“史上最高レベル”群雄割拠の男子シングル!自己ベスト300点超えの4人が激突<グランプリファイナル>

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12月7日(木)から中国・北京で開催される『フィギュアスケートグランプリファイナル』。

これまで数多の名場面が生まれてきた大会の開幕を目前に控え、“群雄割拠”となった男子シングルの戦いに注目が集まっている。

◆進化した“4回転の神”

昨シーズン、男子シングルを牽引したのは宇野昌磨だった。

グランプリファイナル初制覇、世界選手権連覇など、出場したすべての大会で優勝。絶対王者として君臨した。

しかし、今シーズンは宇野の独走に待ったをかける強力なライバルたちが台頭。

その一番手が、アメリカのイリア・マリニン(19歳)だ。

昨シーズン、世界初成功の超大技“4回転アクセル”で大ブレイク。「4回転の神」という異名をとり、フィギュアスケート新時代の扉を開いた。

今年のグランプリシリーズ開幕戦アメリカ大会でもマリニンは輝きを放つ。

リスクの大きさも考慮して、代名詞の4回転アクセルを封印。完成度を重視した演技で、自己ベストを20点以上も更新する圧巻の優勝劇だった。

これは国際スケート連盟公認大会において、ショート・フリーの合計で300点を超えた史上5人目の快挙。

そこには、“表現力の向上”という確固たる進化の証があった。

マリニン:「演技構成点が去年より大きく伸びた。4回転アクセルを入れた去年の大会ではここまで評価は高くなかった」

昨シーズンのファイナルでは、フリーで4回転アクセルなど高難度ジャンプを多く組み込み、技術点では全体1位の評価。

一方で、主に表現力を評価する演技構成点は、10点満点中すべて7点台だった。

優勝した宇野と比べると16点近い差をつけられ、全体でも4位の評価に終わってしまう。

それから1年、アメリカ大会ではショート・フリーともに8点台後半の演技構成点。シーズン序盤にして大きな成長の跡を見せた。

第3戦フランス大会でも高い評価を得て、2戦連続のトータル300点超え。

そして、一番乗りを果たしたファイナルに向け、マリニンは封印していた大技についてこう語る。

マリニン:「自分のために4回転アクセルを跳びます。プレッシャーの中で自分にどれだけのことができるか試したい」

このように、4回転アクセルの解禁を示唆した。

マリニン:「今までで一番混沌としたファイナルになると思う。昌磨とアダムがいて誰がトップに立つのか、すごいバトルになると思う」

◆驚異の身体能力で初のファイナル

マリニンが口にした「アダム」とは、フランスのアダム・シャオ イム ファ(22歳)だ。

フランス大会では、自己ベストを30点近くも更新してマリニンに勝利。300点超えスケーターの仲間入りも果たした。

さらに翌週行われた中国大会では、フリーで宇野を逆転して2連勝。立て続けの番狂わせで世界を驚かせた。

シャオ イム ファ:「いつか300点を超したいと思っていたので達成できて本当に嬉しいです。今の僕はトップ選手の一人だと思う」

大きな自信をのぞかせるシャオ イム ファ。フィギュアスケーターとしての特長は、その“高い身体能力”にある。

圧倒的な高さを誇る4回転ジャンプ、アクロバティックな動きを入れた振り付け、さらに演技後にはバックフリップで喜びを表現することも。

この驚くべき身体能力の陰には、フィギュアスケーターとしては稀と言えるウエイトトレーニングがあった。

シャオ イム ファ:「週に3回ジムでウエイトを使った特別なプログラムを行っている。脚に大きな力がついて高いジャンプができるんだ」

鍛え抜かれたその身体で、初のファイナルへと挑む。

◆絶対王者の“モチベーション”となった選手

一方、日本が誇る2人の300点超えスケーターも。

1人は18歳で出場した北京オリンピックで銀メダルを獲得し、日本フィギュア史上最年少のメダリストとなった鍵山優真(20歳)だ。

昨シーズン負った左足首のケガも癒え、復活を期す今シーズン。

フランス大会では、シャオ イム ファ、マリニンに次ぐ3位。第6戦日本大会では、グランプリシリーズ2年ぶりの優勝で完全復活を果たした。

もう1人は、群雄割拠のファイナルに臨むディフェンディングチャンピオン・宇野昌磨(25歳)。

2戦連続で優勝こそ逃したものの、中国大会・日本大会でともに2位とさすがの安定感でファイナルに進出した。

日本大会の後では、胸に秘めていた“ある思い”を語っていた。

宇野:「鍵山優真くんという存在のおかげで、日本大会で久々に熱い気持ちになりました。この3年間僕にモチベーションを与えてくれた存在。彼が憧れているって言ってくれたことで、胸を張って『尊敬』『憧れている』って言ってもらえる選手でいたいというのが、モチベーションが再び出るきっかけになった」

宇野を突き動かしているのは、鍵山のような若い選手たちからの憧れの眼差しだった。

宇野:「僕はスケートをモチベーションでしかやってこなかった。技術が優れているとか表現力が優れているとはまったく思ったことがなくて、人より“スケートに対する熱量”は絶対に負けない自信がある。

僕に勝ちたいと思って試合に出てくれたら嬉しいですし、ちゃんと大きな壁になっていたいです。簡単に落ちてしまうと皆さんもやりがいがないと思うので、ちゃんと壁になれるように全力を尽くしたいと思います」

自己ベスト300点超え4選手が集結する男子シングル。最後に、宇野は今回のファイナルに向けてこう語る。

宇野:「長年、世界のトップ争いをさせていただいているなかで、一番ハイレベルな戦いになると思います。僕も今の出来であれば決して負けない状態にあるので、おもしろい大会になると思っています」

12月7日(木)、“史上最高レベル”の戦いがいよいよ始まる。