この記事をまとめると

■1980年代に「ボーイズレーサー」と呼ばれたジャンルがあった

■価格が安くてコンパクト、排気量も1.6リッター以下といった条件が主だった

■各自動車メーカーがさまざまなモデルを展開しており若者を中心に愛されていた

走り屋がどハマりした「ボーイズレーサー」たちを振り返る

 1980年代に、「ボーイズレーサー」と呼ばれるカテゴリーがあった。

 1.6リッター以下の小排気量車で軽量コンパクト。価格が安く、若者にも手を出しやすくて、なおかつエンジンにパンチがあり、走りに光るものがあったクルマたちのこと。走り屋のエントリーモデルであり、いわゆるホットハッチとの共通項は多い(ボーイズレーサーはハッチバックに限らない)。そんなボーイズレーサーをいくつか振り返ってみることにしよう。

トヨタ・スターレット

 ボーイズレーサーの筆頭といえば、トヨタのスターレット。

 2代目スターレットのKP61もFRの走り屋エントリーモデルで、このクルマで腕を磨いたアニキたち(1950年代後半から1960年代前半生まれ)も多かったが、よりボーイズレーサーとして脚光を浴びたのは、1984年に登場した3代目EP71スターレット。

 EP71はFFになってしまった代わりに、3バルブの新開発レーザー2Eを投入。Dジェトロをいち早く採用したインジェクション仕様は、クラストップレベルの最高出力93馬力とハイレスポンスを手に入れ、「かっとびスターレット」のキャッチフレーズに恥じない俊敏性をウリにしていた。1986年にはターボモデル「韋駄天ターボ」も追加され、ターボパワーでテンロククラスを追いかけまわせるパフォーマンスを得た(105馬力)。

ホンダ・シティターボ/ターボ II

 ホンダ・シティの初代は1981年に登場。「トールボーイ」と言われた、背の高い個性的なスタイルでヒットモデルに。それまでのホンダは、ショートストロークの高回転型エンジンを得意としていたが、このシティではロングストロークタイプの高効率エンジン、COMBAX(COMPACT BLAZING-OMBUSTION AXIOM:高密度速炎燃焼原理)エンジン=ER型(1.2リッター)を新採用。

 1982年にはNAの67馬力に対し、100馬力にパワーアップされた「シティターボ」が登場。燃料供給システムはホンダ独自のPGM-FIを採用し、ボンネットにはターボの象徴、パワーバルジを追加。さらに1983年には、インタークーラーターボ付きの「ターボ II」(ブルドッグ)が加わり、存在感がアップ。

 一段と大きくなったパワーバルジとブリスターフェンダーはインパクト抜群で、回転数が3000rpm以下のときにアクセルを全開にすると、10秒間だけ過給圧が10%アップする「スクランブルブースト」と呼ばれる機能も、ターボファンには大きな魅力。最高出力も110馬力とパンチがあり、スポーティなエアロをまとったワンメイクレース「ブルドックレース」がはじまったことで、若い走り屋たちの心を掴んだ。

各メーカーから個性派マシンが勢揃いしていた

日産 マーチターボ

 コンパクトカー+ターボといえば、日産マーチターボ(K10)も忘れてはならない。

 マーチターボは1985年の登場で、1リッター直4SOHCのMA10にターボをくっつけ、85馬力までチューニング。このクラスなのにキャブターボではなく、電子制御のECCSを採用したところが目新しかった。

 イメージキャラクターは近藤真彦で、彼のために作ったスーパーシルエット仕様のマーチも話題に。マーチターボもエアダム一体式(フォグランプ内蔵)の大型エアロバンパーが採用され、レーシーなイメージに。ハンドリング面ではスタビライザーが追加され、足まわりも強化された。

スズキ・カルタス 1300GT-i

 現代を代表する国産ホットハッチといえばスズキのスイフトスポーツだが、そのご先祖にあたるのが、スズキ・カルタス。初代カルタスは1983年のデビューだが、1986年のビッグマイナーチェンジで、国産1.3リッタークラスでは初めてのDOHCエンジンを搭載するGT-iが加わった。

 新開発のG13B型エンジンは、4-2-1のエキゾーストマニホールドや10.0の高圧縮比を武器に、クラス最強の97馬力を達成。1987年にはさらに1000回転高回転化され、最高出力は110馬力に。同時に足まわりも強化され、1.3リッタークラス最強の1台となった。

ダイハツ・シャレード デ・トマソ ターボ

 最後はダイハツのシャレード デ・トマソ ターボ(G11)。先代のG10シャレードは、乗用車としては世界初となる直列3気筒4サイクルエンジンを搭載。いまでは当たり前の直3エンジンの元祖はシャレードだった。シャレードは1983年にフルモデルチェンジとなり、ターボエンジンが用意される。そして1984年には、イタリアンスーパーカー、パンテーラで知られるデ・トマソと手を組んだ、シャレード デ・トマソ ターボが登場。

 エンジンこそベースモデルと変わらず80馬力だったが、パンテーラのイメージカラーともいえる、赤と黒の2トーンボディで、サイドには「DETOMASO」のロゴがあしらわれた。車高も最初からローダウンされ、ホイールはゴールドに輝く14インチカンパニョーロ・マグネシウムを装着!

 バンパーやテールゲートスポイラー、フロントグリルは専用品でカスタマイズされ。インテリアも黒をベースに赤をアクセントにし、ステアリングには憧れのモモ製が奢られた。ターボのわりにパワーはたいしたことはないが、車重は690kgなので、「ネコ科のターボ」のキャッチフレーズに恥じない走り。

 なによりイタリアンテイスト溢れる、ドレスアップのいいお手本になった。