着実にオランダの地で足場を固めている小川。(C)Getty Images

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 NECのストライカー、小川航基が12月15日のフォルトゥナ戦で今季5ゴール目を決め、4−1の勝利に貢献した。

 1−0でリードした前半アディショナルタイム。MFマッツォンのヒールキックがDFに当たったボールが、ゴール前に詰めていた小川の前にこぼれ、冷静にワンタッチで押し込んだ。自身にとって6試合ぶりのゴールに、小川は安堵の表情を浮かべた。

「両サイドにサイドで仕掛ける選手(ハンセン、タフサン。ともにU-21オランダ代表)がいる。でも最後まで行っちゃうタイプなんです。行けなかったときに苦し紛れのクロスを上げてくるという感じで、正直あまりいいボールが来なかった。チームが攻めていたなか、いいところにボールがこぼれてきて、それを決めれたら楽だな、と思っていたところでした。ポロッと1点取れてよかった」

 このゴール以外にも、小川は守備でふたつのゴールに関与した。まずは33分。小川はフォルトゥナの中盤のエース、ハリロビッチからボールを奪って近くにいたマッツォンにパスを預けた。まだA代表歴のないデンマーク人MFは右足を振り抜き、強烈なミドルシュートをゴールネットに突き刺した。
 
「最近、けっこう (プレスが)良いんです。僕自身も『プレスを掛けろ』と言われていて、試合を通うじてうまくハマり、それが今日も得点につながりました。みんなイケイケで、前からガンガン行くという共通意識を持っています」

 70分にはフォルトゥナの自陣での横パスを、小川がよく読んでカットしてショートカウンターの起点に。一気呵成に攻め込んだNECはハンセンのクロスをマッツォンがヘッドで決めて3−1とした。
 
 小川ははたして、敵の横パスを誘い込んで奪ったのだろうか?

「がっつり狙っていたわけではないですが、若干、誘っていたかもしれないですね。あそこ(=サイドからボランチへの横パス)を閉めるのは、FWが点を決めること以外にやらないといけない大事なことのひとつ。しっかり守備してチームのゴールにつなげたことで、自分の得点以外の部分でもチームに貢献できました」

 ゴールシーン以外にも、ポストプレーに、守備に、セットプレーのターゲットにと奮闘したフォルトゥナ戦の小川は85分、ファンの盛大な拍手を浴びながらベンチに戻ると、マイヤー監督に抱きしめられた。
 今季のリーグ戦はこれで終了。16試合で5ゴールという数字に、小川は物足らなそうな表情を見せる。

「イメージとしては、やっぱりもうちょっと得点数を重ねられると思っていました。でも、途中で(バス・ドストに)ポジションを取られて出られなかった時期もありましたし、一応最低限のところはできたと思います。16節を通じてオランダのDFの特徴、味方の特徴、監督が自分に求めていることが分かってきたので、来年はもっと良くなるんじゃないかと思います」
 
 小川は11月の月間ベストイレブンに選出された。前半戦5ゴールという数字も、欧州ルーキーイヤーであることを鑑みれば決して悪くはない。それだけに元日開催の日本対タイ戦のメンバーに選ばれたいという思いはあったのでは? 上田綺世(フェイエノールト)の今季ゴールは1。国内リーグの数字でライバルに差をつけている。

「フォワードは得点がすべてだっていう風に僕は思っている。 ただ、森保監督の考えていることももちろん分かりますし、今まで彼(上田)には積み上げてきた(ものがある)。僕も彼の動きを見て学ぶこともたくさんあります。本当に彼は、僕にはないものを持っています。彼の動き出しとかを僕は勉強していますし、彼のことをリスペクトしています。今はもっともっとやらなきゃいけないという思いが強いので、全然下を向いていません。

 吸収する気持ちを忘れてしまったら、選手として終わってしまうので、 常に学びながら、プレーでしっかり見せたい。競争はもちろんあると思う。僕も得点を重ねたら、いずれ絶対(代表に)呼んでくれると思います」

取材・文●中田 徹

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