小鵬汽車の新型SUV「G6」は、割安感をアピールしてヒットを狙う(写真は同社ウェブサイトより)

中国の新興EV(電気自動車)メーカーの小鵬汽車(シャオペン)が、製品のコストパフォーマンス(価格性能比)を売り物にする戦略に回帰した。

同社が6月29日に発表した新型SUV「G6」は、ベースモデルの希望小売価格が20万9900元(約419万円)から。消費者に割安感をアピールし、販売台数の底上げを狙う。

これに先立つ6月9日、小鵬汽車はG6の予約価格を22万5000元(約449万円)からとアナウンスしていた。最終的な価格はそこから1万5000元(約30万円)も引き下げられた格好で、業界関係者の驚きを誘った。

小鵬汽車は、G6の競合車種としてテスラの人気SUV「モデルY」の車名を挙げている。中国市場でのモデルYの希望小売価格は、6月末時点で26万3900元(約526万円)からであり、G6のほうが5万4000元(約108万円)も安い。

技術革新を設計段階から

予想を超えた低価格の背景には、G6が設計段階から取り入れた技術革新の成果があると見られている。

「メガキャスティング」と呼ばれる、巨大な鋳造装置を用いて一体成形した大型アルミダイカスト部品を、車台の前部と後部に採用。民生証券の調査レポートによれば、この技術により(部品点数が大幅に削減され)製造コストを約4割も削減できるという。


新型SUV「G6」の発表会は熱気に包まれた(写真は同社ウェブサイトより)

G6の発売を機に、小鵬汽車は主戦場を希望小売価格20万〜30万元(約399万〜598万円)の価格帯に戻す。同社は新興メーカーとして市場に参入した当初も、コストパフォーマンスの高さを売り物にしていた。2020年4月に発売した中型セダン「P7」は、希望小売価格が22万9900元(約459万円)からで、一時は月間9000台以上を販売するヒットとなった。

その後、同社は2020年8月にアメリカのナスダック上場を果たし、2021年7月には香港証券取引所に重複上場した。

この時期から、小鵬汽車は製品ラインナップの高級化を志向するようになり、2022年9月にフラッグシップモデルとして高級SUV「G9」を投入。その希望小売価格を30万9900元(約618万円)からに設定した。

失敗を機にリストラ断行

ところが、G9の販売はまったく振るわず、期待を裏切る結果になった。この失敗をきっかけに、小鵬汽車の創業者で董事長(会長に相当)を務める何小鵬氏は社内体制のリストラに着手。複数の経営幹部の権限が縮小され、その一部は退社を余儀なくされた。


本記事は「財新」の提供記事です

「今回(G6に関して)思い切った価格戦略を打ち出したことは、最近の社内体制の変革と大いに関係がある。リストラはまだ第1段階が完了した段階であり、継続して進めていく」。何氏はそう語り、戦略転換の成功に自信を示した。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は6月30日

(財新 Biz&Tech)