮らしやすくなることを感じて頂くと、少なくなります。そして、健康を損ねる可能性のあるものや、けがの恐れのあるものなどから捨てることが大切です。

実家の片づけでお悩みの方は、無理に捨てさせるのではなく、捨てる順序を見直してみてはいかがでしょうか。