西村優菜インタビュー(前編)

昨季、出場機会が限られた状況でありながら、果敢に米女子ツアー挑戦を決めた西村優菜(23歳)。慣れない環境のなかでも奮闘を重ね、第1回リシャッフルで中盤戦以降の出場権を得た。そして、最終的にはCMEグローブ ポイントランキング48位となって、今季米ツアーのシード権を見事に獲得した。アメリカでのさらなる活躍が期待される彼女に、米ツアー1年目の戦いを振り返ってもらいつつ、2年目となる今シーズンへの意気込みを聞いた――。


米ツアー参戦1年目、序盤戦は「ずっと迷いもあった」という西村優菜。photo by Getty Images

――2021年から3年連続でこの時期にインタビューを行なってきました。国内ツアーが主戦場だった頃は「複数回優勝」「メルセデスランキング5位以内」という目標を完遂し、昨季も「米ツアーのシード権獲得」と明言し、それを達成しました。見事な"有言実行"が続きますね。

西村優菜(以下、西村)昨年は本当に難しいシーズンでした。一昨年にチャレンジしたQシリーズ(米女子ツアーの最終予選会)の結果がよくなかったので(出場機会が限定される24位フィニッシュ)、シーズンの序盤はどの試合に出られて、どの試合に出られないのかがわからなかった。

 実際には大半の試合に出場できたんですけど、現地に入って欠場者が出るのを待つウエイティング状態だったことも2試合ほどありました。それに、リシャッフル(出場優先順位の入れ替え)の壁も高くて、必死で前を向いてゴルフをしているんだけど、なかなか技術的なところが伴わない時期が長かったかなと思います。

――米ツアー本格参戦ということで、移動や食事など、ゴルフ以外に気を遣う場面も多かったのではないですか。

西村 日本に比べて移動はもちろん大変でしたし、ホテルにしても日本みたいに整っているわけではないし......。生活面のギャップに、戸惑いもありました。でも一番は、アメリカのコースで戦うにはどうしたらいいのか、という悩みですよね。

――やはり、芝質の違いですか。

西村 芝ですね。前半戦の試合はグリーンが結構固くて、自分の持ち合わせた技術ではボールを止められない感じでした。そこで、マネジメントにしても、どんなスイングで対応するかにしても、いろいろと頭で考えながらやっていくうちに、何が正解なのかわからなくなる、という難しいサイクルに入ってしまって。

――西村プロにとっての初戦、ドライブオン選手権(アリゾナ州)は予選落ちでした。

西村 アリゾナのグリーンは固くて、練習ラウンドでは自分のなかで「難しいコース」という印象だったんです。ところが、いざふたを開けてみると、予選通過のカットラインがアンダーパーだった。自分の予想と周囲の結果がズレていて、「アレ?」という感じでした。

 それで、試合のプランニングに狂いが生じました。「こんなにレベルが高いんだ」と。ロングヒッターが多い米ツアーの選手は、自分とはまったく違う戦い方をして、難しいコースでもアンダーパーカットになるぐらいスコアを伸ばすんだな、と改めて思いました。

 日本の難しいコースならセッティングを含めて、守りに入りながら我慢のゴルフを続けてチャンスを待てばよかった。それでは通用しないということを痛感した初戦でした。

――そこから、1回目のリシャッフル(5月)までにはアジャストできたのでしょうか。

西村 リシャッフルまでの試合は、ほぼ全試合と言っていいぐらい、初日のスコアが悪かったんです。今になって振り返ると、練習ラウンドで感じたコースの印象とスコアがマッチしないことが続いたから、弱気に初日を迎えてしまっていたんだと思います。

 序盤戦はもう、ゴルフがぜんぜんダメで。自分の強みでもあるショットがまったく戻ってこなかったし、固いグリーンをどう攻略するのか、迷いもずっとありました。初日の予選通過圏外から、どうやって予選を通過するか。そのことばかりを考えていました。

 なんとか、リシャッフルはクリアしましたけど、ゴルフのスキルが上がったというよりは、もがきながら、気合で一打、一打諦めずにプレーした結果だったと思います。

――米ツアー初挑戦で、ラウンド経験のないコースばかりだったと思います。それが、混乱の要因でしょうか。

西村 そうですね。毎週、月曜日に入って練習ラウンドを行なってはいたんですが、コースを難しく感じてしまっていましたね。日本ツアーから米ツアーに挑戦したギャップだったと思います。毎試合、コースの雰囲気も違うし、毎週違った難しさを感じていました。

――毎試合、月曜日に練習ラウンドを行なっていたんですか。

西村 シーズン序盤は、(水曜日に行なわれる)プロアマ戦の出場メンバーに入れず、水曜日にラウンドすることができなかったので、月曜と火曜にラウンドするサイクルでした。また、マンデートーナメントから参加するかもしれない試合もあったので。

――日曜日に試合を終えて、すぐに次週のコースに移動して月曜日からラウンドするなんて、日本では考えられなかったことではないですか。

西村(月曜日から)ラウンドするとしても、メジャー大会ぐらいでした。アメリカはほとんど4日間競技なので、知らないコースは月曜日に入っていましたね。

――もともと飛距離にこだわらず、「頭を使ったゴルフが好き」と公言されています。とはいえ、飛距離(パワー)の差を痛感することもあったのではないですか。

西村 正直、きつかったですね。特に、ポーリー・マック(24歳)という私と同じQスクールを通過して参戦したドイツの選手には、私のドライバーショットを2番アイアンで普通にキャリーオーバーされたこともありました。とにかく飛ばし屋はたくさんいます。

――そんな規格外の選手ばかりだと、つい自身も飛ばそうと力が入ってしまうのではないですか。

西村 飛距離は急激に伸びるものではないと割りきっているので、自分が磨けることを磨くしかないと思っています。同じ2打目でも、ずいぶんと後ろのほうから打つ私が先にピンに寄せられたら、(あとから打つ選手に対して)いくら飛んでいてもプレッシャーを与えられると思うので。

――アメリカにはどなたが帯同していたのでしょうか。

西村 母とマネジャーさんですね。もし私ひとりだったら、途中で帰国していたかもしれないぐらい、(ふたりの)存在はすごく大きかった。特に母とは、キッチンのあるホテルに泊まって、食事を作ってもらっていたので、食べ物のストレスがまったくなかったのは大きいです。

――アメリカで戦っていく手応えを感じたのはどれぐらいの時期でしょうか。

西村 9月に入って、一度、日本に帰った時ぐらいですね。

(つづく)◆西村優菜、予選落ちが続くも米ツアーでシード権を獲得できたワケ>>

西村優菜(にしむら・ゆな)
2000年8月4日生まれ。大阪府出身。2019年にプロテストに合格。2020−2021シーズンからツアー本格参戦を果たし、いきなりツアー4勝をマーク。賞金ランキング5位という結果を残す。2022シーズンもツアー2勝を飾って、メルセデスランキング5位、賞金ランキング2位という好成績で終えた。2023シーズンからは米ツアーに挑戦。厳しい条件下にありながら、CMEグローブ ポイントランキング48位となって今季シード権を獲得した。身長150cm。血液型O。