ポール・ダノがYouTuber“ローリング・キティ”に - 映画『ダム・マニー(原題)』より
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 『クルエラ』『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』で知られるクレイグ・ギレスピー監督の新作映画『ダム・マニー(原題) / Dumb Money』のワールドプレミアが、第48回トロント国際映画祭で行われた。ギレスピー監督らしいちょっと毒のあるユーモアでコーティングされた本作は、コロナ禍の2021年に起きたGameStop株騒動の顛末をさまざまな登場人物の視点からスピーディーにつづった快作だ。

 実店舗でゲーム販売をしているGameStopが倒産に向かっていると考えたヘッジファンドの億万長者たちは、GameStop株を大量に空売り(※手元にない株を「借りて売る」こと。株価が今後下がることが予想される時に空売りをし、株価が下落したところで買い戻して利益を得るやり方。予想に反して株価が上昇すると損失となる)。一方、GameStop株は過小評価されていると長年信じてきたキース・ギルは、猫グッズと赤いハチマキを身に着けたYouTuber“ローリング・キティ”としてGameStop株のポテンシャルの高さを布教していた。それは次第に人々の関心を集めるようになり、アマチュア投資家たちはインターネット掲示板Redditを通じて結束。ヘッジファンドの億万長者たちを破産させるべく、GameStop株の大量買いを仕掛け、株価は未曽有の急騰を見せることになる。

 キース・ギル役のポール・ダノ、ヘッジファンドを率いるゲイブ・プロトキン役のセス・ローゲン、投資アプリ「ロビンフッド」創業者の一人であるウラジミール・テネフ役のセバスチャン・スタンら妙にハマっているキャスト陣の演技も見どころ。その他、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』のピート・デヴィッドソン、『バービー』のアメリカ・フェレーラ、『トランスフォーマー/ビースト覚醒』のアンソニー・ラモス、『ダイバージェント』シリーズのシェイリーン・ウッドリー、『フルメタル・ジャケット』のヴィンセント・ドノフリオらが出演している。

 目まぐるしく展開する物語がエキサイティングなだけでなく、コロナ禍の一人一人が孤立してしまったかのような独特な空気感、そんな中だからこそより一層強く感じられたコミュニティの力も捉えた点が興味深い映画となっている。(編集部・市川遥)

第48回トロント国際映画祭は現地時間9月17日まで開催