英国で「和食器」が静かなブーム。一流シェフやレストランを魅了する理由とは?
英国のヨークシャーは、森や丘など多くの自然に囲まれ、歴史ある小さな街が点在する英国らしいエリア。そこでいま、日本の和食器が静かに人気を集めています。大量生産された安価な陶器をたくさん持つことに疲れた英国人が、和食器に出会い、その美しさに共鳴。和食器を通じて「質の良い物を長く使い続けることが豊かな暮らしをつくる」というメッセージを発信しています。
英国の食器には歴史があります。17世紀から陶器生産が始まり、ウェッジウッド、ミントンなどの有名ブランドが生まれました。英国の人々は陶器を愛してきましたが、その人気に便乗して陶器産業が繁栄した結果、とめどなく量産されるようになりました。
ヨークシャーで食器を扱っている「メイド・イン・ジャパン・テーブルウェア(MIJT)」のオーナーであるロージーとフィリップは、陶器産業から大量生産される食器にうんざりしていました。「品質が低くて退屈」と思っていたからです。そして、二人は「忙しい現代社会において日々の食事はもっと丁寧に味わうべき」との思いから、一つひとつ心を込めて作られる和食器に魅力を感じるようになり、そのシンプルさや美しさ、機能性にほれ込んだのです。
MIJTが取り扱う製品のほとんどは、岐阜県にある家族経営の窯で作られています。この家族は周りにある山などの自然からインスピレーションを得て、何世代にもわたって釉薬(ゆうやく)や器の形を改良してきたそう。
その窯で生まれる食器は輪郭や模様、質感などが少し不均一ですが、不完全さの中に美しさを見つけるという日本の「わび・さび」の考え方を取り入れています。シンプルで実用的な形状は、毎日の暮らしに寄り添い、食べ物を美しく見せ、まるで芸術作品のようだとMIJTのサイトで紹介されています。
求められるライフスタイルと調和
同社は小売りだけでなく卸売りも手がけていて、国内の一流シェフやレストラン経営者の間でも人気があります。和食器は日本からヨークシャーの倉庫に送られ、英国全土に発送されているそうです。
大量生産・大量消費の時代が過ぎて「作る責任・使う責任」が求められる現在、英国では「上質な品を長く使い続け、丁寧に暮らす」というライフスタイルが支持されています。日本の陶芸家が作る和食器に共鳴する英国人が増えているのも、不思議ではないかもしれません。