井上尚弥選手(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

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英ボクシング専門メディア「Boxing news」(WEB版)が2024年1月9日、スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋、30)の特集記事を公開し、次戦の対戦が有力視される元世界2階級制覇のルイス・ネリ(メキシコ、29)の過去の「ドーピング疑惑」を批判的な論調で伝えた。

「井上にとってこれ以上の対戦はないだろう」

井上の次戦を巡り米スポーツ専門局「ESPN」(WEB版)が9日、井上は5月に日本でネリと防衛戦を行うことで合意したと報じた。スポーツ紙の報道によると、井上が所属する大橋ジムの大橋秀行会長(58)は、対戦に向けてネリ陣営と交渉中であることを明かしたという。会場は東京ドームが候補に挙がっている。

記事では「井上にとってこれ以上の対戦はないだろう」とネリ戦に言及し、次のように理由を説明した。

「(世界戦で)スティーブン・フルトンやマーロン・タパレスに圧勝し、ベルトをもぎ取った井上は、すぐにまともな対戦相手が見つからなくなり、また階級を上げざるを得なくなるのではないかと心配されていた。しかしネリは、これまで対戦してきた中で最も危険な相手であるだけでなく、バンタム級で最初の世界タイトルを獲得しているナチュラルなスーパーバンタム級選手である」

同メディアはネリの実力を高く評価する一方で、ネリが過去に日本で犯した「失態」を批判的な論調で伝えた。

「ボクシング関係者はネリにほとんど同情していなかった」

ネリは過去に日本で2度世界戦を行っており、いずれも山中慎介(帝拳)と対戦し2勝を挙げたが2試合続けてリング外で「失態」を犯した。

17年8月の初戦ではドーピング疑惑が浮上。試合前に行ったドーピング検査で禁止薬物の陽性反応を示したことが試合後に発覚した。試合を管轄した承認団体WBCは再度ドーピング検査を行い、結果陰性反応だったことから処分なしに終わった。18年3月の山中との再戦では前日計量で体重を超過し、保持していたWBC世界バンタム級王座をはく奪され、日本ボクシングコミッション(JBC)から無期限の活動停止処分を受けた。

Boxing newsは「王者・山中を破ったネリのファイトは当時画期的なものとみなされたが、試合後に禁止薬物の陽性反応を示しすべての良い仕事を台無しにしてしまった」と指摘し、「ネリは禁止薬物の陽性反応を食品汚染のせいだと言い訳をしたが、ボクシング関係者はネリにほとんど同情していなかった。実際、ネリを信じたのはWBCだけだった」とした。

ネリはWBC世界バンタム級王座はく奪後、20年9月にWBC世界スーパーバンタム級王座決定戦を制し世界2階級制覇を達成。21年5月にWBA同級王者との王座統一戦で敗れ無冠となるも、23年2月のWBC世界スーパーバンタム級挑戦者決定戦に勝利し、井上への挑戦権を獲得した。プロ成績は35勝(27KO)1敗。