残り1枠となったJ1自動昇格をかけたサバイバルマッチは、死力を尽くした戦いの末、両者痛み分けに終わった。


J1自動昇格の残り1枠を争うジュビロ磐田と東京ヴェルディ。photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty Images

 前節終了時点で3位のジュビロ磐田と4位の東京ヴェルディがヤマハスタジアムで顔を合わせたJ2第40節。順位にこそ差があるものの、勝ち点ではともに68で並び、ここで敗れたほうが、自動昇格が遠のくという一戦である。

 先手を取ったのは、アウェーチーム。前節でジェフユナイテッド千葉との"サバイバルマッチ第1弾"を、それも2点のビハインドをひっくり返す3−2の大逆転で制し、勢いに乗る東京Vだった。

 東京Vは後半51分、相手CKのこぼれ球を自陣ペナルティーエリア付近で拾ったMF中原輝がドリブルで60m以上を独走。相手ゴール前で左から追走してきたMF齋藤功佑に一度ボールを預け、リターンのクロスを右足ワンタッチで合わせると、相手GKが弾いたボールを最後はDF林尚輝が押し込んだ。

 しかし、ホームの磐田はドリブラーのMF古川陽介を投入し、サイド攻撃に厚みを持たせて反撃。後半69分、ペナルティーエリア内でパスを受けたMF上原力也が、巧みにゴール左隅を狙った柔らかなシュートを決めて追いついた。

「交代で出た選手もすごくパワーを持っていいパフォーマンスしてくれているので、終盤に1点は取れるんじゃないかという自信が、シーズンを通して少しずつ積み上がっている。そういう理解でみんながプレーできているんじゃないかと思う」(磐田・MF山田大記)

 その後も磐田が攻勢に試合を進めてはいたが、東京Vもカウンターの脅威を常にチラつかせて対抗。互いに得点と失点の可能性を背中合わせに抱える時間が続いた。

「ジュビロの傾向として両SBが高い位置をとり、CB2枚とボランチ1枚でリスク管理をしているなかで、そのボランチをドリブルではがした時に3対2のシチュエーションができる感覚を常に持っていた」(東京V・中原)

 結局、試合はともに追加点を奪うことができずに1−1の引き分け。自動昇格圏につける2位の清水エスパルスを捕まえたい両チームにとっては、痛恨の勝ち点1だったに違いない。

 しかし、試合内容に目をやれば、互いに死力を振り絞った熱闘は非常に見応えがあるものだった。勝ちきれなかったことを悔しがった両指揮官が、一方で対戦相手を称え、充実感を漂わせていたことがその事実を裏づける。

「相手も気持ちの入ったチームだったし、非常に拮抗した試合だった」(磐田・横内昭展監督)

「ジュビロの力を考えたら、我々の持てる力はすべて出して非常にいい試合ができたと思う。選手がすべて出しきったことには胸を張りたい」(東京V・城福浩監督)

 概ね優勢だったのは磐田のほうだろう。ボクシングのような判定決着があるなら、僅差で磐田の勝利だったかもしれない。

 だが、東京Vにしても決して怯むことなく、前に出る姿勢を失わなかった。単純なパンチの手数では劣っていても、一発で相手を仕留める可能性のあるパンチを何度か放っている。

「試合展開はキツかったが、お互い点を取らなければいけない状況だったので、そういう展開になるのはしょうがない。両チームの意地が表れた試合展開だったかなと思う」(東京V・DF谷口栄斗)

 結果は、不本意な勝ち点1。しかし、それが持てる力を出しきったがゆえの結果であるからこそ、待っていたのは思わぬ吉報だった。

 前を走る清水が、18位のロアッソ熊本に1−3で敗れたのである。

 もし清水がこの試合に勝っていれば、引き分けた磐田と東京Vとの勝ち点差は2から4に開いていた。残り2試合という状況を考えれば、逆転自動昇格はあまりに厳しく、まさに共倒れとなっていたはずだ。

 ところが、清水の思わぬ逆転負けで、2位との勝ち点差は1に縮まり、磐田と東京Vはともに自動昇格争いに踏みとどまった。まさに、「この勝ち点1を残り2試合にどうつなげていくかは我々次第」(横内監督)である。

 この結果、J1自動昇格争いは勝ち点1差に3クラブがひしめいた状態で、いよいよクライマックスに突入する。当事者はともかく、見る側にとっては非常に面白くなってきたことは間違いない。

 3クラブのなかで、自力での自動昇格を果たせるのは清水のみ。とはいえ、背中に磐田と東京Vがピタリと貼りついて追走している現状は、優位に立つ清水にとって決して心地いいものではないはずだ。

 決着が最終節までもつれる可能性は極めて高い。

 また、3クラブが最後まで自動昇格を目指すのは当然ながら、仮にその願いが叶わなかった時、大きなショックをJ1昇格プレーオフまで引きずったのでは意味がない。

 実際、過去のプレーオフで3位クラブが思いのほか苦戦しているのは、そうしたネガティブな心理状態が少なからず影響しているとも考えられる。

 残り2試合で連勝を狙うのはもちろんだが、心身ともに良好なコンディションを保ってプレーオフに向かうこともまた、自動昇格争いに身を置く3クラブが見失ってはいけないポイントだ。

「プレーオフを含めて自力で(J1へ)行ける状況なので、まずは2連勝して自動(昇格)ならもちろんいいし、そうじゃなくても、その後しっかり3位でプレーオフに挑めるように、自分たちがやれることをしっかりやりたい」(磐田・山田)

 刹那的に自動昇格を目指して燃え尽きるのではなく、同時にいいコンディションでプレーオフに入れる準備ができるか否か。

 J1自動昇格争いが熾烈を極めるからこその、残り2試合のカギである。