決勝トーナメント1回戦が始まるチャンピオンズリーグ(CL)。シーズン開幕当初より昇り調子にあるチーム、シーズン終盤に向けて調子を上げていきそうなチームに幸は訪れる。

 対戦カードは以下の8試合だ。

・コペンハーゲン対マンチェスター・シティ
・ライプツィヒ対レアル・マドリード
・パリ・サンジェルマン(PSG)対レアル・ソシエダ
・ラツィオ対バイエルン
・インテル対アトレティコ・マドリード
・PSV対ドルトムント
・ポルト対アーセナル
・ナポリ対バルセロナ

 英国のブックメーカー各社による優勝争いの下馬評の順番は以下のとおりだ。

1)マンチェスター・シティ、2)バイエルン、3)アーセナル、レアル・マドリード、5)PSG、6)インテル、7)バルセロナ、8)ドルトムント、9)アトレティコ・マドリード、10)ナポリ、11)レアル・ソシエダ、12)ライプツィヒ、13)ポルト、14)PSV、15)ラツィオ、16)コペンハーゲン

 下馬評との関係で、競った試合になると予想されるのはインテル対アトレティコ、ナポリ対バルセロナ。逆に差があると予想されるのがコペンハーゲン対マンチェスター・シティ、ラツィオ対バイエルンだ。

 2連覇を狙うマンチェスター・シティにとってコペンハーゲンは容易な相手だろう。準々決勝で競るような相手と対戦したとき、対応しにくくなるのではないかと、逆に心配になる。プレミアではリバプールに次いで現在2位(2月12日時点)。余力が十分ありそうな戦いぶりだが、1992年に始まるCLの30余年の歴史において、連覇を達成したチームはレアル・マドリード(3連覇)しかない。その最大の原因は標的になりやすいことだ。また内的原因を挙げれば、受け身になること。チャレンジャー精神に欠ける、悪い意味での横綱相撲を取りがちな傾向があるからだ。

 ジョゼップ・グアルディオラは監督として連覇を狙うチャンスは今季で3度目になるが、逸した過去2回も本命の立場で臨んでいた。いずれもバルセロナ時代の話だが、それぞれ準決勝でインテル、チェルシーに足元をすくわれている。2度あることは3度あるか、3度目の正直か。今季の見どころはこれに尽きる。

【鎌田大地の出場機会に期待】

 マンチェスター・シティに次いで推されているバイエルンはラツィオと対戦する。鎌田大地は直近の国内リーグ戦で、わずか10数分ながら4試合ぶりに出場を果たしている。相手は降格圏に沈むカリアリ。主力を次に控えるバイエルン戦のために休ませるためだったのか。逆に調子が上がってきた鎌田をバイエルン戦に使おうと、足慣らしをさせたのか。これまでの経緯を見るとあまり楽観的にはなれないが、CLの舞台で活躍すれば、選手としての可能性が広がることは確かだ。出場の機会が巡ってくることに期待したい。

 レアル・マドリードと3番人気を分け合うアーセナルは、ポルトとのアウェー戦に臨む。

 そこで心配になるのが、冨安健洋だ。アジアカップから想定外の早さでチームに復帰したまではよかったが、以降の2試合、試合に出場していないどころか、ベンチ登録にも入っていない。ケガなのか、アジアカップの疲労残りなのか定かではないが、この流れでいきなりCLの決勝トーナメントに出場するとは考えにくい。左右のサイドバックを中心にスタメンを飾る率が上昇していただけに残念である。

 アーセナルといえば、日本人選手が所属するCL出場クラブのなかでも断トツ最高ランクだ。このクラスの選手をアジアカップに招集するべきか。もう少し議論があってもよかったのではないか。選手のCL出場こそが日本代表強化の近道であるとは筆者の見解だ。


2月14日、パリ・サンジェルマンと対戦するレアル・ソシエダの久保建英 photo by Nakashima Daisuke

 つまり、レアル・ソシエダの久保建英は、日本人で出場が確実視される唯一の選手になる。相手はPSG。PSGといえば、同じくアジアカップに出場した韓国のイ・ガンインの名前が出てくる。ともに2001年生まれの22歳。左利き、前所属クラブがマジョルカである点でも一致する。久保が2シーズン前、レアル・ソシエダ入りしたのに対し、イ・ガンインがPSG入りしたのは昨シーズン。マジョルカを早く卒業したのは久保だったが、急な昇りの階段を上がったのは卒業が1年遅れたイ・ガンインだった。

【PSGは右肩上がりの強敵】

 5番人気対11番人気。PSGホームの第1戦は、大手ブックメーカーのひとつウィリアムヒル社の予想によれば、PSG勝利が1.60倍、引き分けが4倍、敗戦が5倍だ。そういう意味では久保とレアル・ソシエダはチャレンジャーの立場で臨む。

 イ・ガンインは11月に入った頃からスタメンに定着。トップ下及び左サイドを主戦場に活躍する。右ウイングとして花開いた久保とは、同じ左利きながらプレースタイルがわずかに異なる。イ・ガンインのほうが左でもやれる分、広角だ。

 アジアカップではタフネスぶりも見せつけた。延長戦を含む5試合、ほぼフル出場を果たした。途中交代はわずかに1度。オーストラリア戦(準々決勝)の延長後半のロスタイムだった。使い詰めだったその反動からか、10日土曜日に行なわれた前戦(リール戦)はベンチ登録にも入っていない。レアル・ソシエダ戦こそがアジアカップ後、初の試合となる。

 そのPSGはグループリーグで苦戦した。2勝2分け2敗。ミランと勝ち点8で並んだが、UEFAの規定によりかろうじて通過を果たした。リオネル・メッシ、ネイマールの抜けた穴が大きいかに見えた。ところがシーズンが進むにつれ、調子は右肩上がりに転じている。金満クラブのイーメージが消え、まとまりのよい好チームに変貌中と見る。標的にされてきたこれまでとは、立ち位置が入れ替わったかのような印象を受ける。

 5番人気なのでダークホースとは言えないが、メッシ、ネイマールがいないからと、マンチェスター・シティ、バイエルン、アーセナル、レアル・マドリードらが油断すると、波乱が起きるかもしれない。

 浮沈のカギを握るのは、今季バルサからやってきたウスマン・デンベレ。右ウイングとして安定したプレーができるか。

 他方、久保建英がレアル・ソシエダを卒業するためにはPSG戦での活躍が必須になる。相手の右ウイング、デンベレに負けないプレーができるかだ。見せつけたいのは突破力と決定力だ。1トップ下でプレーしたアジアカップがそうだったように、FW、アタッカーというより、中盤選手然とした粒の小さいプレーをすると評価は上がらない。

 ベスト16の内訳は、スペイン勢4、イタリア勢とドイツ勢各3に対し、イングランド勢は2。ここ十数年の流れとは異なり、数的に見るとイングランド勢に元気がない。たまたまなのか。何かの始まりなのか。欧州内の勢力争いにも目を凝らしたい。