今年で117回目となる伝統の重賞、GII京都記念(2月11日/京都・芝2200m)。京都競馬場の改修工事により、過去3年は阪神競馬場で開催されてきたが、4年ぶりに本来の舞台となる京都で開催される。

 GI馬の参戦も多く、比較的堅いレースといった印象のある一戦だが、一昨年には今年も出走するアフリカンゴールド(せん9歳)が12番人気で逃げきり勝ち。人気馬総崩れの大荒れとなって、3連単では67万9100円という高額配当が飛び出した。

 他にも過去には、ジェンティルドンナやハープスターといった断然の人気馬が馬群に沈んで好配当が生まれている。そして今年は、超一線級の参戦がなく、絶対的な本命が不在。波乱ムードが充満している。

 そうした状況に、さらに拍車をかけているのが京都競馬場の馬場状態だ。今年は年明けからの連続開催で、馬場の傷みはかなり顕著なものになっている。その点について、デイリー馬三郎の吉田順一記者が解説する。

「先週からCコースを使用していますが、相変わらず芝の塊が飛んでおり、全体的に荒れている状態に変わりはありません。そのうえで、含水率によって傾向が変わってきており、乾燥度が強まれば外差しが利きにくく、芝の水分量が多くなれば外差しが決まりやすくなっています」

 吉田記者は続けて、今週の馬場状態についてこう分析する。

「馬場状態がコロコロと変わる傾向があるなか、今週は週明けにまとまった雨量があって、その後は基本的に低気温。先週同様、馬場は乾きづらく、良馬場でもやや重に近いぐらいの含水率が予想されます。

 ペース次第では後方待機馬の外伸びも十分にありますが、外回りは前を行く馬が必然的に外のいいスペースを通る可能性が高く、基本的には競馬を作れる前の組が優勢です。とはいえ、坂の下りから内をあけての距離ロスが前の組に生じるようだと、内から一発を狙う人気薄馬にもチャンスが見えてきます。

 いずれにしても、時計や上がりがかかれば、好走できる馬が増えるのは確かです」

 こうした馬場状態なども考慮して、吉田記者は「人気や実績を踏まえれば、(今年のレースは)プラダリア(牡5歳)、ルージュエヴァイユ(牝5歳)、ベラジオオペラ(牡4歳)の三つ巴」と見ている。なかでも、ベラジオオペラには一目置いているようだ。

「ベラジオオペラはデビュー以来、6戦4勝。敗れたのは、GIの皐月賞(10着。4月16日/中山・芝2000m)と日本ダービー(4着。5月28日/東京・芝2400m)だけです。

 とりわけ皐月賞は、関東圏への遠征が年明け3戦目。それも、道悪のGIIスプリングS(1着。3月19日/中山・芝1800m)を走った疲れを抱えたままで、間隔の詰まったローテーションが明らかに堪えたものでした。

 そこから中5週で迎えたダービーは、4度目の関東遠征でさすがに上がり目はないと見ていましたが、4着と善戦。1枠1番という好枠を生かしたとはいえ、勝ったタスティエーラからタイム差なしの奮闘は評価できます。

 秋はクラシック戦線をパス。長期休養のなかで春の疲れを取りつつ、さらなる成長をうながして、20kg増で臨んだ復帰戦の前走・GIIIチャレンジC(1着。12月2日/阪神・芝2000m)では底力を示しました。

 その後も無理使いせずに、今年はここから始動。中間の攻め気配は前走以上で、立ち回りのうまさや馬場適性を考えれば、中心は揺るがないでしょう」

 こうして、吉田記者はベラジオオペラを中心視しながらも、好配当ゲットも見据えて2頭のヒモ穴馬をピックアップする。

「1番手は、ブレイヴロッカー(牡4歳)。460kg前後のドゥラメンテ産駒で、ここにきて本格化し、2勝クラス、3勝クラスと連勝中です。

 その要因として考えられるのは、以前に比べると、パドックでも推進力とリズムがよくなっている点。それが、操縦性のよさにつながっている印象です。


京都記念での上位争いが期待されるブレイヴロッカー。photo by Eiichi Yamane/AFLO

 調教では頭が高めでシャープさを欠いていましたが、もともとが実戦向きで時計は合格点。つなぎの短さや走法から、今の荒れた京都の馬場も合うイメージです。スペースを見つけて、きっちりと差し込んでくるのではないでしょうか」

 吉田記者が推すもう1頭は、プラチナトレジャー(牡6歳)。こちらも、前走で3勝クラスを勝ち上がってきた馬だ。

「前走の3勝クラス・甲斐路S(10月22日/東京・芝2000m)を勝ってオープン入り。荒れ馬場も問題なくこなすキングカメハメハ産駒で、つなぎは短めで破折気味の脚元やグリップ力のある走法から、今の京都コースも合うはずです」

 重賞は3歳時のGIII共同通信杯(7着。東京・芝1800m)以来、実に3年ぶりの出走だが、吉田記者は7番人気での激走を決めた前走の再現を期待する。

「前走は斤量や時計がかかる流れなど、恵まれた部分はあります。ただ今回も、馬場やメンバー構成からして、時計勝負にならない点は好材料。鞍上が距離ロスを避ける騎乗をする岩田康誠騎手なら、一発の魅力を感じます」

 昨年はダービー馬のドウデュースが圧勝した歴史ある一戦だが、抜けた本命馬不在の今年は"大荒れ"もある。ここに挙げた2頭が高配当を演出してもおかしくない。