3年前に離婚をした横溝義彦さん。新宗教の宗教二世で元妻は同じ宗教を信仰していたという(筆者撮影)

アラフォーというと社会のことを理解し始め仕事に精を出したり、育児に奮闘していたりする人もいる年代だ。そんなアラフォー世代が離婚をした後、仕事や生活はどう変わるのだろうか。今回は38歳で離婚をした男性に話を聞いた。

離婚を機にフリーランスへ

取材場所の喫茶店に現れた横溝義彦さん(仮名、41歳)は長身でがっちりとした体型の男性だった。横溝さんの離婚の原因は少し特殊である。横溝さんは元々、新宗教の宗教二世で元妻は同じ宗教を信仰していた。しかし、途中から横溝さんは宗教観に疑問を抱き始め、信仰するのをやめてしまったが、元妻は熱心な信者で子どもにも信仰をさせていた。その信仰観の違いから離婚をすることになったという。

宗教活動では集会が頻繁に行われていて横溝さん夫婦も参加していた。また、信者の家を一軒一軒回って話をしたりと、宗教活動にはかなりの時間を割いていたという。しかし、横溝さんが信仰をしなくなってからは宗教活動に参加しなくなったため、子どもと過ごす時間が増えたことが信仰をやめて良かったことの一つだそうだ。

「離婚前までは大手人材ビジネスの会社で働いていたのですが、離婚を機に思い切って脱サラしました。脱サラってパートナーを説得しないとなかなかできないことなので、宗教の信仰もやめたし自由に働きたくて、今はフリーランスの広報やライターをしています」

仕事の内容は、例えばプレスリリースを書いたり、広報の部署をゼロから作ったりするお手伝いをしているという。最初の3カ月は仕事がなくて不安だったそうだが、大手で働いていたこともあって人脈があり、仕事が増えていった。ただ、会社員時代と比べて収入は落ちた。

「でも、好きな仕事ができているのでそこは楽しいです。実は、宗教二世に関する記事もメディアで書いたのですが、これも結婚していたらできなかったことです。フリーランスになってからの生活ですが、朝は早起きをして公園で運動をした後仕事をして、午後からは友人に会ったりこんなふうに取材を受けたりして、夜は22時には寝るという健康的な生活を送っています」

横溝さんは毎月、子どもに養育費を払って月1回数時間、面会交流をしている。しかし、今まで子どもが一番の生きる希望だったため、離婚直後はテレビCMなどで一家団欒のシーンが流れるだけで自然と涙が溢れたという。

離婚後のお金の使い方はどうなったのだろうか。

「結婚していた頃はお小遣い制で月3万円しかもらっていませんでした。お昼ごはん代にしたり、本が好きなので本を買ったりしていたのですが思う存分には買えず、我慢していました。でも今は自由にお金を使えるので欲しい本はすぐに買っています。今一番お金をかけていることは本ですね。あと、離婚直後は仕事に繋がりそうな異業種交流会や勉強会にも参加してお金を使っていました。今はありがたいことに仕事が増えてきたので参加していないのですが、そういうことにお金を使えることが嬉しかったです。離婚して良かったのはお金の面も含め、好き勝手できることです」

新しいパートナーもバツイチ

また、1年半ほど前に横溝さんには新たなパートナーができた。現在は半同棲状態だが、近々正式に同棲をするため引っ越しの準備中だという。家事はフリーランスで家にいることの多い横溝さんがほとんど担当している。実は新しいパートナーもバツイチということだが、そのパートナーが結婚していた頃、元夫は絶対に家事を手伝わない人だったため、横溝さんが家事をすることにとても感謝してくれているという。

「友人がカフェをオープンさせて、そのお披露目パーティーの際に今のパートナーと知り合いました。次に誰かとお付き合いするならバツイチの人がいいと思っていました。一度結婚生活を経験しているため、バツイチのほうが信頼できると思ったんです。人生経験を積み重ねているというか」

パートナーには子どもがいないため、今は二人で過ごしている。

「彼女の魅力は発想がおもしろいところです。僕、お風呂上がりに体を拭くのが下手でポタポタと水滴を垂らしてしまうんです。でも彼女はそれを注意するわけでもなく、『水滴をポタポタ垂らしたって世界は終わらない』とか言うんです(笑)。よく、夫婦円満の秘訣は相手に期待しないこと、と言われますがそれを良い意味で実践してくれているので気が楽です」

離婚後の人間関係は変わらず

離婚後の人間関係は、ほとんど変わっていないという。ただ、中学生の頃から新宗教の信者の世界で生きてきたため、元妻と共通の友人もいるので、友人を通して元妻の現状を知ることもあるそうだ。横溝さんは宗教の信仰はやめたが、脱会はしていない。その理由として、脱会したら同じ宗教を信仰していた友人たちが離れていってしまうためだという。

離婚後に脱サラして好きなように仕事をして、新しいパートナーとも良好な関係を築いている横溝さん。今後も「好きなことを仕事に」を実践して生き生きと生活していく姿が目に見える取材だった。

本連載ではアラフォー世代で離婚された人が離婚後にどのような変化があり、どんな生活を送っているかの体験談を募集しております。取材の申し込みは以下(https://form.toyokeizai.net/enquete/tko2210b/)よりお願いいたします。


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(姫野 桂 : フリーライター)