「eスポーツ部の行き詰まり感を打破したい」 先生の熱意で実現した4校合同ゲーミング合宿
2023年8月、滋賀県立八幡工業高等学校にて、4校の高校eスポーツ部が参加する合宿が行われました。タイトルは、PCオンラインゲームの『League of Legends』(リーグ・オブ・レジェンド、以下、LoL)。3日間の合宿には、30名の生徒が参加し、メンタルコーチや技術コーチを招いた本格的な内容で開催されました。
このeスポーツ合宿は、滋賀県立八幡工業高等学校のeスポーツ部顧問である、三浦先生の発案によって実現。記事では、三浦先生への取材をもとに、合宿が行われた背景や3日間の内容をお届けします。
○オフラインの大切さと、eスポーツ部の行き詰まり感の打破
合宿を企画した三浦先生は、“ゲーミング修学旅行”として、5月に静岡で行われた大型LANパーティ「C4 LAN 2023 SPRING」でeスポーツ部の生徒たちを引率していました。三浦先生は、このLANパーティを通じてオフラインの場ならではのつながりを、改めて感じたと言います。
eスポーツ部の生徒たちは、他校との練習試合を行うことがありますが、オンラインで完結してしまうため、あまり交流を深める機会がありません。そうした生徒たちにも、オフラインならではの深いつながりや充実感が得られる場をつくろうと、今回の合宿が企画されました。
そして、三浦先生が合宿を企画した背景には、もう1つ大きな理由がありました。それは、立ち上げから3年が経つeスポーツ部に漂っていた“行き詰まり感”です。
「eスポーツ部の顧問」は、あくまで部活動のマネジメントをしていることがほとんど。特に『LoL』のように複雑で奥深いゲームでは、技術的な指導まで担うのは難しいのが現状です。
しかし、高校生eスポーツ大会では、N高等学校やルネサンス高等学校などの通信制高校が、技術コーチを迎えた万全の練習環境で、圧倒的な結果を残すことが多くなっています。それら強豪校になかなか太刀打ちできない全日制高校のeスポーツ部としては、目指すべき目標が立てづらく、モチベーションを保ちにくい状況があります。
以前、愛知県立城北つばさ高校のeスポーツ部を取材したときにも、顧問の先生が見ているだけでは、あっという間に実力が頭打ちになってしまったというエピソードがありました。こうした壁にぶつかっているeスポーツ部は、とても多いのではないかと三浦先生は話します。
そうしたなかでも、合宿という期間が限定されたものであれば、コーチを呼びやすくなります。そのため、これを機にみんなで一気にレベルアップしたいという思いから、和歌山県立星林高等学校、飛龍高等学校(静岡県)、精華高等学校(大阪府)の3校に声をかけ、4校合同での合宿が実現しました。
eスポーツ合宿を企画した、滋賀県立八幡工業高等学校eスポーツ部顧問の三浦先生
○【1日目】メンタルコーチングを受け、チームで親交を深める
合宿1日目は、開会式からスタート。集まった4校の生徒たちの自己紹介や、チーム分けが行われました。5対5で対戦する『LoL』では、チーム内に5つのロールが存在します。そのため、事前にヒアリングした生徒たちのロールや実力をもとに、できるだけバランスを考慮してチームが振り分けられました。
三浦先生が合宿のタイトルに『LoL』を選んだ理由は、チーム競技の王道タイトルであることと、ゲームそのものの難しさに苦戦していること、そして、生徒も先生もeスポーツ部をきっかけに『LoL』を始めるケースが多く、スタートラインが同じタイトルで、みんなでつくり上げて成果を出したいという思いがあったと語ります。
チームに分かれた後は、それぞれ話し合い、自由に目標を設定。初対面のメンバーを含むチームに慣れるため、ノーマル戦などでのチーム練習が行われました。
なお、この合宿には各校の顧問の先生に加え、近畿大学eスポーツサークルのLoL部門に所属する大学生も参加。3日間にわたって、コーチとして生徒たちの活動をサポートしました。
最初のチーム練習後には、アスリートメンタルコーチの土田政代さんによる講座が行われました。メンタルが重要なeスポーツでは、プロシーンでもメンタルコーチを迎えるチームが多くあります。今回は生徒向けに、チーム競技をするうえで欠かせない、自己理解やコミュニケーションをテーマとした内容でした。
特に好評だったのは、自己理解や相互理解を促すカードを使ってのコミュニケーション。eスポーツ部の生徒たちは、内気で話すのが苦手な生徒が多いそうですが、カードを活用することで会話が弾み、どんどん打ち解けていきます。積極的に会話する生徒たちの姿を見て、普段の様子を知る先生方も驚いたほどでした。
開会式では、4校のeスポーツ部から集まった約30名の生徒が順に自己紹介
チームに分かれて話し合い。顧問の先生や近大生がサポート
チームに慣れるため、まずはノーマル戦などから練習を開始
アスリートメンタルコーチの土田政代さんによる講座
コミュニケーションカードを使って自分を表現し、会話をしながら相互理解を促していく
○【2日目】技術コーチ、リールベルトさんによる本格指導
合宿2日目には、技術コーチとしてリールベルトさんを迎え、講座やフィードバックが行われました。リールベルトさんは、国内プロリーグ「League of Legends Japan League」(LJL)が開幕した2014年からプロ選手として出場し、その後コーチや解説者としても活躍している実績の持ち主。リールベルトさんが技術コーチを務めたのは2日目のみでしたが、生徒たちには事前に課題が伝えられていました。それは、ロールごとに5〜6体に絞られたチャンピオン(キャラクター)一覧から、チャンピオンを選んで練習しておくというもの。合宿では、それらのチャンピオンを組み合わせ、基本のチーム構成をつくります。
これは3日間という限られた時間で練習の成果を出すための、重要な工夫の1つでした。『LoL』には、現在160体以上のチャンピオンが存在し、勝敗に絡む要素も多岐にわたります。そのため、普段の練習試合では、なぜ負けたのかを振り返るのが難しく、成長を感じづらい問題がありました。しかし、意図を持った基本のチーム構成でプレイすることで、自身の役割を意識しやすく、試合内容を振り返りやすくなります。
当日は、リールベルトさんによる講座から始まりました。まずは、『LoL』の基本的な試合運びや集団戦における考え方などを、座学で学びます。そして、その内容を踏まえてチーム戦を行い、実際の試合内容をもとにフィードバックを実施。こうした本格的な技術コーチングを初めて受ける生徒たちは、内容についていこうと集中して聞き入っていました。
コーチング終了後には、チームごとにリールベルトさんからのフィードバック内容を振り返り、3日目に向けた話し合いが行われました。その後、就寝までは自由にプレイできる時間になっており、引き続き熱心にプレイしていた生徒もいたようです。
技術コーチのリールベルトさんによる講座やフィードバックが行われた
リールベルトさんが準備した、選択するチャンピオンの一覧と基本的なチーム構成の考え方
講座で教わった内容を踏まえながら、実際にチーム戦を実施
生徒たちのプレイを、Discordで画面共有しながらフィードバック
コーチング終了後には、サインをもらうなどリールベルトさんとの交流を楽しむ姿も
○【3日目】集大成のチーム戦で、想像以上の成長に驚き
合宿3日目には、チームごとに練習や話し合いを行い、最後に2試合のチーム戦を実施しました。このチーム戦では、順位を決めるトーナメントなどは実施せず、チームや個人の成長を感じることを目的として行います。
結果として、この合宿を通しての生徒たちの成長は目覚ましいものでした。自身の役割を意識した集団戦が行われ、試合中の声かけも増え、『LoL』ならではの見応えある試合がくり広げられるようになりました。さらに、試合後にはチーム全員でモニターを囲み、内容を振り返りながら真剣な話し合いが行われます。
この合宿での生徒たちの成長、そして練習に取り組む熱量は、先生方の想像をはるかに超えたものでした。これまで、それぞれのeスポーツ部では、「勝てないからおもしろくない」という空気になることも多かったそうです。しかし、今回の合宿では基本を学んで練習の方向性が見え、生徒自身が成長を実感できたことで、そうした閉塞感の打破につながったといえます。
すべてのチーム戦を終えたのち、閉会式を行って合宿は終了しました。今回合宿に参加した生徒たちは、コロナ禍で長らくさまざまな行事を経験できず、修学旅行などにも行けなかった世代です。こうして3日間を通して、オフラインならではの深い交流を体験したことは、間違いなく生徒たちにとって大きな経験になったでしょう。
3日間の集大成として、成長を実感すべく試合にのぞんだ各チーム
モニター横には、試合中に意識することを書いたホワイトボードが置かれた
試合後にはモニターを囲み、リプレイを見ながら内容を振り返る
3日間の合宿を通して、オフラインならではの交流を体感した生徒たち
○高校eスポーツ部の活動を文化として根付かせるために
この合宿を企画した三浦先生は、当初は上手くいくか不安もあったようですが、最終的には想像以上の成果が得られ、熱意を持って『LoL』に取り組む生徒たちの姿に感動したと振り返ります。そして、今後もできる限り実施を続け、eスポーツ部の活動を文化として根付かせるためにも、オフラインの場の大切さを伝えていきたいと話しました。
今回の合宿は、予算やスケジュールなどの面で難しさがありながらも、三浦先生の熱意によって実現したものでした。予算が限られている高校のeスポーツ部で、ゲーミングPCや周辺デバイスをそろえたり、プロのコーチを招いたりすることは簡単ではありません。今回は30台のPC環境を用意する必要があり、足りない台数分のゲーミングノートPCを無償でASUSから借りる特別なサポートを受けていました。
eスポーツ部にとって、PC環境を整えることはハードルの1つです。しかし、ゲーミングPCなどの貸し出しを行い、多くのeスポーツ部創立に寄与してきたサードウェーブの「高校eスポーツ部支援プログラム」は、今年10月に終了することが発表されています。
さらには、5年にわたって開催されてきた「全国高校eスポーツ選手権」が終了。後続大会として、「NASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権」の開催が発表されていますが、eスポーツ部を取り巻く環境は転換期を迎えているといえます。ここ数年で全国に多くのeスポーツ部が立ち上がりましたが、今後いかに充実した活動を継続していくかについて、考えていかなければならないでしょう。
こうしたなかで三浦先生は、eスポーツ部同士の横のつながりを広げ、さらに大学のeスポーツサークルなどと縦のつながりを持つことで、活動をより活性化させられるのではないかと話します。実際に、今回の合宿では大学生コーチが果たした役割も大きく、かつ大学生自身も高校生に教えるという貴重な経験ができたと語っていました。
滋賀県立八幡工業高校eスポーツ部には、SNSアカウント(@hachimanesports)からコンタクトを取ることができます。今回の事例が、同じように行き詰まり感に悩むeスポーツ部のヒントとなり、よりeスポーツ部の活動の発展につながることを願っています。
全員分のPC環境を用意するため、足りない台数をASUSが無償の貸し出しでサポートした
高校eスポーツ部と大学生とのつながりが、活動をより活性化させるかもしれない
このeスポーツ合宿は、滋賀県立八幡工業高等学校のeスポーツ部顧問である、三浦先生の発案によって実現。記事では、三浦先生への取材をもとに、合宿が行われた背景や3日間の内容をお届けします。
合宿を企画した三浦先生は、“ゲーミング修学旅行”として、5月に静岡で行われた大型LANパーティ「C4 LAN 2023 SPRING」でeスポーツ部の生徒たちを引率していました。三浦先生は、このLANパーティを通じてオフラインの場ならではのつながりを、改めて感じたと言います。
eスポーツ部の生徒たちは、他校との練習試合を行うことがありますが、オンラインで完結してしまうため、あまり交流を深める機会がありません。そうした生徒たちにも、オフラインならではの深いつながりや充実感が得られる場をつくろうと、今回の合宿が企画されました。
そして、三浦先生が合宿を企画した背景には、もう1つ大きな理由がありました。それは、立ち上げから3年が経つeスポーツ部に漂っていた“行き詰まり感”です。
「eスポーツ部の顧問」は、あくまで部活動のマネジメントをしていることがほとんど。特に『LoL』のように複雑で奥深いゲームでは、技術的な指導まで担うのは難しいのが現状です。
しかし、高校生eスポーツ大会では、N高等学校やルネサンス高等学校などの通信制高校が、技術コーチを迎えた万全の練習環境で、圧倒的な結果を残すことが多くなっています。それら強豪校になかなか太刀打ちできない全日制高校のeスポーツ部としては、目指すべき目標が立てづらく、モチベーションを保ちにくい状況があります。
以前、愛知県立城北つばさ高校のeスポーツ部を取材したときにも、顧問の先生が見ているだけでは、あっという間に実力が頭打ちになってしまったというエピソードがありました。こうした壁にぶつかっているeスポーツ部は、とても多いのではないかと三浦先生は話します。
そうしたなかでも、合宿という期間が限定されたものであれば、コーチを呼びやすくなります。そのため、これを機にみんなで一気にレベルアップしたいという思いから、和歌山県立星林高等学校、飛龍高等学校(静岡県)、精華高等学校(大阪府)の3校に声をかけ、4校合同での合宿が実現しました。
eスポーツ合宿を企画した、滋賀県立八幡工業高等学校eスポーツ部顧問の三浦先生
○【1日目】メンタルコーチングを受け、チームで親交を深める
合宿1日目は、開会式からスタート。集まった4校の生徒たちの自己紹介や、チーム分けが行われました。5対5で対戦する『LoL』では、チーム内に5つのロールが存在します。そのため、事前にヒアリングした生徒たちのロールや実力をもとに、できるだけバランスを考慮してチームが振り分けられました。
三浦先生が合宿のタイトルに『LoL』を選んだ理由は、チーム競技の王道タイトルであることと、ゲームそのものの難しさに苦戦していること、そして、生徒も先生もeスポーツ部をきっかけに『LoL』を始めるケースが多く、スタートラインが同じタイトルで、みんなでつくり上げて成果を出したいという思いがあったと語ります。
チームに分かれた後は、それぞれ話し合い、自由に目標を設定。初対面のメンバーを含むチームに慣れるため、ノーマル戦などでのチーム練習が行われました。
なお、この合宿には各校の顧問の先生に加え、近畿大学eスポーツサークルのLoL部門に所属する大学生も参加。3日間にわたって、コーチとして生徒たちの活動をサポートしました。
最初のチーム練習後には、アスリートメンタルコーチの土田政代さんによる講座が行われました。メンタルが重要なeスポーツでは、プロシーンでもメンタルコーチを迎えるチームが多くあります。今回は生徒向けに、チーム競技をするうえで欠かせない、自己理解やコミュニケーションをテーマとした内容でした。
特に好評だったのは、自己理解や相互理解を促すカードを使ってのコミュニケーション。eスポーツ部の生徒たちは、内気で話すのが苦手な生徒が多いそうですが、カードを活用することで会話が弾み、どんどん打ち解けていきます。積極的に会話する生徒たちの姿を見て、普段の様子を知る先生方も驚いたほどでした。
開会式では、4校のeスポーツ部から集まった約30名の生徒が順に自己紹介
チームに分かれて話し合い。顧問の先生や近大生がサポート
チームに慣れるため、まずはノーマル戦などから練習を開始
アスリートメンタルコーチの土田政代さんによる講座
コミュニケーションカードを使って自分を表現し、会話をしながら相互理解を促していく
○【2日目】技術コーチ、リールベルトさんによる本格指導
合宿2日目には、技術コーチとしてリールベルトさんを迎え、講座やフィードバックが行われました。リールベルトさんは、国内プロリーグ「League of Legends Japan League」(LJL)が開幕した2014年からプロ選手として出場し、その後コーチや解説者としても活躍している実績の持ち主。リールベルトさんが技術コーチを務めたのは2日目のみでしたが、生徒たちには事前に課題が伝えられていました。それは、ロールごとに5〜6体に絞られたチャンピオン(キャラクター)一覧から、チャンピオンを選んで練習しておくというもの。合宿では、それらのチャンピオンを組み合わせ、基本のチーム構成をつくります。
これは3日間という限られた時間で練習の成果を出すための、重要な工夫の1つでした。『LoL』には、現在160体以上のチャンピオンが存在し、勝敗に絡む要素も多岐にわたります。そのため、普段の練習試合では、なぜ負けたのかを振り返るのが難しく、成長を感じづらい問題がありました。しかし、意図を持った基本のチーム構成でプレイすることで、自身の役割を意識しやすく、試合内容を振り返りやすくなります。
当日は、リールベルトさんによる講座から始まりました。まずは、『LoL』の基本的な試合運びや集団戦における考え方などを、座学で学びます。そして、その内容を踏まえてチーム戦を行い、実際の試合内容をもとにフィードバックを実施。こうした本格的な技術コーチングを初めて受ける生徒たちは、内容についていこうと集中して聞き入っていました。
コーチング終了後には、チームごとにリールベルトさんからのフィードバック内容を振り返り、3日目に向けた話し合いが行われました。その後、就寝までは自由にプレイできる時間になっており、引き続き熱心にプレイしていた生徒もいたようです。
技術コーチのリールベルトさんによる講座やフィードバックが行われた
リールベルトさんが準備した、選択するチャンピオンの一覧と基本的なチーム構成の考え方
講座で教わった内容を踏まえながら、実際にチーム戦を実施
生徒たちのプレイを、Discordで画面共有しながらフィードバック
コーチング終了後には、サインをもらうなどリールベルトさんとの交流を楽しむ姿も
○【3日目】集大成のチーム戦で、想像以上の成長に驚き
合宿3日目には、チームごとに練習や話し合いを行い、最後に2試合のチーム戦を実施しました。このチーム戦では、順位を決めるトーナメントなどは実施せず、チームや個人の成長を感じることを目的として行います。
結果として、この合宿を通しての生徒たちの成長は目覚ましいものでした。自身の役割を意識した集団戦が行われ、試合中の声かけも増え、『LoL』ならではの見応えある試合がくり広げられるようになりました。さらに、試合後にはチーム全員でモニターを囲み、内容を振り返りながら真剣な話し合いが行われます。
この合宿での生徒たちの成長、そして練習に取り組む熱量は、先生方の想像をはるかに超えたものでした。これまで、それぞれのeスポーツ部では、「勝てないからおもしろくない」という空気になることも多かったそうです。しかし、今回の合宿では基本を学んで練習の方向性が見え、生徒自身が成長を実感できたことで、そうした閉塞感の打破につながったといえます。
すべてのチーム戦を終えたのち、閉会式を行って合宿は終了しました。今回合宿に参加した生徒たちは、コロナ禍で長らくさまざまな行事を経験できず、修学旅行などにも行けなかった世代です。こうして3日間を通して、オフラインならではの深い交流を体験したことは、間違いなく生徒たちにとって大きな経験になったでしょう。
3日間の集大成として、成長を実感すべく試合にのぞんだ各チーム
モニター横には、試合中に意識することを書いたホワイトボードが置かれた
試合後にはモニターを囲み、リプレイを見ながら内容を振り返る
3日間の合宿を通して、オフラインならではの交流を体感した生徒たち
○高校eスポーツ部の活動を文化として根付かせるために
この合宿を企画した三浦先生は、当初は上手くいくか不安もあったようですが、最終的には想像以上の成果が得られ、熱意を持って『LoL』に取り組む生徒たちの姿に感動したと振り返ります。そして、今後もできる限り実施を続け、eスポーツ部の活動を文化として根付かせるためにも、オフラインの場の大切さを伝えていきたいと話しました。
今回の合宿は、予算やスケジュールなどの面で難しさがありながらも、三浦先生の熱意によって実現したものでした。予算が限られている高校のeスポーツ部で、ゲーミングPCや周辺デバイスをそろえたり、プロのコーチを招いたりすることは簡単ではありません。今回は30台のPC環境を用意する必要があり、足りない台数分のゲーミングノートPCを無償でASUSから借りる特別なサポートを受けていました。
eスポーツ部にとって、PC環境を整えることはハードルの1つです。しかし、ゲーミングPCなどの貸し出しを行い、多くのeスポーツ部創立に寄与してきたサードウェーブの「高校eスポーツ部支援プログラム」は、今年10月に終了することが発表されています。
さらには、5年にわたって開催されてきた「全国高校eスポーツ選手権」が終了。後続大会として、「NASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権」の開催が発表されていますが、eスポーツ部を取り巻く環境は転換期を迎えているといえます。ここ数年で全国に多くのeスポーツ部が立ち上がりましたが、今後いかに充実した活動を継続していくかについて、考えていかなければならないでしょう。
こうしたなかで三浦先生は、eスポーツ部同士の横のつながりを広げ、さらに大学のeスポーツサークルなどと縦のつながりを持つことで、活動をより活性化させられるのではないかと話します。実際に、今回の合宿では大学生コーチが果たした役割も大きく、かつ大学生自身も高校生に教えるという貴重な経験ができたと語っていました。
滋賀県立八幡工業高校eスポーツ部には、SNSアカウント(@hachimanesports)からコンタクトを取ることができます。今回の事例が、同じように行き詰まり感に悩むeスポーツ部のヒントとなり、よりeスポーツ部の活動の発展につながることを願っています。
全員分のPC環境を用意するため、足りない台数をASUSが無償の貸し出しでサポートした
高校eスポーツ部と大学生とのつながりが、活動をより活性化させるかもしれない