DAZN退会、執拗な引き留めが物議...電話orチャットで手続き求める 消費者庁の見解は
サッカー・Jリーグの試合などが楽しめるスポーツ動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」について、退会手続きが酷すぎるとX(旧ツイッター)上で利用者から異論が出て、注目を集めている。
この利用者は、公式サイト上で手続きをしようとしても、電話やチャットで連絡を取るように求められ、異常に感じたという。共感の声も相次いでおり、記者がサイトで退会を試すと、やはり電話などの連絡を求められ、10分ほどは時間を取られた。
「いい加減早く退会させてください」と抗議
DAZNは、英パフォーム・グループが運営し、日本では、2016年にサービスが始まった。Jリーグや欧州主要リーグなどのサッカー、プロ野球、モータースポーツといった試合中継を定額制で楽しめる。
DAZNの退会方法に苦言を呈したのは、ユーチューブで企業の内情を伝える動画配信などをしている「係長」さん(@cakari14)だ。
係長さんは23年11月15日、自らが退会した経緯を紹介する投稿をX上でして、2万件以上の「いいね」を集める反響を呼んだ。
それによると、公式サイトのマイ・アカウントから「退会する」をクリックすると、「退会されたい理由は何ですか?」と問いかけるページになった。このページでは、「これらのコンテンツが視聴できなくなります」と人気動画のリストがいくつか表示され、さらに「退会手続きに進む」を押すと、「退会する」理由のリストが出て、チェックを求められた。
1つチェックを入れて、さらに「退会手続きに進む」を押すと、「お得」だとする情報が大きく表示され、その下に「退会をご希望のお客様は、下記担当部署までご連絡ください」とあった。連絡先としては、電話やチャットが案内されていた。
係長さんは、チャットでの退会を選んだといい、DAZN側からは、お得だとする年払い契約への変更やサービスの一時停止を案内された。しかし、係長さんは、それらの提示を拒否し、退会理由もまた聞かれたが答えず、「いい加減早く退会させてください」と抗議して、アカウントを削除してもらったという。
「ネット上で退会できるように改めるべき」
今回の投稿について、係長さんは11月16日、J-CASTニュースの取材に応じ、ネット上での退会手続きで電話やチャットまでさせられることについて、こう述べた。
「ネット上で退会できるように改めるべきだと思います。アンケートだけならまだわかるのですが、アンケートを複数回行った先に電話・チャットというのは、私には異常に感じており、ポストを見る限り多くの人が共感しています」
なぜDAZN側が手続きを複雑にしているのかについては、1つは、退会を引き留めるためではないかと、係長さんは推測した。さらに、ひいきにしているチームなどを聞くアンケートをして、動画への投資効率を上げるのに使うのではないかとの見方も示した。
そこで、退会を引き留められたり、電話などでの連絡を求められたりするのか実際に確かめようと、J-CASTニュースの記者も17日、18時過ぎから退会を試した。
電話やチャットが案内されるまでは、前出の係長さんが投稿した通りの内容だった。まず電話をかけると、記者の前に会話を待っている客がいると伝えられた後、数秒で担当者に電話がつながった。今度は、チャットを試すと、デジタルアシスタントが反応して、担当者がいるか確認すると案内があった。
これも、数秒で担当者がチャットに出て、まず退会の意思を改めて聞かれた。続いて、手続きを始めるとして、やはり係長さんと同様、退会理由をまた質問してきた。理由を書くと、1点お知らせがあるとして、最初の3か月が無料の年間プランへ変更でき、お得になる額の提示があった。これを断ると、さらに最終確認として、最大180日アカウントを停止でき、希望日に自動的に再開される一時停止機能の利用が便利だとして勧められた。
そして、退会の方を依頼すると、やっと手続きに入った。30日前までの退会通知期間の終了後に退会になると告げられ、不明点なども聞かれる。ないことを答えると、「承知いたしました。お時間をいただきありがとうございました」などと返答があり、チャットが終了した。電話した部分を除くと、退会手続きを始めてから、10分ぐらいが経っていた。
カスタマーサービス「必要と判断した場合には改めて取材にご連絡」
退会問題について、消費者庁の取引対策課は11月16日、取材に対し、「特定の会社への具体的なことは申し上げられない」としたうえで、一般論として、電話やチャットまで誘導することについてこう述べた。
「特定商取引法の第11条で、通信販売の広告については、契約の撤回や解除に関する事項を表示しないといけないとあります。解約などの方法を規制するものではありませんが、電話やチャットを使うならそれも表示しないといけません。さらに、昨年6月の法改正施行で追加された第12条の6で、規制が強化され、契約するときの最終確認画面でも解除などに関する事項を表示しないといけないほか、人を誤認させる表示も禁じられました。電話やチャットで受付時間などが限られ、なかなかつながらないといった場合は、解除などの事項が表示されたことにはなりません」
取引対策課によると、これらの条文に違反するとみなされたときは、行政処分の対象になる。また、解約などができると誤認される表示の場合は、契約を取り消すことができる。
複雑だとされた退会方法について、DAZNの問い合わせ先にメールで16日に取材依頼すると、カスタマーサービスから内容を確認して連絡すると同日中に返信があった。その後、17日になって、カスタマーサービスからは、取材内容を担当部署に報告したとして、「担当者にて詳細を確認させていただき、必要と判断した場合には改めてご連絡させていただく事になると存じます」と再び返信があった。担当部署から取材に回答があり次第、追って伝える。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)