第41回 全農 日本カーリング選手権大会の女子はSC軽井沢クラブの初優勝で幕を閉じた。

 準決勝の中部電力戦に続き、決勝の北海道銀行戦と、いずれもスキップの上野美優がラストロックで2点を奪う難しいドローを決めての劇的な逆転勝利だった。今大会の主役となった上野美が語る。

「準決勝、決勝と接戦となったんですけど、チームのみんなを信じて一投一投を運んでいけたのが、勝利につながったのかなと思います」

 さらに上野美は、「強力なスイーパーと、頼もしいバイス(スキップ)がいて、投げればどうにかしてくれるだろうっていう信頼のもと、投げることができた」と続けたが、SC軽井沢クラブの強さは、上野美のドローをチームショットとしてスコアに直結させることだった。

 上野美の妹でリードの上野結生、セカンドの西室淳子らは、自らのショットがたとえ乱れたとしても「(最後に)上野美がなんとかしてくれる」と、冷静なスイープに注力する切り替えのよさを失わなかった。サードでバイススキップの金井亜翠香もしかり。上野美につなげるショットやコールに力を注いでいた。

 チームの信条は粘り強さ。ミスが出ても、上野美の2投がそろえば、チームは大崩れしない――その共通認識があったからこそ、ロコ・ソラーレ、中部電力、北海道銀行といった強豪相手にも、土壇場での逆転劇を信じてプレーできていた印象だ。

 SC軽井沢クラブはこのあと、3月16日にカナダ・ノバスコシア州シドニーで開幕する世界選手権に日本代表として出場する。2026年ミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックの出場権を巡る重要な大会だ。上野美は言う。

「カッコよくはいかないかもしれないんですけど、がむしゃらに走りきって、いい世界選手権にしたい」


日本選手権を制したSC軽井沢クラブ。写真左から、リード上野結生、セカンド西室淳子、サード金井亜翠香、スキップ上野美優、フィフス両川萌音、西室雄二コーチ。photo by (C)JCA/H.IDE

 さて、その2026年五輪だが、出場枠は「10」。今年と来年の世界選手権の結果に応じたポイントが出場各国に与えられ、総合ポイント上位7位(開催国のイタリアが7位以内なら8位)までに入れば、出場権を獲得できる。残り2枠は、五輪直前に行なわれる予定の世界最終予選によって決まる。

 国内選考については、今回優勝のSC軽井沢クラブと来年(2025年)の日本選手権優勝チーム、そして来年の日本選手権開幕時の世界ランキング最上位チーム、最大3チームによる五輪代表トライアルで決定する。

 つまり、過去2大会の五輪でメダルを獲得し、今回の日本選手権でも本命視されていたロコ・ソラーレをはじめ、準優勝の北海道銀行、3位の中部電力などにも五輪出場のチャンスはまだある。

 ただし、世界ランキング最上位チームに関しては、今回の日本選手権、来年の日本選手権のいずれかで3位以内に入賞していないと、その資格を満たさない。現状、世界ランキング最上位はロコ・ソラーレだが、今回の日本選手権では4位という成績に終わった。もし来年の日本選手権でも4位以下になると、その時点で3大会連続の五輪出場はなくなってしまう。

 2016年世界選手権で銀メダルを獲得して以降、トップランナーとしての揺るぎない地位を築いてきたロコ・ソラーレだが、日本選手権でまさかの2次リーグ敗退を喫して、スキップの藤澤五月も、サードの吉田知那美も「崖っぷち」という言葉で現状を表現した。

 はたして、「女王」ロコ・ソラーレの復権はあるのか。それとも、世界を知ることでより逞しさを増していくであろうSC軽井沢クラブが再びその前に立ちはだかるのか。あるいは、北海道銀行、中部電力、フォルティウスらの台頭があるのか。

 五輪開幕まで2年。イタリアへのレースは本格化していく。