昔はこんなに痕残らなかったのに…

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 アウトドアなど、屋外でレジャーを楽しむ機会が増える夏。そこで注意したいのが虫さされだが、加齢とともに痕が残りやすくなるのも悩みどころ。なぜ痕が残ってしまうのか、刺されたあとの対処法など、皮膚科医・豊田雅彦氏の監修のもと紹介する。

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■昔はこうじゃなかった…、虫さされ跡が残る原因と対処法

 加齢によって虫さされの痕が残りやすくなる主な原因は、肌の自己回復力が低下すること。肌は傷ついたり炎症を起こしたりすると、自然治癒力で修復しようとする。しかし、加齢とともに、肌細胞の分裂や新陳代謝(ターンオーバー)が遅くなり、コラーゲンやエラスチンなどの肌を支える成分やヒアルロン酸などの肌の弾力性を維持する成分の生成も減少する。皮膚の再生・修復機能に必要な成長因子(グロスファクター:NGF, FGF, EGF, VEGFなど)と総称される創傷治癒に関与する種々の物質の産生も低下する。すると、肌の自己回復力が低下し、傷跡や色素沈着が残りやすくなる。特に虫さされはかゆみを伴うため、つい掻いてしまうことで傷口を広げたり感染させたりするリスクも高まる。

【対処法1】冷やして炎症を抑える

虫に刺されたら、まずは冷やして炎症を抑えることが大切だ。冷やすことで血管が収縮し、血液やリンパ液の流れが悪くなる。すると、虫の毒素やアレルギー物質が拡散しにくくなり、かゆみや腫れを和らげる。冷やす方法としては、氷嚢や保冷剤などをタオルで包んで当てるか、水道水で洗うか、冷水でしばらく浸すかなどがある。ただし、冷やしすぎると逆効果になることもあるので、10分程度を目安にしよう。

【対処法2】抗ヒスタミン薬やステロイド軟膏を使う

冷やしてもかゆみや腫れがひどい場合は、抗ヒスタミン薬やステロイド軟膏を使うことで改善できる。抗ヒスタミン薬は、アレルギー反応を引き起こすヒスタミンの働きを抑えてかゆみを和らげる効果がある。ステロイド軟膏は、炎症を抑えてかゆみや腫れを和らげる効果がある。ただし、使用法に注意点があることや副作用が生じることもありうるので、使用方法や期間は医師や薬剤師に相談しよう。

【対処法3】保湿して乾燥を防ぐ

虫さされの痕が残らないようにするためには、保湿して乾燥を防ぐことも重要。保湿することで肌のバリア機能を強化し、外部からの刺激や感染を防ぐ。保湿は肌のターンオーバーを促進させるため、虫さされによる色素沈着が速く消失する効果もある。肌の水分量を保つことで肌細胞の分裂や新陳代謝を促進し、傷痕や色素沈着の回復を早めるのである。保湿する方法としては、無香料・無着色・低刺激の保湿クリームやローションなどを塗るか、シート状の保湿パッチなどを貼るかなどがある。

【対処法4】日焼け止めを塗る

虫さされの痕が残らないようにするためには、日焼け止めを塗ることも必要だ。日焼けすると肌にメラニン色素が生成されるが、傷痕や色素沈着はメラニン色素が多く集まった部分だ。すると、日光に当たるとさらにメラニン色素が増えて、痕が目立つようになる。日焼け止めを塗ることで紫外線から肌を守り、メラニン色素の生成を抑える。日焼け止めはSPF15以上・PA+++以上のものを選ぼう。

【対処法5】掻かない

 虫さされの痕が残らないようにするためには、掻かないことが最も大切だ。掻くことで傷口を広げたり深くしたりして、肌の回復を遅らせる。また、爪や手に付いた細菌が傷口に入って感染したり、炎症を悪化させたりするリスクも高まる。掻きたくなったら、冷やしたり、刺された部分にガーゼを貼るなど、掻いてもできるだけ炎症を悪化させない工夫をしよう。

●アルコールや刺激物を摂る

アルコールや刺激物は血管を拡張させて血流を増やし、炎症やかゆみを悪化させる。

●熱いお風呂に入る

熱いお風呂も血管を拡張させて血流を増やし、炎症やかゆみを悪化させる。

●ピーリングやスクラブでこする

ピーリングやスクラブでこすると肌にダメージを与えて傷跡や色素沈着を残しやすくする。

●レーザーや光治療などの美容施術を受ける

レーザーや光治療などの美容施術は肌に刺激を与えて炎症や色素沈着を引き起こす可能性がある。

■蚊、アブ、マダニ…注意すべき虫と対処法は?

●蚊

吸血するとかゆみや赤みが出る。刺されたら冷やして炎症を抑える。蚊はデング熱やマラリアなどの感染症を媒介することがある。

●アブ

吸血すると痛みやかゆみが出る。咬まれた箇所を確認し、血がにじむようになっていたらアブ、血がたれるようになっていたらブヨだろう。刺されたら冷やして炎症を抑える。

●アリ

噛まれると痛みやかゆみが出る。噛まれたら冷やして炎症を抑える。アリジゴクは毒液を注入するので危険。

●マダニ

草むらや林などに生息し、吸血するときに感染症を媒介することがある。刺されたらマダニをピンセットで根元から引き抜く。マダニを媒介して生じる病気(ライム病など)に注意する必要があり、発熱や発疹などが出たら医療機関へ。

●ハチ

刺されると激しい痛みや腫れが出る。刺されたら毒針を抜き、冷やして炎症を抑える。繰り返し刺されることで、ハチ毒成分に対するアレルギー反応が生じアナフィラキシーを起こすことがあるので注意。

 外での活動が増える夏は、どうしても虫に刺される機会も多い。肌に痕を残さずきれいに治すためには適切な対処が必要だ。もし、それでも悪化したり、発熱などの症状が出る場合には、早めに医療機関に相談しよう。

【皮膚科医・豊田雅彦氏からのコメント】

 虫さされのかゆみに耐え切れずに引っ掻き続けると皮膚症状が悪化し、硬いイボ状になることがあります。これを痒疹結節(ようしんけっせつ)といい、数年にわたって強いかゆみが続くこともあります。特に加齢に伴い自らの修復機能が低下すると極めて治りにくくなります。虫さされにはアナフィラキシーショックを起こしたり、有害なウイルスや細菌を媒介する危険性などもありますので、「たかが虫さされ」と思わず、治りにくい場合などは早目に皮膚科専門医を受診してください。

【監修者プロフィール】

豊田雅彦 うるおい皮ふ科クリニック院長。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医。

皮膚科医として、特に皮膚科の患者の中で最も多い悩みである「かゆみ」をとることをライフワークに掲げる医学博士。「頑固なかゆみもアトピーも1分肌活で必ずよくなる:三笠書房」「新しい皮膚の教科書〜医学的に正しいケアと不調改善〜:池田書店」など書籍も多数執筆、好評を得ている。現在までに2,000以上の医学論文・医学専門書を執筆。国際皮膚科学会において臨床 (2002)と研究(2004)の両部門で世界初の単独世界一を受賞。また、国内外で年間最多250以上の講演会・学会発表・保健所指導を行う皮膚病・かゆみのスペシャリスト。現在は千葉県松戸市にてうるおい皮ふ科クリニック(皮膚科、美容皮膚科、漢方皮膚科、アレルギー科、形成外科)を開業、院長として日々患者と向き合い、かゆみを失くすことに尽力している。