美容業界にとって、TikTokは主要なトラフィック源と収益源であり続けている。トレンドの変化の激しさが特徴の同プラットフォームをいかに活用できるかが、美容分野のブランドにとって最大の関心事となっている。

TikTokのトレンド分析とコンテンツ制作をマーケティング戦略の主要部分に据えたブランドのひとつが、ミリー・ボビー・ブラウン氏(女優)が2019年に立ち上げたD2C美容ブランド「フローレンス バイ ミルズ(Florence by Mills)」だ。

同ブランドによると、D2Cオンラインストアの最大のトラフィック源はTikTok。SNS管理プラットフォーム「ダッシュハドソン(Dash Hudson)」と提携し、TikTokでもっとも効果的なコンテンツに関するデータを集め、分析している。そして得られたインサイトをもとに、クリエイティブエージェンシー「ジ・エディット(The Edit)」ならびに「パワーデジタル(Power Digital)」と共に制作するという。

「私たちは写真撮影の前にダッシュハドソンの競合インサイトを見て、競合他社が何をしているのか、そして業界にとって何が効果的なのかを確認している」と、フローレンス バイ ミルズのマーケティング担当バイスプレジデントであるサマンサ・フィオック氏は語る。

2022年から同社と提携するダッシュハドソンの分析から、フォロワーのエンゲージメントがもっとも高かったのは舞台裏を紹介するローファイ(アナログ感のある)なコンテンツだったことが明らかになった。これは、インスタグラムでは非常に洗練されたコンテンツが人気なのに対して、TikTokではオーセンティックなコンテンツがユーザーから求められているという、多くのブランドが語っていた内容とも一致する。

フローレンス バイ ミルズが、ジ・エディットやパワーデジタルと組んだのも、このような背景に基づくものだった。同ブランドのTikTokコンテンツの大部分は、写真撮影の舞台裏やブラウン氏へのQ&A、チュートリアル動画、ブラウン氏がケイラ・マレック氏などのインフルエンサーと登場する動画クリップなどだ。

動画の方向性を転換したことの、良い結果はすぐに表れた。TikTokコンテンツによって、同ブランドの2022年下半期の売上は前年比で100%以上の成長率を達成し、ほとんどの顧客はTikTokアカウントのプロフィールにあるリンクから訪れていた。また同時期の動画再生回数は、前年同期比で約800%増加している。これによって同社のエンゲージメント率は、美容業界の他社より平均242%も高くなった。

「自分たちにとって何が効果的なのかを常に分析し、新たなトレンドに飛びついている。私たちの戦略は、トレンドを注視して先取りし、コミュニティーの要望に耳を傾けることだ」と語るのは、同ブランドのプロダクトマーケティングマネジャーである、ウェストン・オコナー氏。「私たちはコミュニティーに恵まれている。このようなコミュニティーはTikTokで見たことがない。彼らは、私たちのコンテンツをとても支持してくれている」。

[原文:How Florence by Mills increased its TikTok views by nearly 800%]

DANNY PARISI(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)