伝説の剛腕が“二刀流”で選手育成 究極の夢は教え子の中日入り「それが一番の理想」
上原晃氏は整体師として活躍、東海学園大で投手コーチを務める
究極の夢は古巣にいいピッチャーを送り込むこと。上原晃氏(元中日、広島、ヤクルト)は現在、整体師と東海学園大投手コーチの二足のわらじを履く。沖縄水産で学んだ栽弘義監督の野球、プロに入って注入された星野仙一監督の野球、現役最後に勉強になったヤクルト・野村克也監督の野球など、自身が得たものを大学生育成にすべて注いでいる。選手の体の手入れをしながら、的確な技術指導ができる。それは“二刀流”上原氏の強みにもなっている。
1998年オフにヤクルトを戦力外になり、現役続行を模索したがうまくいかず、引退を決意した上原氏は整体師に転身した。愛知・豊田市に本部があるカトウ整体に入った。「現役時代に加藤先生に診てもらっていました。半分冗談で『やめたらウチに来いよ』と言われていたんです。知り合いの人も『向いているんじゃないか』と言うし、とりあえず、やってみようという形から始まったんですけどね」。
勉強を重ね、整体の奥深さを感じ、上原氏はこの世界でも成長していった。現在はカトウ整体の本部に勤務しながら、名古屋市守山区にある守山営業所も任されている。「学生野球資格回復」を認定され、愛知黎明高校のコーチを経て2023年2月1日からは愛知大学野球2部リーグの東海学園大の投手コーチも務めている。「基本的には週に3回、大学生を教えています」。治療院でも野球部の選手を診ており、まさに選手の体を熟知した上での指導となっている。
上原氏は右手人差し指と中指の血行障害のため、プロで活躍した時期が短くなった。無念の思いは今でもあるし、学生たちには同じ気持ちを味わわせたくないと強く考えている。整体師になったことで、現役時代とは、体についての知識レベルも全然違うものになった。大活躍したプロ1年目などは「ほとんど勢いだけだった」と振り返り、現在のような知識があった上でプレーしていればと思うことも多いからこそ、より綿密な指導&治療、ケアを行っている。
「自分の怪我も全部、今につながっているのかな」
「骨格がずれていると、血の流れが悪くなったりとか、肘を怪我しやすくなったりもする。肩もそうですよ。やっぱり、それはあるんですよ。無意識の中の緊張が出てきやすくなるというのはね、それが積み重なると良くない。その前に食い止めたいなというのは常にあるので、いろいろチェックとかもしています。そういう意味では自分の怪我も全部、今につながっているのかなと思いますね」
現役最終年に指導を受けた野村克也氏の名言の一つに「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」がある。上原氏は「僕は勝ちにも理由があると思っているので、必ずそういったものをあやふやにせず、ちゃんと具体的にここがいい、ここが悪いということを子どもたちに伝えながら、指導したいなとは思っている」と言う。「そういったものをちゃんと突き止めていれば、僕ももっと(現役を)長くできたと思う」とも付け加えた。
今後について上原氏は「大好きな野球の指導の中で、目標としてはまず(東海学園大を)1部に上げることも大事だし、その後は神宮(大会)もあるだろうし、プロ野球選手を育てたいというのも基本的にはありますよ。そりゃあ、ドラゴンズに入れられたらいいですし、それが一番の理想ですけどね」と笑顔で話す。「今は充実しながら、二足のわらじを履いているって感じですね」。
伝説の右腕は今も野球と熱く向き合っている。新たな伝説の投手を育て上げる日が楽しみだ。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)