過去に日本が4度の優勝を果たしているアジアカップとはいえ、毎回必ず好成績を残せるわけではない。

 最近の結果を見ても、2011年大会以降は優勝がなく、2019年の前回大会はそれでも準優勝だったが、2015年の前々回大会はベスト8敗退に終わっている。

 それを考えれば、今回、日本が同じくベスト8で敗退してしまったことも、決して驚く結果ではない。

 ただし、9年前の日本は明らかに強かった。大会を見ていて、日本の力が頭ひとつ抜けていた。最後はUAEにPK戦の末に敗れはしたが、不運な敗退と表現してもいいものだった。

 だが、今回は違う。今大会での日本代表の戦いぶりは、少なくとも2000年以降では史上最低の出来と言っていい。

 全5試合を戦って3勝2敗。しかも無失点試合はひとつもなく、トータルで8失点。まったくの惨敗である。

 この結果には、さまざまな要素が絡み合っており、批判の対象となりうる要素もまた、さまざまだ。

 イランに1−2の逆転負けを喫した準々決勝ひとつとっても、相手が日本のハイプレスを避け、ロングボールを多用してきた時の対応には大きな課題が残ったし、劣勢の展開でのベンチワークはあまりに心もとないものだった。

 特に後半はイランの猛攻の前に反撃を繰り出せず、ただただ防戦。正直、ここまで酷い負け方は、アジアカップに限って言えば記憶にないほどだ。


ロングボールを多用するイランの攻撃に苦しめられた日本。photo by Sueishi Naoyoshi

 しかし、そうした"各論"もさることながら、今大会において最も残念に感じるのは、もっと根本的な部分。臨戦態勢と結果がまるで釣り合わず、終わってみれば何も残らなかった、ということである。

 そもそも疑問なのは、今大会にベストメンバーを招集する必要があったのか、だ。

 久保建英、遠藤航らは、アジアカップの直後にUEFAの大会(チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグ)が控えている。また、三笘薫や冨安健洋は負傷を抱えており、初戦からの出場が難しいこともわかっていた。

 ならば、彼らは所属クラブでの戦いに集中させたほうがよかったのではないのか。むしろ、そのほうがアジアカップに出場させるよりも、日本代表のチーム力を最大限に高めることにつながったのではないのか。

 森保一監督はよく「アジアの戦いは甘くない」と口にするが、それを言うなら、ヨーロッパのトップレベルのクラブで主力の地位を確保し続けることだって、甘くはない。シーズン中にクラブを離れている間に、ポジションを失ってしまうことだって十分に起こりうる。

 サッカー人気の低迷に危機感を覚える日本サッカー協会にしてみれば、アジアカップで優勝すること、それも、今をときめく三笘や久保を擁するチームで優勝することが重要だったのかもしれない。

 それこそが、話題性を最も大きくする手立てだったからだ。

 しかし、名より実をとるならば、今大会ではベストメンバーにこだわらず、新戦力の発掘、あるいは、選手層の底上げを図るべきだった。

 今大会での毎熊晟矢の活躍は数少ない発見のひとつと言っていいだろうが、町田浩樹や佐野海舟にもそうなる可能性を与えたかったし、他にも元日のタイ戦に出場した選手のなかには、その候補がいたはずだ。

 仮にそれで優勝できなかったとしても、新戦力のなかからひとりでもふたりでもベストメンバーを脅かす選手が出てくれば、大きな収穫となっていただろう。

 それどころか、彼らが主力の不在を感じさせないような活躍を見せ、優勝してしまうようなら、これ以上ない最高のシナリオとなったはずだ。

 ところが、実際はまったく逆の結果になってしまった。

 ベストメンバーの編成にこだわった結果、ただでさえ、優勝したところでどれだけの収穫が得られたかは疑問が残るのに、これほど酷い内容の試合を続けた挙句、その優勝すら逃してしまったのだから目も当てられない。

 もちろん、日本代表としてピッチに立つ以上、選手はやるべきことをやらなければならない。ヨーロッパでのシーズンが進行している所属クラブのことが気になって大会に集中できなかった、などということは言い訳になるはずもない。

 だがその一方で、日常的に世界最高峰の舞台で戦う選手たちに、アジアカップもワールドカップと同じモチベーションで臨んでくれ、というのは無理があることもまた事実だろう。

 実際、ピッチ上の選手たちからは相応の熱が感じられなかった。1点リードで迎えたイラン戦の後半も、ほとんど無抵抗のまま逆転を許している。

 2年後のワールドカップへ向け、もっと有効活用できたはずの大会に、優勝しなければ失望しか残らないような臨み方をし、結果、それを逃した。

 日本代表の話題性や人気を高めるという意味でも、むしろ裏目。昨秋、ドイツを返り討ちにし、注目度が高まってきていたところに自ら水を差した感すらある。

 大会前に想像できる範囲をも超えた、最悪の結末である。