by Jeramey Jannene

スーパーマリオシリーズに登場する敵キャラクター「クッパ」(英語名:バウザー)と同名の人物が任天堂の著作権を侵害したとして一時期盛んに報じられたことがありました。渦中の人物であったゲイリー・バウザーについて、一体何をした人物なのか、2024年時点で何をしているのかについて、イギリスメディアのThe Guardianが紹介しました。

The man who owes Nintendo $14m: Gary Bowser and gaming’s most infamous piracy case | Games | The Guardian

https://www.theguardian.com/games/2024/feb/01/the-man-who-owes-nintendo-14m-gary-bowser-and-gamings-most-infamous-piracy-case

バウザーはハッキングチーム「Team Xecuter」に所属するハッカーで、組織をあげて任天堂ゲーム機をハッキングするためのツールを販売していました。その歴史は古くとも2013年のニンテンドー3DSハッキングツールにさかのぼりますが、2021年にハッキング済みのNintendo Switchを販売したことを理由に任天堂のアメリカ法人であるNintendo of Americaから著作権侵害で訴えられました。一連のツールによって任天堂だけでなく各ゲームソフトのメーカーも被害を受けたとされ、被害総額は約6500万ドル(当時のレートで約75億円)にも上るとみられていました。

2021年10月、バウザーは技術的手段の回避および回避装置の売買を実行したこと等を認め、任天堂に450万ドル(当時のレートで約5億2000万円)の賠償金を支払うことに同意。さらに別の訴訟において1000万ドル(当時のレートで約12億円)の賠償金支払いも命じられました。最終的にバウザーは裁判所から禁錮3年4カ月の有罪判決を受け、刑に服していました。

「クッパ」と同名のハッカー組織リーダーに禁錮3年4カ月の有罪判決 - GIGAZINE



by MattCC716

The Guardianによると、バウザーは刑務所内での善行が認められて刑期が14カ月に短縮されており、2023年4月にすでに出所しているとのこと。

取材に応じたバウザーが話したところによると、出所後しばらくは友人の家に寝泊まりする生活が続き、取材時点ではなんとか住居を確保して生活しているそうです。支払いが命じられた1450万ドルのうち一部はすでに返済しているものの、手持ちもなく、家賃を除いた数百ドル(数万円)を切り崩して地道に返していくほかない状況にあり、おそらく残りの人生のすべてをかけて返済していくことになるといいます。

機械技師の父の下に生まれたバウザーは子どもの頃から電子機器いじりに明け暮れており、鉄道模型の配線や電卓の改造などを楽しんでいたとのこと。その後バウザーはインターネットカフェを経営し、ハードウェアの修理で生計を立てるようになったそうです。



by Minh Hoang

2000年代後半、バウザーはゲーム機のコピー防止策を回避する機器を製造するグループ「Team Xecuter」と接触。バウザーはTeam Xecuterのウェブサイト更新を担当するようになり、社交的ではなかった同僚に代わり「テスター」たちのトラブルシューティングを手伝うこともあったそうです。

2020年9月、バウザーはおとり捜査により逮捕され、共同被告とともに「長年にわたり違法な利益を得てきた悪名高い国際犯罪集団のリーダー」として起訴されました。

逮捕当時の出来事についてバウザーは「朝の4時でした。前の晩に酒を飲んで寝ていたのですが、目が覚めると3人の人間が私のベッドを取り囲み、ライフルで私の頭を狙っていました」と述懐。起訴内容についても「自分は製品を作ったり開発したりしたわけではなく、何が買えるかを伝えるウェブサイトを更新しただけだった」として「疑惑と闘うこともできた」と考えていたそうです。ただし、かけられた13件もの容疑を晴らすには時間もお金もかかるため、2件の容疑を認めて取引する方が簡単だったといいます。



バウザーは、求職中であること、象皮病にかかっていることなどを理由に現在は貧困状態にあるとし、「払えるだけ払うつもりですが、大した金額ではないことは確かです」「もっと悪くなる可能性もあります」と述べているとのこと。いずれにせよバウザーが犯罪に関与したのは事実であり、裁判所から命じられた1450万ドルを生涯をかけて返す必要があります。