BASFの上海創新園は、同社のアジア太平洋地域最大の研究開発拠点だ(写真はBASFのウェブサイトより)

ドイツ化学大手BASFのアジア太平洋地域最大の研究開発拠点である「上海創新園(イノベーション・キャンパス)」。その第3期拡張工事が完成し、6月28日に関係者にお披露目された。

上海創新園の建設は2012年に始まり、2015年と2019年の拡張工事を経て規模拡大を重ねてきた。今回の第3期を含むBASFの累積投資額は2億8000万ユーロ(約441億円)に上る。

なぜ中国での投資を続けるのか

第3期拡張工事では2棟のビルを新築し、高分子材料のリサイクル技術など持続可能な新しいソリューションを生み出す研究開発に取り組む。

「研究開発へのたゆまぬ投資を通じて、わが社はEV(電気自動車)やハイテク製造業、再生可能エネルギーなどの急成長分野に持続的なサポートを提供したい」

BASFの大中華(グレーターチャイナ)地区統括会社の董事長兼総裁(会長兼社長に相当)を務める楼剣鋒氏は、上海創新園の拡張の狙いをそう述べた。

最近のグローバル経済の停滞を背景に、外資系企業の間では研究開発分野の対中投資を一時見合わせるケースが増えている。そんな中、BASFはなぜ中国への投資を続けるのだろうか。

この疑問に対して、BASFグループの研究開発部門を統率するデトレフ・クラッツ氏は次のように答えた。

「わが社の戦略目標(の1つ)は、顧客により近いところで仕事をすることだ。われわれは今、BASFとの提携を望む中国の(大学や企業などの)研究機関のニーズをはっきり感じている」

製造拠点への投資も拡大

研究開発分野だけではない。BASFは中国の製造拠点への投資も拡大している。同社は2023年3月、広東省湛江市に建設中の化学品の統合生産拠点で、新たにアクリル酸の製造プラントを着工。BASFは同拠点に対して、2030年までに累計100億ユーロ(約1兆5738億円)を投じる計画だ。


本記事は「財新」の提供記事です

現在、BASFは中国に30カ所余りの生産拠点を持ち、(研究開発拠点なども含めた)これまでの対中投資の総額は130億ユーロ(約2兆459億円)を超えた。その結果、同社の大中華地区の売上高は2017年の73億ユーロ(約1兆1489億円)から、2022年には116億ユーロ(約1兆8256億円)に増加している。

(財新記者:于達維)
※原文の配信は7月2日

(財新 Biz&Tech)