大谷翔平の“行動”に憧れる小学生は多い。写真右は楽天ジュニア・金原跳、左は日本ハムジュニア・福田愛斗【写真:ロイター、小林靖】

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「NPB12球団ジュニアトーナメント」で選手たちが語った大谷の魅力

 ドジャースと10年総額7億ドル(約1015億円)に上る大型契約を結んだ大谷翔平投手に、憧れない野球少年はいない。だが、大谷が子どもたちのハートを射止める理由は、投打にわたる驚異的な成績だけではなく、ましてや金額的な価値ではないだようだ。

 昨年末に全国選りすぐりの小学5、6年生が覇を競った「NPB12球団ジュニアトーナメントKONAMI CUP 2023」(2023年12月26日〜28日)。各試合後、活躍した選手たちに話を聞いていると、当然ながら9割以上が憧れの選手に「大谷翔平選手」を挙げた。「自分もできる限り二刀流でやっていきたい」との声も増えた。一方、「大谷のどこに憧れるのか?」と聞いた際、「ごみ拾い」「あいさつ」と答える子どもが目立ったのは、少し意外だった。

 大会2日目にソロ本塁打を放った東北楽天ゴールデンイーグルスジュニアの金原跳主将は、「野球もですが、普段からごみを拾うなど、私生活が素晴らしいので、見習いたいです」と語った。大会出場選手中最も小柄な身長135センチ、体重31キロで奮闘した北海道日本ハムファイターズジュニア・福田愛斗外野手は「ごみ拾いとか、あいさつとか、人間性がいいところに憧れます」と強調した。

 大谷は昨年、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)優勝の原動力となり、大会MVPにも輝いた。レギュラーシーズンでも2度目のア・リーグMVPを獲得し、野球選手として空前絶後とも言える活躍を演じた。

 同時に、記事やSNSで数多く取り上げられたのは、イニング間や四球を選んで一塁へ歩いていく際、グラウンド上のごみを拾い、さりげなくユニホームのポケットに入れるシーン。同時に、投手としてマウンドに上がる際、球審と塁審1人1人を米国式に指差した後、帽子のつばを触ってあいさつし、打席に入る時には球審や相手捕手、塁上でも相手野手に笑顔で声をかける姿が、高く評価されていた。

侍Jの井端監督が語った“グラブ6万個”の意義

 学校や家庭での教育の結果でもあるのだろうが、大谷のそういう面に着目する子どもが増えている模様だ。大谷は29歳の若さで、野球選手として記録や記憶に残るだけでなく、米国で言えばベーブ・ルース氏、日本で言えば王貞治氏のように、人柄や私生活のエピソードが手本にされる“伝記レベル”の選手になりつつあるのかもしれない。

 そういう大谷だからこそ、日本国内の全小学校約2万校へ3個ずつ、計約6万個のグラブを贈呈した意義も大きい。侍ジャパンの井端弘和監督が「親にとって、野球をやったことのない子どもに(継続できるかどうかわからない段階で)グラブを買い与えるのは厳しい部分がある。学校にあって触れることができるのは、“入口”としてすごくありがたい」と評している通りだろう。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)