今季も大阪・冬の風物詩「花園」の季節がやってきた。12月27日から1月7日にかけて、103回目の全国高校ラグビー大会が東大阪市花園ラグビー場で開催される。

 高校日本一を決める大舞台で、まばゆい輝きを放つ「未来の日本代表候補」は誰か──。今季の花園で活躍が期待される選手を5人ピックアップしてみた。


高校日本代表候補の佐賀工SO服部亮太 photo by Saito Kenji

 今大会の優勝候補に挙げられるAシードのひとつが、元日本代表FB五郎丸歩氏の母校・佐賀工業(佐賀)だ。連覇のかかるAシードの東福岡(福岡)と九州大会決勝で16-17の接戦を演じ、今夏は7人制ラグビーの全国大会で初の高校日本一となって勢いに乗っている。

※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)

 佐賀工業は伝統的にFWの強いチームとして知られているが、今季はキャプテンCTB大和哲将(3年)やSH井上達木(3年)などBKに高校日本代表候補が並ぶ。その彼らを引っ張る司令塔がSO服部亮太(3年)だ。

 服部は同じ福岡・帆柱ラグビースクール出身の井上ともに佐賀工業に入学。1年時から花園に出場し、2年生から10番を背負っている。パス・キックのスキルに長けているだけでなく、隙があればランでブレイクできる「ランニングSO」だ。

 入学当初は身長165cmで体重65kgしかなかった身体も、現在は身長178cmで体重80kgとフィジカルアップに成功。夏の7人制の全国大会では枝吉巨樹監督が「服部にどれだけボールを持たすことができるかがキーだった」と語るとおり、6トライを挙げた服部の活躍で初優勝を成し遂げ、自身も大会MVPに選ばれた。

 憧れはオールブラックスSOリッチー・モウンガ(東芝ブレイブルーパス東京)。花園に向けて服部は「セブンズの優勝をチームに還元したい」と冷静に話す。佐賀選抜で挑んだ10月の国体決勝では福岡選抜に27-28の1点差で敗れるも、悔しい経験を糧にして佐賀工業を初の日本一へと導く。

【日本代表81キャップを誇る名WTBの息子も出場】

 そして、九州勢2校とともにAシードに食い込んだのが、4度目の花園優勝を目指す「東の横綱」桐蔭学園(神奈川)だ。昨季は県予選で敗退したものの、今季は圧倒的な力で春の選抜大会を制覇して花園に乗り組んでくる。

 今季はスクラムの強いFW、スキルの高いBKと、各ポジションに能力が高い選手を揃えている。そのなかで注目すべきは、ラン、キックで得点に絡むプレーが期待されるFB吉田晃己(3年)だ。

 世田谷ラグビースクール出身の吉田は、FBとして身長167cmと決して大きいほうではない。だが、切れ味のいいランと高い精度のプレースキックが武器で、東海大相模との予選決勝では32得点(2トライ、5ゴール、4PG)を挙げて勝利に大きく寄与。名将・藤原秀之監督も「(吉田が)春から一番成長した」と目を細めた。

 自身初の花園を前に、吉田は「(予選決勝では)最後にゴールを外してしまったので、花園では100パーセント決められるようにがんばりたい」と意気込んでいる。

 注目の高校ラガーマン3人目は、2大会ぶり7回目の出場を決めた静岡聖光学院(静岡)のエースFB小野澤謙真(3年生)を取り上げたい。名前を見て気づいたファンも多いだろう。「うなぎステップ」の異名を取った日本代表81キャップの名WTB小野澤宏時氏の息子だ。

 小学校時代は横浜F・マリノスのスクールでスペイン遠征に参加するほどのサッカー少年だった。父と同じ静岡聖光学院に進んだ中学校時代もラグビーの練習は週1日ほどで、清水エスパルスSSジュニアユースでサッカーに打ち込んでいた。

 ただ、高校からは「ラグビーの楽しさに惹かれて」楕円球に専念。1年時からレギュラーとして活躍し、早々に花園の地を踏んだ。さらに2年時はオーストラリア留学を経験し、父譲りのステップとスピードで「セブンズの若手有望選手のひとり」と呼ばれるまでに成長している。

 今季の静岡聖光学院は東海大会で決勝に進出し、セブンズの全国大会でも11位の好成績を残している。小野澤は「父と練習したり、アドバイスしてもらえることはアドバンテージだと思っています。花園の目標はベスト8。花園でトライを取ってチームの勝利に貢献したい!」と語気を強めた。

【日本代表No.8テビタ・タタフを彷彿とさせる】

 今年の花園では、2年生からも目が離せない。最も注目しておきたい逸材は、長崎県予選の決勝で長崎北陽台と引き分けの末、抽選で3年ぶり7回目の出場となった長崎南山(長崎)のPR本山佳龍(2年)である。187cm、117kgの巨漢で、今年は目標としていたU17日本代表にも選出された。

 本山は小学2年から大村ラグビースクールでラグビーを始めたと同時に、小学4年から相撲もやって九州大会で優勝したほどの身体能力の持ち主。中学時代も抜きん出た存在で、ラグビーでは県選抜で全国準優勝となり、相撲では全国大会ベスト16となった。

 そのため、相撲部屋や相撲の強豪校から誘われ、一時は相撲の道に行こうとしたという。しかし、日本ラグビー協会のユース部門でコーチを務めていた元日本代表FLの野澤武史氏から「君は日本のラグビー界の宝だ」と電話で説得され、最終的にラグビーの道を選んだ。

 本山は「相撲では足の裏以外がついたら負けだが、ラグビーは身体ひとつでバチバチ当たるところが魅力。スクラムが好きです!」と笑顔を見せる。そんな教え子を、長崎南山の久保田一平監督は「素直で研究熱心で努力家」と称える。

 また、2年生では本山のほかに、大阪桐蔭のSH川端隆馬と東海大大阪仰星のFL駒井良も有望株である。

 そして最後にもうひとり、挙げておきたい。6度の優勝を誇る目黒学院(東京第2)のNo.8ブルースネオル・ロケティ(1年)だ。トンガ出身の留学生で、高校の先輩である日本代表No.8テビタ・タタフ(現ボルドー/フランス)を彷彿とさせる爆発力を持っている。

 日本に来てまだ1年も経っていないため、「まだ花園もよくわかっていないし、大阪の場所もわからない」と竹内圭介監督は苦笑する。ただ、ロケティ自身は「自分が活躍しないと勝てない」と責任感が強く、花園出場を決めた時はうれし涙を流していた。

 将来は「日本でプロのラグビー選手になりたいです!」と話すロケティ。8年後のワールドカップでは「桜のジャージー」の中心選手になっているかもしれない。

 今年も花園には全国から将来有望なラガーマンが集まってくる。将来の15人制や7人制で日本代表になりそうな「キラリと光る原石」を探しながら、年末年始を楽しんでほしい。