掲載:THE FIRST TIMES

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2023年12月3日(日)、香港KITEC-STAR HALLで『SACRA MUSICFES.2023 IN HONG KONG』が開催された。出演アーティストは、FLOW、安田レイ、ASCA、halca、スピラ・スピカ、Who-ya Extended。現地でも高い支持を得ているアニメソングが次々と披露され、オーディエンスを圧倒的な高揚感へと導いた。

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■シンガーとしての類まれな魅力をしっかりとアピールした安田レイ

現地時間20時にスタートしたイベントのトップを飾ったのは、今年デビュー10周年を迎え、SACRA MUSICに移籍した安田レイ。オープニングは、新しい日々に向けたポジティブな思いを映し出す「Brand New Day」。「手を振って!」と呼びかけると、観客がペンライトを左右に振り、温かい一体感が生まれた。

「すごい熱気だ!初めての香港ライブ、本当に楽しみにしてきました。“ありがとう”を音楽で伝えてもいいですか?」というMCから、「Tweedia」(『劇場版 ポケモン・ザ・ムービーXY 光輪の超魔神 フーパ』主題歌)。そばにいてくれる人に対する感謝を込めた楽曲をエモーショナルに歌い上げ、シンガーとしての類まれな魅力をしっかりとアピールした。

憂いを帯びた力強いメロディを青いペンライトが彩った「Mirror」(アニメ『魔法科高校の劣等生』EDテーマ)の後は、新曲「声のカケラ」(アニメ『烈火澆愁』日本語吹替版EDテーマ)を初披露。大切な人、大切な場所の記憶が、今の自分を支えてくれている──そんな思いが真っ直ぐに伝わってきた。最後の「Not the End」における、濃密な感情をたっぷり含んだボーカルも最高!

■スピラ・スピカ(幹葉)のほんわかしたMCと凛としたボーカルのコントラストが秀逸

元気いっぱいの笑顔、そして、チアフルなボーカルを響かせながら登場したのは、幹葉(Vo)のソロユニット、スピラ・スピカ。まずは「燦々デイズ」(TVアニメ『その着せ替え人形は恋をする』OPテーマ)。開放的なメロディと前向きなリリックは、幹葉のキャラクターにぴったり。端から端まで移動して、大きなアクションで観客とコミュニケーションを取る姿も印象的だ。

ここからは世界的人気を得ているアニメソングをカバー。

「ブルーバード」(いきものがかり/TVアニメ『NARUTO -ナルト- 疾風伝』OPテーマ)では切なくも力強い歌声が広がり、会場のテンションをさらに引き上げる。広東語で挨拶し、「ベストフレンドになりたくて、一緒に踊りましょう」という言葉から、幹葉の地元・徳島の阿波踊りを観客と一緒に練習。彼女にしかできないステージングで親密感を演出した後は、「STAND UP TO THE VICTORY ~トゥ・ザ・ヴィクトリー~」(川添智久/TVアニメ『機動戦士Vガンダム』OPテーマ)、そして、「紅蓮華」(LiSA/TVアニメ「鬼滅の刃」オープニングテーマ)を歌唱。ほんわかしたMCと凛としたボーカルのコントラストも幹葉の魅力だ。

「また香港に来れるように、みんなに会えるように願いを込めて」という言葉からはじまったのは、「リライズ」(TVアニメ『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』OPテーマ)。観客との一体感に溢れた素晴らしいアクトだった。

■halcaはシャープかつキュートな歌声で香港のファンに強いインパクトを残した

halcaは“キミと私 きっといま同じ気持ちだよ”という独唱から。疾走感のあるサウンド、愛らしさと切なさが入り混じったメロディが一つになった「センチメンタルクライシス」(TVアニメ『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』EDテーマ)でライブをスタートさせた。

小さい頃に香港に来たことがあること、久しぶりに来た香港でおいしいものをいろいろ食べたことを話した後は、“かのかり”関連の楽曲を続けて披露。

ギターロック的なサウンドとともに“君の姿を焼き付けたい”という思いを放つ「恋愛ミリフィルム」(TVアニメ『彼女、お借りします』第3期OPテーマ)、恋に落ちたときのドキドキを体現した「FIRST DROP」(TVアニメ『彼女、お借りします』特別EDテーマ)、そして、高速のビートとカラフルな旋律が心地よい高揚感を生み出した「告白バンジージャンプ」(TVアニメ『彼女、お借りします』EDテーマ)。“かのかり”とリンクした楽曲を全身で表現し、オーディエンスを盛り上げるパフォーマンスも絶品だった。

「香港からのファンですとメッセージをくれる人がたくさんいて。いつかhalcaのワンマンライブで帰ってくることを夢見ています」と宣言し、アッパーチューン「誰彼スクランブル」(TVアニメ『Engage Kiss』OPテーマ)へ。シャープかつキュートな歌声は、香港のファンに強いインパクトを残したはずだ。

■ボーカリストとしての高い資質と世界標準の音楽性で魅せたWho-ya Extended

続いてはWho-ya Extended。エレクトロ、ヘビィロックなどを融合させたトラック、鋭利にしてしなやかなボーカルが印象的な「Q-vism」(TVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』OPテーマ)を放ち、オーディエンスを惹きつける。さらに「Synthetic Sympathy」(アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』OPテーマ)へ。楽曲の世界観とリンクしたアニメーション映像、“傷”“罪”といったワードをクローズアップする演出も刺激的だ。

初めての香港ライブへの思いを英語と日本語で語った後は、新曲のバラード「Prayer」(TVアニメ『はめつのおうこく』EDテーマ)。ドラマティックな旋律、大切な人への思いと消えることのない孤独を描いたこの曲からは、ボーカリストとしての高い資質が伝わってきた。

ここからは高揚感に満ちた楽曲を連発。近未来的なイメージをもたらす音像と抒情的なメロディを対比させた「Icy Ivy」(TVアニメ『NIGHT HEAD 2041』OPテーマ)、鋭利なギターサウンド、“誘われた後悔の果て 澄み切る自由を”というフレーズが鮮烈な衝撃を残した「Repentance Dance」、そして、Who-ya Extendedの存在を知らしめた「VIVID VICE」(TVアニメ『呪術廻戦』OPテーマ)。世界標準の音楽性を改めて証明した圧巻のパフォーマンスだった。

■ASCAの超アグレッシブなボーカルは、すべての観客の記憶に強く刻まれただろう

ここからイベントは後半へ。5番目に登場したASCAが1曲目に選んだのは、「凛」(TVアニメ『グランクレスト戦記』OPテーマ)。スピード感に溢れた壮大な映像とともに華やかで力強いボーカルが響き渡り、観客の興奮も一気にピークへと向かう。

「4年半ぶりに香港に帰ってくることができました」と挨拶すると、会場からは「お帰り!」という声が。新曲「私が笑う理由は」(TVアニメ『豚のレバーは加熱しろ』OPテーマ)は、“誰かの為ではなく、自分の人生を歩いていく”という意思を込めた楽曲。強い意思を感じさせる歌声を際立たせるこの曲は、彼女の新たな代表曲になりそうだ。

「皆さんのおかげで6周年を迎えることができました」という言葉から、デビュー曲「KOE」(TVアニメ『Fate/Apocrypha』EDテーマ)。壮大なスケールとシックな雰囲気を共存させたこの曲は、まさに彼女の原点だ。

“運命は切り開くもの”という真っ直ぐな意思を込めた「セルフロンティア」(アプリゲーム『ソードアート・オンライン アリシゼーション・ブレイディング』主題歌)でさらなる熱気を生み出した後は、「RESISTER」(TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』OPテーマ)。超アグレッシブなボーカルは、すべての観客の記憶に強く刻まれただろう。

■FLOWは、20年のキャリアを行き来きするかのように、様々な時期の楽曲を披露

『SACRA MUSIC FES.2023 IN HONG KONG』の最後を飾ったのは、もちろんFLOW。スクリーンにバンドネームが映し出された瞬間、凄まじい歓声が沸き起こる。1曲目は「Sign」(アニメ『NARUTO -ナルト- 疾風伝』OPテーマ)。冒頭からシンガロングが起こり、心地よいスピード感に貫かれたサウンド、KOHSHI、KEIGOのツインボーカル、“伝えに来たよ 傷跡を辿って”というフレーズが観客のテンションを一気に引き上げた。

その後も20年のキャリアを行き来きするかのように、様々な時期の楽曲が披露された。爽快なバンドグルーヴ、未来の光を掴もうとする意志を込めた歌詞が共鳴する「COLORS」(アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』OPテーマ)では、TAKE(Gu)のメロディアスなギターソロが炸裂。KEIGOが「みなさん、アニメは好きですか?これからもずっとずっと、アニメと僕達の音楽でつながっていきたいと思います」と語り掛けた後は、「United Sparrows」(アニメ『バック・アロウ』EDテーマ)。大らかな旋律とともに“大丈夫、1人じゃない。ここから飛び立とう”というメッセージを響き、会場全体が豊かな感動で包まれた。

KOHSHIによる英語のMC──20周年を迎えたことの感謝、多くの国を訪れ、アニメソングとつながってきたこと──そして、日本語で「いけますか、香港!?」と呼びかけ、新曲「烈火」(アニメ「烈火澆愁」日本語吹替版OPテーマ)へ。中国の伝統楽器・二胡を取り入れたアレンジ、アジア的郷愁を誘うメロディを軸にしたこの曲は、FLOWのミクスチャー・サウンドの新たな到達点だ。さらに日本のアニメソングのアンセム「CHA-LA HEAD-CHA-LA」(影山ヒロノブ/『ドラゴンボールZ』OPテーマ)を放つ。幅広い音楽性を取り入れたバンドサウンドを支えるGOT’S(Ba)、IWASAKI(Dr)のリズムセクションも素晴らしい。

クライマックスは“NARUTO”楽曲2連発。「GO!!!」(アニメ『NARUTO -ナルト-』OPテーマ)ではウェイブで盛り上がり、“We are fighting dreamers”の大合唱が響き渡る。「初めて香港に来れて、みんなとライブやれて本当にうれしかったです!」(KEIGO)というMCからラストの「GOLD」(アニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』OPテーマ)。カラフルなペンライトが激しく振られ、フロアの熱狂は最高潮に達した。

最後に出演者全員がステージに登場し、記念撮影。SACRA MUSICのアーティストの魅力、そして、日本のアニメソングの人気ぶりを改めて証明した記念碑的イベントだったと思う。

TEXT BY 森朋之

『SACRA MUSIC FES. IN HONG KONG』
2023年12月3日 香港KITEC-STAR HALL
セットリスト

安田レイ
1.Brand New Day
2.Tweedia
3.Mirror
4.声のカケラ
5.Not the End

スピラ・スピカ
1.燦々デイズ
2.ブルーバード(カバー)
3.STAND UP TO THE VICTORY ~トゥ・ザ・ヴィクトリー~(カバー)
4.紅蓮華(カバー)
5.リライズ

halca
1.センチメンタルクライシス
2.恋愛ミリフィルム
3.FIRST DROP
4.告白バンジージャンプ
5.誰彼スクランブル

Who-ya Extended
1.Q-vism
2.Synthetic Sympathy
3.Prayer
4.Icy Ivy
5.Repentance Dance
6.VIVID VICE

ASCA
1.凛(映像)
2.私が笑う理由は
3.KOE
4.セルフロンティア
5.RESISTER

FLOW
1.Sign
2.COLORS
3.United Sparrows
4.烈火
5.CHA-LA HEAD-CHA-LA(カバー)
6.GO!!!
7.GOLD