ローマ時代に「人間の頭蓋骨を用いた降霊術」が行われていた証拠がエルサレム近郊の洞窟で発見される
イスラエルのエルサレム近郊にある洞窟で、大量のオイルランプや人間の頭蓋骨といった古代の遺物が発見されました。ローマ時代の2世紀〜4世紀頃にさかのぼるこれらの遺物について、「異教徒による降霊術に使われた」とする論文をバル=イラン大学の研究チームが発表しました。
Oil Lamps, Spearheads and Skulls: Possible Evidence of Necromancy during Late Antiquity in the Te’omim Cave, Judean Hills | Harvard Theological Review | Cambridge Core
Placement of ancient hidden lamps, skulls in cave in Israel suggests Roman-era practice of necromancy
https://phys.org/news/2023-07-placement-ancient-hidden-lamps-skulls.html
Evidence of Roman-era 'death magic' used to speak with the deceased found near Jerusalem | Live Science
https://www.livescience.com/archaeology/romans/evidence-of-roman-era-death-magic-used-to-speak-with-the-deceased-found-near-jerusalem
イスラエルから西に約30km離れた地点にあるテオミム洞窟は先史時代から人間によって使用されており、ローマ帝国のユダヤ属州が西暦132〜136年に起こしたバル・コクバの乱では、ユダヤ人の反政府勢力がローマ軍から身を隠すために用いられたとのこと。
ローマ帝国第14代皇帝のハドリアヌスはバル・コクバの乱を受けてユダヤ教およびユダヤ文化の根絶を図り、ユダヤ暦の廃止やエルサレムの改称、ユダヤ教指導者の殺害といった迫害を行いました。ユダヤ人はエルサレム周辺から追い払われ、この地域にはシリアやアナトリア、エジプトといった地域からの移民が定着したと言われています。
テオミム洞窟では2009年以来、バル=イラン大学やイスラエル当局による調査が行われており、洞窟内から120個を超えるオイルランプや3つの人間の頭蓋骨、オノ、ヤリの刃、金貨や銀貨の貯蔵庫などが発見されています。
オイルランプや頭蓋骨は洞窟の隙間で見つかりましたが、この隙間はランプで照らすには狭すぎる場所である上に、わざわざフック付きの長い棒を使わないとオイルランプなどを置くことができません。これらの遺物について、バル=イラン大学の考古学者であるボアズ・ジッス教授らの研究チームは、2世紀〜4世紀頃の「非ユダヤ教徒による降霊術」に使用されたものだという研究結果を発表しました。
降霊術はローマ帝国では悪事と見なされ。何度も禁止令が出されましたが、多くの古代都市の近郊には死者と会話できると信じられていた秘密の「託宣所」があり、テオミム洞窟もそうした場所のひとつだったとみられています。
研究チームによると、オイルランプは洞窟内を照らすためではなく降霊術の儀式のために用いられ、頭蓋骨は「未来のことを予言できる死者」に話しかけるために配置されたと考えられるとのこと。
ジッス教授は、「かつてユダヤだった場所に新たな異教徒の人々がやってきました。彼らは新たな考えや慣習、そして降霊術のアイデアをもたらしました」「テオミム洞窟には完璧な条件がありました。都市からやや遠いものの大きな道路に近く、洞窟が深すぎず、冥界に通じていると考えられる深い縦穴があったのです」と述べています。