ロコ・ソラーレ藤澤五月、PCCC連覇なるか 21年ぶりに訪れた地で思い起こす「当時の夢」と少女時代のかわいいエピソード
北米、中南米、アジア、オセアニアのNo.1を決定するカーリングのパンコンチネンタル選手権(以下PCCC)が、カナダのブリティッシュコロンビア州ケロウナで開催中だ。
女子日本代表のロコ・ソラーレは、ラウンドロビン(総当たりの予選)を6勝1敗の2位で通過。準決勝ではエキストラエンドまでもつれたアメリカとの接戦を制して、連覇に王手をかけた。
スキップの藤澤五月は「(敗れた)韓国戦だけよくなかったけれど、そこからしっかりカムバックできた。全体的にいいゲームができていると思います」と、これまでの戦いを振り返った。
懐かしの地で開催されているPCCCで奮闘している藤澤五月。photo by Takeda Soichiro
実は、藤澤にとってケロウナは、生まれて初めての海外旅行で訪れた土地だ。2002年3月、彼女が10歳の時に家族旅行でこの風光明媚な湖畔の街を訪れている。ちょうど世界ジュニア選手権が行なわれていて、その観戦と応援が目的だった。
今回はそれ以来、21年ぶりの訪問となる。記憶はおぼろげだと言うが、それでも「楽しかったということは覚えています」と笑顔を見せる。
「街のなかに、今で言うAirbnbみたいな一軒家を借りて、そこに滞在していました。でも、覚えているのは(カーリング)ホールの前にある大きなストーンくらいで、正直『あ〜、こんなふうだっけな〜』という感じです」
海外に頻繁に行ける仕事をしたかったという当時、10歳の彼女の夢はキャビンアテンダントだった。
「両親に『じゃあ英語を頑張んなきゃね』と言われて、ホールのカフェに行っては『Can I have orange juice?』と繰り返して、何度もオレンジジュースを注文しました。そのオレンジジュースがすごく美味しかったのが最大の思い出です」
覚えたてのフレーズを使い、オレンジジュースを連日ガブ飲みして、体重が5kgも増加したというおまけつきのエピソードまで披露してくれた。
余談ついでに言えば、前述の世界ジュニア選手権に出場していた当時の日本ジュニア代表には、今回のPCCCの男子代表選手でもある山口剛史(SC軽井沢クラブ)が男子の代表チームに在籍。そして、女子の代表チームのスキップを務めていたのは、ロコ・ソラーレの創始者である本橋麻里だった。
そんな奇縁も含めて、今季の開幕時には「(PCCCで)ケロウナに行けるのはかなり楽しみです」とコメントした藤澤。今回、実際にアイスに立った第一印象は「スイープの効く、いいアイスだなと思いました」とのことだ。
一方、21年ぶりの感慨のようなものについては、会場とホテルの往復ばかりでダウンタウンなどをゆっくり見る時間がなく、「あんまりないけれど、『(あれから)21年も経ったのかぁ』という不思議な感じ」と、率直な感想を語ってくれた。
もし21年前の自分に何か言葉をかけるとしたら? と質問してみると、藤澤は「う〜ん......、難しいことを聞きますね」と少し考えたのち、「少し形は違っているけれど、海外にたくさん行ける仕事はしているよ、ですかね」と少し照れたようにはにかんだ。
21年前のカナダに始まり、彼女はカーリングとともにスウェーデン、ニュージーランド、中国、ノルウェー、スイス、デンマーク、ラトビア、アメリカ、スコットランド、カザフスタン、韓国、オーストラリア、オランダ......など、多くの土地を巡ってきた。
そして、次なる目的地は2026年のイタリアだ。今大会前には「まだ自分の伸びしろを信じている」と言いきった、彼女の旅はまだまだ続く。