国民的ヒットソングとなったAKB48「365日の紙飛行機」をはじめ様々なアーティストへの楽曲提供を行っている青葉紘季率いるteamOUCAが楽曲制作を手がけ、「ゲスの極み乙女」のアートワークで注目を浴びた”恋する絵描き”福井伸実がメンバーとして参加、そしてフィーチャリング・ボーカルには北海道のアイドルグループ・タイトル未定でも活躍する冨樫優花がmikan名義で参加した、クリエイターユニットotsumami。

それぞれの「すきなこと。」を表現することにこだわり、2022年2月の活動開始から1年間にわたり、12カ月連続でオリジナル楽曲をデジタルリリースする一方で、コンスタントにカバー楽曲の投稿をするなど活動を続けている彼らが、夏の終わりを彩るレトロポップバラード「レモン水」をリリースした。otsumamiとはどのようなユニットなのか、また「レモン水」の制作についてメールインタビューを行った。

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ーどのような経緯で"otsumami"というプロジェクトがスタートし、このメンバーが集ったんでしょう?

青葉:otsumamiの音楽チーム(otsukuri)はいわゆるJ-POPを主戦場とする音楽作家の集まりでして、色々なアーティストさんへ楽曲提供をしていく中で、どこか本当の意味でのゼロイチに飢えているところがあったのかもしれないですね。自分達が最後まで見届けられる音楽というか、ちゃんと自分達から聴いてくださる方々へ手渡しできるような作品を作りたいという、いつかのバンドマンの自分達に戻ったような感覚をもう一度味わいたいというか。そんな中で、世の中にこんなに自由に発信ができるメディアがあるんだから、普段の仕事としての音楽制作とはまた違った、自分達のより純度が高い音楽を発信していきたいね、という話になりまして。そこがotsumamiのスタートでした。その中で、今の音楽って視覚的なアプローチがとても大事だと思っていたので絵を描ける人を探していたところ、割と近いところに福井伸実さんがおりまして、そこで彼女の作る作品と人柄に惹かれまして一緒にやらないか?と伝えたところ快諾していただき、otsumamiが結成された感じですね。

ーotsumamiというグループ名の由来や、込めた意味合いについても教えていただけますか?

青葉:大それた由来や込めた思いがあるわけではないですけど、強いて言えば<好きなことを好きな人と好きなように>、そうやって出来た作品たちを好きになってくれた人が好きなものを選んでつまんでいっていただけると嬉しいです。

ー活動におけるテーマやコンセプトはどういったものなんでしょう?

青葉:特に<ジャンル感>だったり、いわゆる<otsumamiらしさ>みたいなものは考えないようにしています。そういうものに捉われると自由でなくなってしまう気がするので。きっとたくさんの方々に聴いていただいて、その方々を通して<らしさ>のようなものが結果的に生まれていくんだろうと思っています。とはいえ作る人間が同じである以上、できることは限られてますし、自分達が作る以上、逃げようのない、回避できない(笑)雰囲気や匂い、色味みたいなものはきっと軸として存在していると思うので、そこは大切にしていきたいですね。きっとそこにこそ僕らの<好き>が詰まっていると思うので。

ー楽曲制作からレコーディング、ジャケット制作など、完成するまでのプロセスについても伺わせてください。直接顔を突き合わせて作業していくのか、オンラインやデータのやりとりなど遠隔で行われているかなど、みなさんがどのようにコミュニケーションを取られているんでしょう。

青葉:楽曲の最初の種のようなものはまずは音楽チーム(otsukuri)で作りますね。基本楽曲先行が多いです。持ち回りで「いいの出来た!」とか言ってギターの弾き語りみたいなものから聴かせ合ったり、場合によっては、次どんなものを作ろう?と集まってあーでもないこーでもないとPCに向き合って作ったり、どちらかというとバンドでスタジオに入って曲作るのと似てるかもしれません。僕自身も元々バンドをやっていた人間なので、性に合ってるのかもしれないですね。ある程度形が見えたところであとはパラで動いて、サウンド、メロ、歌詞と手分けしてやっていきます。その辺からはデータのやり取りが主ですかね。これという決まった型があるわけではないですが、そこが出来た段階でのんちゃん(福井伸実)にイメージを伝えて、イラスト、MVといった流れが多いですかね。イラストに関してはある程度イメージは伝えますが、どちらかというとこの楽曲でどんな絵が出てくるだろう?と、そっちの方が楽しみなのであまり細かくこちらのイメージは伝えていません。MVの方向性だったりは、出来たイラストを踏まえて、それこそオンラインで全員繋げてあーでもないこーでもないと遅くまでやり取りしたりといった感じです。レコーディングに関してですが、mikanはある種<憑依型>な感じがあって、作品のストーリーや主人公のイメージを丁寧に話し合って歌を録っています。そこがまとまると彼女は必ず想像を超えてくるのでそこはいつもびっくりしますね。

ーそれぞれのルーツになる音楽やアーティスト、作品なども教えていただけますか?

青葉:特定の誰というのは本当に難しいですが、昔から「痒いところに手の届く音楽」が好きですね。王道と言いますか……分かりやすいものが好きですかね。ちなみに高校生の時はヘビメタ少年でした(笑)。

mikan:昔から音楽が大好きで、流行りには敏感でした。その中でもSEKAI NO OWARIさんには大きな影響を受けていると思います。ボーカルのFukaseさんの過去を勝手ながら自分と重ねていた部分があって、バンドのコンセプトやメッセージに共感しました。それと、昭和歌謡です。中森明菜さんの「スローモーション」で恋に落ちました。昭和歌謡はメロディーや歌詞に哀愁があって、強く心惹かれます。

福井:酒井駒子さんの描く女の子は、子どものやわらかさや無垢さ、少女性のなかに凛とした人間の強さや感じます。そういう可能性や多面性を私も描きたいです。

ー新曲「レモン水」を、どのようなテーマやモチーフから制作していったのか教えてください。

青葉:「レモン水」のモチーフは実はmikanなんです。サビメロの「夏が終わる〜」は家でアコギを弾いてたら突如降ってきまして……そこで良い曲になるという確信があって。mikanに楽曲の総合的な雰囲気や方向性を相談したところ、次々とキーワードを出してくれて、そこから「レモン水」の物語が動き出していった感じですね。otsumamiの楽曲へのこだわりという部分では、あくまで個人的な感覚でしかないですけど、ただ一つ言うとすれば<映像感>というのは大事にしてます。情景描写や一瞬の切り取りの中で、それでも動いてく、変化していく感情だったり、五感的なものを音楽を通して聴いていただいた方々に見せていく。そこは大事にしているところかもしれません。メンバー共通でそういうものが好きなんだと思います。一言で言えば<情緒>ってやつなのかなぁ。

ー福井さんは、「レモン水」のジャケットをどのような着想から描かれていったのでしょう。

福井:実在のレモン水がイラストのレモン水と重なる……というようなイメージを青葉からもらって、共感したので絵にしました。女の子は夏の概念、誰かのどこかの記憶にいる懐かしさ、幻のようなイメージです。

ーmikanさんが「レモン水」を歌う上で心掛けたこと、聴きどころなどがあれば教えてください。

mikan:時の流れを感じながら、言葉一つ一つを丁寧に綴りました。一枚一枚ページをめくるように、レモン水と共にそれぞれの夏を思い出して頂ければ幸いです。

ー"タイトル未定"で歌っているときと"otsumami"で歌っているときの違いなどはありますか?

mikan:タイトル未定の楽曲は4人の声が合わさって完成するものなので、個性は出しつつも、前後のメンバーの歌い方に寄せたり、バトンを繋ぐようなイメージです。otsumamiはボーカルが一人なので、ほぼ全てが自由です。自由だからこそ、レコーディングではいつも苦戦してしまいます。

ー今後、ライブなどを行う予定はありますか?

青葉:今のところハッキリと言える予定はありませんが、絶対にやりたいです。自分達の音楽を手渡ししたいというのが根底にあるので、そうなると最終系はやっぱりライブかなと。

ー最後に、"otsumami"としての目標や夢などがあれば教えてください。

青葉:冒頭にも言いましたけど、<らしさ>なんてものは後で付いてくると思うので、あまりそこに捉われず色んなジャンルをこのチームで表現していきたいですね。今までは楽曲先行でしたけど、その内イラスト先行で楽曲を作るみたいなこともやっていきたいですね。これからもしっかり互いの<好き>に忠実に誠実に作品づくりをやっていけたらと思ってます。

mikan:まずは、名前を知って貰うこと。様々なアプローチで日本中に素敵な楽曲たちを届けたいです。

<リリース情報>



otsumami
「レモン水」
配信中

Web:https://otsumami0203.com/
Twitter:https://twitter.com/0203_otsumami