【本当に「超大物」か】

 巨人は1月22日、メジャー通算178本塁打、シーズン30本塁打以上を3度も達成している元サンディエゴ・パドレスのルーグネッド・オドーアとの契約合意を発表した。

 年齢は29歳で、大きな故障で長期欠場したこともない。2021年には名門のニューヨーク・ヤンキースで4番を打ったこともある「本物のメジャーリーガー」だ。


巨人と契約を交わした、元パドレスのオドーア photo by Getty Images

 20歳の若さでメジャー昇格を果たしたオドーアは、メジャー3年目の2016年に33本塁打を記録。当時所属していたテキサス・レンジャーズは実力が本物だと判断し、2017年から6年総額で4950万ドル(当時のレートで約55億3400万円)の契約を提示。まだフリーエージェント権利も手にしてない若手選手であるにも関わらず、早めに長期契約を結んでの"囲い込み"に成功した。

 長期契約を与えられたオドーアは、翌17年に30本塁打、19年にも30本塁打を放ち、レンジャーズの期待に応えた。そんなメジャーリーガーが加入するのだから、巨人ファンの期待度も大きく跳ね上がっている。日本のスポーツ新聞各紙も、規格外のパワーの持ち主である「超大物」と期待を煽っている。

 しかし......、本当にそんな超大物選手なのだろうか?

 オドーアがレンジャーズと結んだ長期契約は、後半になると年俸が高騰するもので、2017年が100万ドル、18年も300万ドルと安く抑えられていたのに対して、21年と22年の年俸はそれぞれ1200万ドルだった。

 確かに2019年までは「メジャー屈指の強打の二塁手」として活躍していたが、短縮シーズンだった20年には調子を大きく崩し、21年には開幕ロースターの座を逃している。レンジャーズは早々に見切りをつけ、21年シーズンの開幕直後、残り2年間の合計年俸2400万ドルをほぼ全額負担する形でヤンキースにトレードで放出。しかしヤンキースも1年でクビになり、22年はリーグ最低年俸でボルティモア・オリオールズに拾われた。

【すべてが日本球界に不向き】

 昨季はパドレスとマイナー契約を結び、春季キャンプで結果を残して開幕前にメジャー契約を勝ち取ったが、年俸はわずか80万ドル(2017年にレンジャースと長期契約をした際に、23年は1350万ドルのチーム・オプションが含まれていたが、当然このオプションは破棄。代わりに300万ドルの「オプション買取金」を手にした)。そのパドレスからも、シーズン途中の7月に解雇されている。

●オドーアの過去4年間の成績●

 オドーアの過去4年間の成績を見てみると、まず目につくのが、4年続けて.210にも満たない異様な打率の低さだ。

 オドーアの低打率は過去4年に限ったものではなく、30本塁打を記録した2017年はMLBワースト2位の.204、19年はメジャー最下位の.205と確実性に欠ける。選球眼もよくなく、メジャー10年間の四球率はMLBの平均を下回っている。

 加えて三振も多く、2019年にはアメリカン・リーグ最多の三振を喫した"大型扇風機"だ。変化球に対する空振り率は過去3年続けて35%を超えており、日本人投手の変化球攻めに苦しむ姿が目に浮かぶ。特にフォークなどの落ちる球を苦手としており、昨季のスプリッターに対する空振り率は58.3%だった。自慢のパワーも衰えており、本塁打率は3%未満で、こちらもMLB平均を下回っている。

 日本のニュースでは、「本職は二塁手だが、外野手としての経験もある」とも報じられており、巨人の阿部慎之助監督も外野手としての起用を考えているらしい。しかし、メジャーで外野手として起用されたのは、1000試合以上に先発しながら7試合だけ。マイナーリーグでも外野を守った経験はない。二塁の守備自体もひどく、6度も"エラー王"になっている。

 さらに性格は短気で、けんかっ早い。22歳だった2016年には、トロント・ブルージェイズのスター選手だったホセ・バティスタが二塁にスライディングした際にキレて、バティスタの顔面にパンチを叩き込み、7試合の出場停止処分を受けている。2018年にも、メジャー1年目の大谷翔平が所属していたロサンゼルス・エンゼルスとの試合で小競り合いを起こすなど、「トラブルメーカー」としても有名だ。

 選手の貢献度を示すWARも、過去5年間で4度もマイナスを記録しており、代替え選手(3Aレベルの選手)よりも勝利への貢献度は低いというデータが出ている。オドーアのWARは、162試合フル出場して30本塁打、75打点を記録した2017年でもマイナス0.5である。これは打率(.204)と出塁率(.252)が低かっただけでなく、30本塁打を打ったのに長打率も.397と4割に満たなかったことが要因だ。

 この4年間は、毎年チームを移る"ジャーニーマン"と化した。1年でクビになるのは、代替選手レベルのプレーもできないから。まだ20代で、過去には30本塁打を3度も記録した実績もあるため、多くの球団が再生を願って獲得するが、失敗してきた。

 プレースタイル、性格、データとすべてが日本球界に不向きなタイプだが、果たしてオドーアは日本でブレイクできるのだろうか。