久保建英不在の影響大「こんな時期にアジアカップだなんて!」レアル・ソシエダはダービー完敗
<久保建英の不在が響いて敗北>
そんな見出しが立つにふさわしいバスクダービーになった。
1月13日、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)はバスクの盟主を争うアスレティック・ビルバオとのダービーを敵地で戦い、2−1と敗れている。じりじりと押される展開で2点を奪われ、終盤、ミケル・オヤルサバルが一矢を報いるのがやっとだった。ホームでは久保の活躍で3−0という快勝で沸いたが、打って変わって煮え湯を飲まされた。
バスクダービーの価値は、日本人が考えているよりもはるかに高い。バルセロナやレアル・マドリード、あるいはチャンピオンズリーグのグループリーグよりも集客が見込める。いわゆる、意地を懸けたビッグマッチだ。そのバスクダービーで久保を欠いて敗れた意味とは?
久保がアジアカップの日本代表に帯同することが決定的になって以来(日本が決勝に進出すると約1カ月半の離脱になる。スペイン国王杯で勝ち上がった場合は、最大10試合の欠場となる)、ラ・レアルはバックアッパーの補強に動いている。
パリ・サンジェルマン(PSG)のスペイン代表マルコ・アセンシオ、ウルバーハンプトンのスペイン代表パブロ・サラビア、クラブ・ブルージュのデンマーク代表アンドレアス・オルセンという有力な左利きアタッカーとの交渉が伝えられる。ただ、「久保の代役が務まり、金額的にも獲得可能」という条件を考慮に入れると、かなり難航するだろう。
日本代表に合流、トレーニング中の久保建英photo by MB Media/AFLO
そもそも、久保と同等のアタッカーは世界でも数人に限られている。「約1カ月半の離脱中だけを埋めてリーズナブル」......そんな都合のいい選手は、率直に言っていない。
そして久保が唯一無二の理由は、単純に得点力が高いということだけではなく、ラ・レアルの基本戦術と相性がいい点にある。チームメイトとプレーを重ねて、すでに戦術上、欠かせないパーツになっている。攻撃だけでなく、守備でもスイッチを入れられる。高い強度の中で敵を押し込み、コンビネーションで圧倒。ゴールやアシストの数字以上に、チームを引き回しているのだ。
【久保の代役候補も移籍で去り...】
敗れたバスクダービー、久保不在の影響は顕著だった。
たとえば0トップに入ったオヤルサバルは戦術的センスが出色だが、前線で久保や引退したダビド・シルバのような連係に長けた選手が近い距離にいてこそ、力を発揮できる。この日は攻撃が単発で、完全に孤立していた。同じように、左サイドのアンデル・バレネチェアも、マークが久保へ分散しないことで相手に捕まって、馬力のある突破は不発だった。
久保の代役として右アタッカーに入ったアルセン・ザハリャンに至っては、存在が消えていた。守備のスイッチを入れられず、攻撃の起点にもなれない。久保がいると、右サイドは「攻撃こそ防御なり」で優位に立てるが、この日は相手のニコ・ウィリアムズとユーリ・ベルチチェの激しいアプローチに遭い、完全に後手に回ってしまい、失点も浴びた。
後半、業を煮やしたイマノル・アルグアシル監督はバレネチェア、ザハリャンをベンチに引っ込め、スビエタ(下部組織)出身の若いアタッカー、アルベルト・ダディエ、ジョン・マグナセライアを投入したが、まるで歯が立たなかった。ダディエはオヤルサバルの得点につながるパスを入れて面目を保ったが、局面では力負けしていた。
本来、久保の代役はフランスの新鋭、モハメド・アリ・チョだった。しかし先日、フランスリーグのニースに1000万ユーロ(約16億円)+出来高200万ユーロでの完全移籍が決まっている。
「フィジカル面はすばらしいが、戦術的に未熟すぎる。サッカーを知らない」
9月に現地を取材した時点で、チョについて関係者はすでにさじを投げていた。動きがめちゃくちゃで、チームにフィットするはずもなく、売却せざるを得なかった。1200万ユーロで獲得した選手だけに、マイナスは最小限に抑えられたが......。
バスクダービーでは、GKアレックス・レミロの出場停止も痛かったと言える。今シーズン、チームのベストプレーヤーの座を久保と分け合う守護神の不在で、本来の展開ができなかった。代わりのウナイ・マレーロはスビエタ出身の実力者だが、アスレティックに対抗するパワーはまだ身に付ついていない。味方との連係でもうまくパスを引き出せず、イニシアチブをとるチームのサッカーを体現できなかった。
久保と同じく、アフリカ選手権で不在のアマリ・トラオレの穴も大きかった。代わりに入ったアルバロ・オドリオソラは前半途中にケガで交代。その代役のアリツ・エルストンドは奮闘したが、最悪の事態を回避するのが精いっぱいだった。
一方でアスレティックも、エースであるイニャキ・ウィリアムスがガーナ代表としてチームを留守にしていた。しかし、代役アレックス・ベレンゲルが2得点でゲームMVPの活躍。オイハア・サンセトはかつてのフレン・ゲレーロをほうふつとさせるファンタジスタぶりを見せ、イニゴ・ルイス・デ・ガラレタ、ミケル・ベスガは中盤でラ・レアルを押し返し、ニコのスピードは脅威だった。ラ・レアルは完敗だったと言える。
「こんな時期にアジアカップだなんて!」
ラ・レアル関係者の嘆きが聞こえてきそうだ。久保不在での1カ月半、かなりの劣勢が予想される。この陣容でチャンピオンズリーグのラウンド16、キリアン・エムバペを擁するPSGと戦うのは厳しいものがある。まずは国王杯ベスト8入りをかけて、オサスナとの勝負だ。