近年は佐々木朗希(ロッテ)をはじめ、郄橋光成(西武)、村上宗隆や高橋奎二(ともにヤクルト)など、ポスティングシステムを利用したメジャーへの移籍を希望する選手が増加。昨年12月、佐々木が「今オフのメジャー挑戦を要望した」と一部で報じられた際には、「まずは球団とファンを納得させる成績を残してほしい」といった声も出るなど、さまざまな議論を呼んだ。

 ポスティングによるメジャー移籍問題をどう解決していくべきか。かつて大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)で活躍し、現在は野球解説者やYouTubeでも活動する高木豊氏に聞いた。


ロッテにポスティングでのメジャー移籍を要望しているという佐々木 Photo by Sankei Visual

【選手に「辞めてメジャーと契約する」と言われたら終わり】

――これまでも、たびたび議論になってきたポスティングによるメジャー移籍ですが、佐々木投手らの報道などをきっかけに大きな話題になっています。同問題ついてどうお考えですか?

高木豊(以下:高木) 僕は賛成でも反対でもありません。ポスティングは球団に権利があるので、よく「球団にメリットがないポスティングを、球団が許可するわけがない」と言われますよね。ただ、12球団統一のルールはないんです。

 なので比較論で話すしかないのですが......獲得を希望しているメジャー球団も多いようですし、松坂大輔(元西武、レッドソックスなど)、ダルビッシュ有(パドレス)、田中将大(楽天)、山本由伸(ドジャース)ら、これまでにポスティングでメジャーへ移籍したピッチャー(二刀流の大谷翔平は除く)と比べても、"素材"という点では佐々木が高く評価されているんでしょう。

「まだ体ができていない」「日本で先発ローテーションを守ったシーズンが1度もない」などと言われていますが、一方で「まだ若いし、向こうで体作りをすればいい」という考え方もある。例えばメジャーの球団から、「早くこちらのトレーニングを取り入れたほうがいい。1年間は体作りをしながら、こちらの文化や生活環境、言語に少しずつ慣れていってほしい。君のメジャーでのスタートは24歳からにしよう」といった提案をされることだってあり得ますよね。

――獲る側にもさまざまな考え方があるでしょうね。

高木 獲る側が「まだ22歳で若いし、慌てることはない。すぐに活躍してくれなくていい」というスタンスであれば、それで十分です。選手がメジャー移籍を志願しても、今は所属している球団の判断次第ですが、はっきりとしたルールがないから球団と選手が揉めたとしても仕方ないです。

 統一契約書には選手側に辞める権利があるわけで、仮に佐々木が辞める権利を行使し、それを知ったメジャーの球団が佐々木にアプローチして契約することも、可能性は限りなく低いにしてもゼロではありません。ルールがなければ、普通では考えられないこと、あまり想像したくないようなことが起こり得る。選手はFA権を取得するまでは立場が弱いですが、その前に最終手段として「辞めます」と言ってメジャーの球団と契約されたら終わりですよ。

――12球団統一のルールを作らなければいけない?

高木 早急に作らないと大変なことになるでしょうね。メジャーでトップクラスの活躍をする日本人選手が増え、国際大会でメジャーの球場を体感する機会も多いですし、昔と比べて今はメジャーがものすごく近い存在になっています。

 大谷や山本の契約金は異次元ですし、今永昇太(カブス)の契約金だってすごい。日本で数十年プレーしなければ稼げないような金額を数年で手にできるわけですし、すぐにメジャーに行きたくなっても不思議ではないです。早くルールを作らないと、今後も有力な選手はどんどんメジャーに行ってしまうでしょう。もちろん、流出することを懸念しているわけではなく、球団と選手、そしてファンが納得した上で海を渡ってほしいということです。

【具体的にどんなルールが考えられる?】

――大谷選手や山本選手の契約は、メジャーリーグが日本野球のレベルの高さを認めた証拠とも言えますね。

高木 本当に日本人選手のレベルが上がっていますし、佐々木のような能力が高い選手はこれからも出てくるはず。"素材は完全にメジャー級"という選手は、見る人間が見ればわかりますしね。プロ野球ではなく最初からメジャーに行きたい、メジャーの球団からドラフト指名されたい、という選手も出てくるでしょう。

――「ルールが必要」という話がありましたが、例えばどんなルールが考えられますか?

高木 例えば、先発投手であれば「50勝以上を挙げること」をポスティングを許可する条件にするとか。ピッチャーは先発だけではなく中継ぎや抑えもいるので、成績を基にルールを作るのであれば細かく定めなければいけないと思いますけどね。

 それか、「25歳以上でなければポスティングは許可しない」とか、「一軍での選手登録日数が何日以上でなければいけない」とか......。とにかく、ポスティングは球団と選手との話し合いで決まると言いますが、NPBが12球団統一のルールを作らないと双方が困ってしまいます。

 今は「メジャーに行きたい」と言ったもん勝ち。場合によっては選手が球団と揉めたり、ファンが騒いだりするじゃないですか。でも、ルールがあれば選手もそれに従わざるをえませんからね。

――ルールがあれば、球団や選手、そしてファンも納得できそうですね。

高木 そうですね。ポスティングの許可を各球団に委ねていてはいけない。12球団統一のルールを定めて、透明性の確保に努めるべきです。