U−22日本代表キャプテン・山本理仁がベルギーで覚醒の予感「成長した結果がデータにも出ている」
U−22日本代表でキャプテンを任される男が、新天地で着々と力を蓄えている。
「やっぱり日本より(試合の)展開が速いですし、今まで触れていないサッカーではあったんですけど、そのなかでやることによって、GPSのデータは確実に伸びてきて、走行距離やスプリントの数がチームトップだったり、今までの僕だったらありえないような結果がデータ的にもしっかり出てきている。そういった意味では、自分の成長は感じています」
そう語るのは、今夏ガンバ大阪からシント・トロイデン(ベルギー)へと移籍した山本理仁である。
シント・トロイデンに移籍し、着実にレベルアップを重ねている山本理仁。photo by AFLO
未知なる環境に身を置くレフティは、過去の取材のなかでも「スルーパスや相手の逆を取るプレーに喜びを感じていた」と話していたように、以前はテクニシャンのイメージが強かったが、そのプレースタイルは少しずつ変化が見え始めている。
ボールを扱う技術に優れるがゆえ、時に軽さが見えたプレーに力強さが加わった、とでも言おうか。とりわけ山本に自身の変化を実感させるのは、「ハイスピード時の走行距離が間違いなく向上している」ことだ。
「日本にいた頃とは明らかにデータが違うんで。そのなかで自分のテクニックを出せるようになれば、唯一無二のものになるんじゃないかって思っています」
山本自身が感じている、「(相手選手に)寄せるスピードは確実に上がっていると思う」という手応えは、単なる自己評価によるものだけではない。
「(U−22代表の)練習中にも、矢野(由治フィジカルコーチ)さんから『グッと寄せられるようになったね』と言われるんで、たぶん第三者の目から見ても、そういう成長が見えるようになってきているんだと思うし、自分の手応えとしてもその(速く強く相手に寄せられる)感覚はありますね」
その成果は当然、シント・トロイデンでの出場機会にも反映されている。
今季新加入の山本は、開幕戦でいきなりのベルギーデビューを果たして以来、先発出場こそ1試合のみではあるものの、リーグ戦全試合に出場(第12節終了時点)。デビュー戦が後半85分からの出場だったように、試合終了間際に交代出場することもあったシーズン序盤を経て、現在は徐々に1試合ごとの出場時間を伸ばしてきている。
コンスタントに出場機会を得るなかで、徐々に早まる山本投入のタイミングは、チーム内における序列が少しずつ入れ替わり始めているからこそだろう。
「この間の試合(第8節ゲンク戦)にスタメンで出ましたけど、その前後くらいから(トルステン・フィンク)監督の信頼をつかんできているんじゃないかな、と。最近、交代の1枚目として使われることが多くなったのは、信頼を勝ち取ってきている証だと思っています。
ただ、ここから求められるのは、ゴールやアシスト。そういうわかりやすいものを見せていかないと、やっぱりレギュラーの座を確保するっていうところまではいけないと思うんで。監督からある程度の信頼を得るという意味では手応えを感じつつ、あともうひとつのところだなっていう感触ではありますね」
海外移籍を決断するにあたり、山本にはA代表への強い意識があったことは間違いない。
以前、同世代の選手がA代表に選ばれることについて、「(自分も)早くレベルを上げないと置いていかれる危機感がある」と話していたが、実際にシント・トロイデンへ移籍し、海外組のひとりとなった今、A代表という存在はどう見えているのだろうか。
「(同世代の鈴木)彩艶もしっかりシントで出場機会を勝ち取って、レギュラーを取ったことで(A代表に)選ばれたし、橋岡大樹くんもそうですけど、やっぱりチーム内にA代表の選手がいることで、そこへの意識はより高くなる。シントでポジションを取って活躍さえすれば、A代表に食い込めるっていうことをふたりが示してくれていると思うんで、よりA代表が身近になったような感じがします」
ベルギーで文字どおりパワーアップを続け、U−22代表においてはもはや不可欠な存在になりつつある山本も、やはり目指すはさらなる高みである。
「(試合の)映像を見ていても、やっぱりA代表は強度だったり、スピードだったりっていうところで、格段にこっち(U−22代表)とは違うと思います。でも、ヨーロッパに来て、そこは自分も上がっているところだと思うし、ヨーロッパに来なければ、そういったものは上がらなかったのかな、とも思うんで。そういった意味では、やっぱり海外に来てよかったなって、自分のなかで感じています」
昨秋以来、海外遠征を重ね、ヨーロッパをはじめとする強豪国との対戦を重ねてきたU−22代表は、来たる11月18日、静岡・IAIスタジアム日本平にアルゼンチンを迎え、チーム立ち上げ以来、国内では初めてとなる国際試合を行なう。
いわば、凱旋試合。おそらく左腕にキャプテンマークを巻くことになる山本は、ベルギーでたくましく成長した姿を見せてくれるはずである。