攻略法を見出すも牙城は崩れず タパレスが激白した井上尚弥の凄み「俺は倒せていたと思う。だけど、イノウエは狡猾だった」

井上の猛攻の前に屈したタパレス。しかし、彼は「分析はできていた」と振り返る。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

　下馬評は覆らなかった。それでも井上尚弥（大橋）という偉才との対戦のなかで、マーロン・タパレス（フィリピン）は、確実に手応えは掴んでいた。

　昨年12月26日に東京・有明アリーナで行われたボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一戦12回戦で、WBC＆WBO王者の井上（大橋）に挑んだWBA＆IBF王者のタパレス（フィリピン）は10回1分2秒KO負け。フィリピン人史上初の4団体統一とはならなかった。

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　戦前から井上有利の声が圧倒的に占めていた。フィリピンの大手放送局『ABS-CBN』ですらも「チャンスがあるとすれば、イノウエがタパレスを過小評価することだ」と評価を下していたほどだ。結果から言えば、そんな下馬評の通りだったと言えよう。タパレスは井上の強打に屈し、4回と10回にダウンを喫すると、最後は「立てなかった」という。

　しかし、タパレスは大衆の評価を一変させたと言っていい。L字ガードを用いた守戦を選択した31歳は中盤に奮闘。試合後に井上が「ディフェンス力が思っていた以上に凄くて。意外とパンチが……当てられなかった」と語るほどのスキルを発揮した。

　予想以上の善戦を見せた。それは試合前から行ってきた徹底した「井上対策」に裏付けられた結果でもあった。昨年12月27日に母国のYouTubeチャンネル『Playitright TV』に出演したタパレスは、「1ラウンド目でイノウエの技術とパワーを分析した。そこで彼を対処でき、迎え撃てると分かった。本当に勝ちたかったから先手を取り、序盤はボディにパンチを打っていった。ボディは彼の弱点だと分析できていた」と振り返っている。

　タパレスは「イノウエは自分の戦い方を状況によって変えていた。だから打ち合いをせず、カウンターを狙うようになっていた。それが彼に有利に働いたと思う」と、偉才の類まれなセンスを称えている。

「もしも、打ち合いに付き合ってくれれば、俺は彼を倒せていたと思う。だけど、彼はとてもスキルフルで、狡猾だった。イノウエのフットワークとハンドスピードはとてつもなく速いんだ。（スピードとタイミングがスペシャルだったのか？）その通りだよ。僕は全くついていけなかった」

　分析はできていた――。それでも、井上の牙城は崩れなかった。いまだ敵なしの強さを誇る“モンスター”を倒せる猛者など現れるのだろうか。タパレスの言葉を聞くに、そう思わずにはいられない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]