先週のGI天皇賞・秋では、イクイノックスが驚異的なレコードタイムで圧勝。三冠牝馬リバティアイランドとの対戦が注目される次戦のGIジャパンC(11月26日/東京・芝2400m)へ向けて、さらに弾みをつけた。

 そして、今週行なわれるGIIアルゼンチン共和国杯(11月5日/東京・芝2500m)も、そのジャパンCへの重要なステップレースのひとつとなる。現に、2016年の勝ち馬シュヴァルグラン、2021年の覇者オーソリティがここを勝って、ジャパンCでも上位争いを演じてきた。

 そうした実力馬が力を発揮している一戦とあって、比較的堅いレースと見られているが、過去10年で1番人気は3勝、2着1回、3着1回。半分は馬券圏外に沈んでおり、3連単ではオイシイ配当がしばしば生まれている。

 そういう意味では、波乱含みの一戦。しかも、今年は断然の存在がおらず、研究ニュースの藤田浩貴記者もこう語る。

「今年のアルゼンチン共和国杯は、実績上位のヒートオンビート(牡6歳)がトップハンデの59kg。加えて、鞍上がテン乗りと、未知の部分が多いですね。

 その他、テーオーロイヤル(牡5歳)は昨年のジャパンC以来、ヒュミドール(せん7歳)も今春のGI天皇賞・春(4月30日/京都・芝3200m)以来と、長期休養明け。重賞実績のある馬の多くが不安要素を抱えており、混戦模様なのは間違いないです」

 そんななか、藤田記者は2頭の穴馬候補をピックアップした。

「まず狙いたいのは、マイネルウィルトス(牡7歳)です。昨夏のGIII函館記念(函館・芝2000m)で2着となったあと、繋靭帯炎で1年の休養を余儀なくされましたが、復帰戦となった今夏の函館記念で見せ場十分の走りを披露。2着馬とはタイム差なしの4着に入って、年齢的な衰えや能力に陰りがないことをアピールしました。

 その後のレースでは着順を落としていますが、2走前のGIII新潟記念(10着。9月3日/新潟・芝2000m)は不向きな瞬発力勝負になったうえ、終始外を回る形になったことが響きました。前走のGII京都大賞典(6着。10月9日/京都・芝2400m)は出遅れに加え、直線ではスムーズさを欠く進路取りが影響。それぞれ敗因は明白です。

 それでいて、勝ち馬から新潟記念がコンマ5秒差、京都大賞典がコンマ4秒差と大きく負けていません。評価を下げるのは早計です」


アルゼンチン共和国杯での一発が期待されるマイネルウィルトス。photo by Sankei Visual

 父は2008年にここを勝って、ジャパンCも制したスクリーンヒーロー。自身もコース実績があり、一発の期待がますます膨らむ。

「叩き良化型らしく、順当に走れる体つきになってきました。レース間隔は詰まっていますが、1週前の追い切りでは栗東の坂路で52秒1の好時計をマーク。連戦の疲れは皆無です。

 2年前のこのレースでは、オーソリティの2着。コース適性も十分です。発馬が安定しない面はあるものの、ゲートの出に定評のある横山武史騎手が手綱を取るのは心強い限り。

 肝心の展開面も、アフリカンゴールド(せん8歳)やディアスティマ(牡6歳)など先行馬がそろっていて、レースはそれなりに流れる公算が高く、持ち味である息の長い末脚が生きそうです。

 他馬との比較から、ハンデ57kgもやや恵まれた感じ。ここでの復活劇に期待したいです」

 藤田記者が注目するもう1頭は、レッドバリエンテ(牡4歳)だ。

「今回はオープン入り初戦で、初の重賞参戦。成長度合いが遅く、なかなか芯が入ってこなかったのですが、大事に使われながら着実にステップアップしてきました。

 休み明けの前走を使ったあとはひと息入れましたが、帰厩後はコースでビシビシ追われています。その動きは以前よりも力強さが増しており、1段階ペースアップしたのは間違いありません。

 距離に関しても、ハマるまでに時間がかかるタイプで、本質的に2000mはやや忙しい印象。長めの距離のほうが自分のリズムをとりやすいようです。

 実際、3歳の春には、先週の2勝クラスで1年5カ月ぶりに復帰して楽勝した好素材のダノンギャラクシー(牡4歳)に、東京・芝2400mでクビ差の2着と善戦。距離延長は望むところでしょう。

 実績面では劣るものの、順調に使えている強みと伸長度、ハンデ55kgを考えれば、即通用してもおかしくありません」

「荒れる」可能性が大いにあるハンデ戦。ここに挙げた2頭が激走を果たし、好配当を生み出しても不思議ではない。