趣味を始めるうえできをつけるべき点とは(写真: ほんかお / PIXTA)

→安井さんへのキャリア相談は、こちらまでお送りください。

初めまして、当方50代後半の会社員です。私は今までの人生において、普通であることを目指してきたのかもしれないと今更ながらに気が付きました。今後の人生をもっとエンジョイすべく何かをしようと考えています。

いわゆる一流の大学を卒業しており、時代もよかったのだとは思いますが、さほど苦労せずに大手企業に就職。今は曲がりなりにも管理職として働いています。

待遇もよいほうですし、子宝にも恵まれ、不満はない人生ではあります。しかし、周りを見ても同じような人生を歩んでいる人は多く、この後の人生も諸先輩を見れば容易に想像ができてしまいます。ふとした瞬間に、これでよかったのか、と思ってしまいます。

もちろん恵まれていることは重々承知です。失敗しない人生を歩んできて、実際に可もなく非もなく、という状態だとは思います。一方で、個性があるか、楽しみがあるか、自分の本当の人生か、と言われると正直わかりません。かといって今更仕事面で冒険をするわけにはいかず、せめて趣味を充実させようといろいろとリサーチした結果、安井さんの本やこの連載に辿り着きました。今までも趣味の探し方などをご指南いただいていますが、新しい趣味の始め方や向き合い方についてご教示ください。

KS 会社員

いきなり大きな変化を目指さず、ゆっくりと新しい生活や習慣に慣れる、という感じで始めるのがよいでしょう。

すぐ大きな行動に移さないほうがよい


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若い頃や人生経験の乏しい時期であれば、大きな行動をとること自体が経験につながったりします。

自分を知る、という意味においても大切なことかもしれませんし、むしろそういった行動を通じて成長を図れる、という側面もあります。

一方で、ある程度人生経験を積んできたヒトの中にも、人生を変えたい、何かをスタートしたいと、いきなり大きな変化や効果を狙って大きな行動などに移すヒトがいますが、大概のケースでは成功しません。

何故ならば、KSさんもそうですが、今まで積み重ねてきた生活や人生は決して自分1人で完結するものではなく、家族や周りとの関係が前提のうえで成り立っているからです。

そういった周りとの関係がなければ話は別ですが、KSさんのケースではご家族がいらっしゃるわけですから、いきなりKSさん「1人だけ」が大きく変わるというのは周りへの影響も考慮して慎むべきなのかもしれません。

趣味を充実させる、というのはもちろん結構なことですが、例えばいきなり趣味にのめり込んで、毎週末家を不在にするとか、多額のお金をつぎ込む、などの行為は決してご家族や周りに受け入れられるものではないでしょう。

そういったすぐに大きな変化を求める行為は、周りへの影響が非常に大きいです。そうではなく、周りへの影響を考えつつ、ゆっくりとした変化を前提に考えるべきです。

あくまでも空いた時間でまずは始めてみる、という周りへの配慮が必要です。

そして、金銭的にも負担のない範囲で、自分1人で完結できるような趣味、というものがあればなおよいのだと思います。

週末の空いた時間を数時間使って、まずはやってみる。生活に支障のない範囲での支出を前提とするのはもちろんですが、周りとの関係を考えれば家族との共有スペースに趣味の物がいきなりどんどん増えるなんて事態も当然避けるべきです。

つまりスモールスタートで、徐々に様子をうかがいつつ費やす時間などを広げていく、という考え方です。

家族を尊重して趣味を始める

KSさんは50代後半とのことですから、いずれかのタイミングで家族単位を前提とした行動から、家族を前提としつつも、ある程度個人で動くことを前提とした生活に移行することになろうかと思われますし、すでにそうなっているのかもしれません。

そういった場合は、家族1人ひとりが趣味をはじめとして、何かしら個人単位でも楽しめる、行動できる、時間を過ごせる、という状態を保っておくことが、お互いの幸せのためにも大切です。

老後、というわけではありませんが、そういったいつかくる状態への備えは大切です。やはり趣味をはじめとした個人としての時間づくりを今の段階から行っておくことは重要でしょう。

そしてそれは長期にわたって考える必要がありますし、当然のことながらご家族をはじめ周りとの良好な関係を継続しつつ、ということが前提となります。

そしてこれも重要ですが、ほかのご家族、例えば奥さまやお子さんのプライベートの趣味や時間も尊重する、という考え方も当然持つ必要があります。

自分がある程度の自由を欲する、という前提であれば、当然周りの欲求や行動に対しても寛容である必要がありますし、それは当たり前のこととして考えたほうがよいでしょう。

例えば週末どこかに出かけようとするご家族を捕まえて、「俺の飯はどうするんだ」などと言っているようではいけません。

むしろ喜んで送り出してあげるのです。

人生の時間をどう有効に使うか、どう楽しむかなどは、KSさんだけではなく、ご家族の皆さんが抱える問題だと思います。趣味を持ちたい、との考えに至ったKSさんは、これまで以上にご家族の考えや行動に対しても寛容であるべきでしょう。

そのような前提で考えると、家族間でお互いのスケジュール共有や交換、調整をはじめ、より積極的なコミュニケーションを図る必要もありますし、自分たちに合ったほどよい距離感というものを掴む必要もでてきます。

いずれにせよ、周りを尊重し、周りとの関係を前提とした行動や態度でいることが、長期的な目線でよりよい関係を築くためには重要です。

今まで積み重ねてきた生活や関係に取って代わる何か、ということではなく、今まで積み重ねてきた生活や関係にプラスアルファで何かをのせる、という前提ですから、周りへの配慮などがより大切になってきます。

まずはスモールスタートで始めてみる

KSさんが求めていらっしゃるのは、今までの生き方の否定や、失った何かを取りもどすといったことではなく、今までの人生をベースに、よりよい人生を生きるための新しい挑戦ですから、現状を十分にケアしたうえでの行動が求められます。

いきなり大きな変化を狙わずスモールスタートで開始する、周りに対しても個人での行動や時間の使い方を尊重する、十分なコミュニケーションを図り、お互いの幸せの追求を前提とする。

そういった考え方でKSさんが新たな趣味や時間の費やし方を見つけ、よりよい人生を歩むための新たなステップを一歩踏み出すであろうことを応援しております。

(安井 元康 : 『非学歴エリート』著者)