山田涼介さん演じる声を捨てた青年・蒼と、浜辺美波さん演じる目が不自由になった音大生・美夏の“世界でいちばん静かなラブストーリー”『サイレントラブ』が1月26日(金)に公開した。映画『ミッドナイトスワン』を手掛けた内田英治監督のオリジナルストーリーである。

野村周平●のむら・しゅうへい…1993年11月14日生まれ、兵庫県出身。2010年に俳優デビュー。2012年にNHK連続テレビ小説『梅ちゃん先生』で注目を集める。2023年は映画『隣人X -疑惑の彼女-』、ドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法』(テレビ東京系)などに出演。Paraviで配信された『クロちゃんずラブ〜やっぱり、愛だしん〜』では、お笑い芸人のクロちゃん役がそっくりだと話題になった。2024年1月から放送中のテレビドラマ『婚活1000本ノック』(フジテレビ系)にも出演中。Instagram

 

静かな同作では、美夏が通う音楽大学の非常勤講師・北村悠真が奏でるピアノの音が響き渡る。名門家庭出身のピアニストでありながら乱れた生活を送る北村は、ひょんなことから蒼と美夏の人生に深く関わることに。「ただのろくでなし野郎ですよ」と語ったのは、北村を演じた野村周平さん。北村の役作りから役を引きずらないワケ、山田涼介さんとのエピソードまで明かした。

 

【野村周平さんの撮り下ろし写真】

 

役を引きずらないのは「俺を超えてくれるキャラがいない」

 

──静かなラブストーリーということで、映画を観た率直な感想を聞かせてください。

 

野村 主人公の蒼は声を発さない、美夏は目が不自由であるということで難しい恋描写だなと思いましたが、それらが2人の恋の妨げになっている訳ではなくて、むしろ「障害は関係ない」というのを分からせてくれる素敵な映画になったのではないでしょうか。「何が幸せなのか」を考えさせられます。

 

──野村さんが演じた北村は同作におけるキーマンかと思いますが、どのような人物なのでしょう?

 

野村 お金持ちで音楽の才能もありますが、上には上がいるという葛藤に振り回されている男です。全部持っているけど、心が裕福じゃない。お金がなくても心が裕福な人と、どっちが幸せなんだろうね。

 

──そんな北村を演じるうえで、役作りはどのように行いましたか?

 

野村 この作品の直前にヤンキー役を演じていたので、とりあえずヤンキー感を抜くことを意識しました。監督からは「棒読みでいいよ」と指示されたんです。ヤンキー役の名残が残ったまま感情がバリバリに出ていたので、感情を殺すために、監督はそう言ってくれたんだと思います。だから映画を観ながら「俺、棒読みだな」と思いましたが「俺を責めないでくれ!」って感じです(笑)。

 

──ピアニストとしての役作りは、何を意識されたのでしょう?

 

野村 北村は世界が誇る坂本龍一さんのようなピアニストではなく、ただ表面上の上手さを求めて葛藤するピアニストだと思うんです。“真のピアニスト”ではない。まだ自分を出しきれていない、さまざまなことに気づけていない子で、未熟なピアニストと捉えて演じました。

 

──葛藤という言葉通り、かなりフラストレーションがたまるシーンが続いたかと思います。役に引っ張られることはありましたか?

 

野村 役には全く引っ張られません。撮影場の空気を読みつつ、ずっと変わらずこの感じです。役より俺のほうがキャラ強いので(笑)! 残念ながら俺を超えてくれるキャラがいないので、もし俺を超えるキャラが現れたら、引きずる可能性もありますね。

 

世界一かっこいい楽器「人間だったら弾けるようになりたい」

 

──ピアノを演奏するシーンは、どのように撮影されたのでしょう?

 

野村 さすがにWキャスト(演奏シーンは別の人が演じる)とさせていただきました。めちゃめちゃ練習して弾けるようになったのですが……クラシックのハードコアを完璧に弾くのは、やっぱり無理よ! 1年練習して弾けなかったら文句言われても仕方ないかもしれないけど、数ヶ月では厳しい! 音楽に合わせて身体も手も動かせましたけど、手の寄りは無理。アル・パチーノでも無理よ。

 

──映像を見ると「野村さん、ピアノ弾けたっけ?」と思うくらい自然でした。

 

野村 ピアノの曲は好きでよく聴いていて、前から弾きたいと思っていたので練習を頑張れました。楽譜は一生読めないと思いますが、教えてもらって反復練習したり、ピアノを借りて家でも復習したり、耳コピして弾いたりしていましたね。坂本龍一さんの『戦場のメリークリスマス』は弾けましたし、今作で音楽を担当されている久石譲さんの『Summer』も練習しました。好きこそものの上手なれですね、楽しかったです。

 

──今作以前に、何かピアノにまつわる思い出があったのでしょうか?

 

野村 ピアノは、やっぱり人間だったら弾けるようになりたい楽器の1つじゃないですか。世界一かっこいい楽器だなって思っています。借りていたピアノは返さざるを得ませんでしたが、今後も続けたいと思っていますし、またピアニスト役に挑戦してみたいです。

 

山田涼介さんは「外見からにじみ出る不運な少年感がありました」

 

──山田さんが演じた蒼というキャラクターについて聞かせてください。

 

野村 蒼は、美夏のためにあるお願いを北村にしてくるんですが「すんげぇ金払ってくれるじゃん!」って(笑)。1回数万ですよ、なんでこんなに金払いいいんだろうなと。まぁ本当に美夏が好きなんだろうなと思いました。こんなに真っ直ぐなラブがこの世に存在しているのだろうかと思いながら、蒼のことを見ていました。

 

──浜辺さんが演じた美夏のキャラクターについてはいかがでしょう?

 

野村 ピアノが大好きな、真っ直ぐな女の子で、浜辺さんにピッタリの役だと感じました。ちょうどいい塩梅でお芝居されていて「もう浜辺さんなんじゃない?」と見ていましたね。あまりにきれいなフィクションなので「そんなことないだろ!」って思うところも多々ありましたが、浜辺さんがあの役を演じていたことで、より観入る作品になっていると思います。あ、美夏は少し暗い子ですが、浜辺さん本人はお喋りで明るい子ですよ。そりゃ好感度あるわって感じました(笑)。

 

──山田さん、浜辺さんとの印象的なエピソードを聞かせてください。

 

野村 山ちゃんは高校の同級生で、前からお互いを知っていたのが良かったですね。たまに「高校時代はあんなんだったな」と話してました。浜辺ちゃんは結構お喋りしていたのですが、内容を覚えていないということは、どうでもいい話をしていたんでしょうね(笑)。

 

映画『サイレントラブ』

1月26日(金)全国公開

 

(STAFF&CAST)
出演:山田涼介 浜辺美波 野村周平/吉村界人 SWAY 中島歩 円井わん 辰巳琢郎/古田新太
原案・脚本・監督:内田英治
共同脚本:まなべゆきこ
音楽:久石譲
主題歌:「ナハトムジーク」Mrs. GREEN APPLE
公式サイト:https://gaga.ne.jp/silentlove/

 

(STORY)
声を捨て、毎日をただ生きているだけの蒼。ある日、不慮の事故で目が不自由になり絶望の中でもがく音大生・美夏と出会う。何があってもピアニストになるという夢を諦めない美夏に心を奪われた蒼は、彼女をすべてから護ろうとする。だが、美夏に想いを伝える方法は、そっと触れる人差し指とガムランボールの音色だけ。蒼の不器用すぎる優しさが、ようやく美夏の傷ついた心に届き始めた時、運命がふたりを飲み込んでいく──。

 

撮影/映美 ヘアメイク/矢口憲一(駿河台矢口) スタイリスト/清水奈緒美