「赤血球の数が少ない」…これって病気?

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「赤血球の数が少ない」。健康診断の結果で、こんな指摘を受けたことはありませんか。「昔からずっとこれ」「少ないと言われると気になる…」と心配になったことがある人は多いようですが、実際に「赤血球の数が少ない」場合、どのような原因や弊害が考えられるのでしょうか。循環器内科専門医で、医療法人社団正恵会(東京都豊島区)理事長の藤井崇博さんに聞きました。

いわゆる「貧血」の状態

Q.そもそも、「赤血球」とは何ですか。

藤井さん「赤血球は血液細胞の一つで、赤い色をしています。大きさは直径が7〜8マイクロメートル、厚さが2マイクロメートル強ほどで、両面の中央が凹んだ円盤状です。赤血球は、その内部に充満している『ヘモグロビン』に肺から酸素を取り込みながら、血液の循環によって体中を回り、隅々の細胞に酸素を供給したり、二酸化炭素を排出したりする役割を担っています。

赤血球の数は、血液1マイクロリットルあたり、成人男性で420〜554万個、成人女性で384〜488万個程度が正常範囲です。標準的な体格の成人の場合、全身に3.5〜5リットルほどの血液があるため、体内の赤血球の総数はおよそ20兆個と、その数は膨大です。

赤血球は、細胞に酸素を供給するという役割を果たすため、柔軟性に富み、狭い毛細血管にも入り込むことができます。なお、細胞の活動に必要なエネルギーは『嫌気性解糖系』と呼ばれる酵素によって糖を分解することで得ています」

Q.健康診断で「赤血球の数が少ない」と指摘されることがありますが、この場合に考えられることは何でしょうか。

藤井さん「いわゆる『貧血』の状態といえます。貧血とは、簡単にいうと『血液が薄くなった状態』です。血液中の赤血球の数やヘモグロビンの量が減少すると、各臓器への酸素の供給が不足します。それにより、目まいや倦怠(けんたい)感、階段など日常生活での息切れといった症状がみられるようになります。

血液の濃さは、血液中のヘモグロビンの濃度で示されます。1デシリットルあたり、男性では13.0グラム、女性では12.0グラム以下になると、臨床上は貧血と診断されます。なお、貧血の原因としては、大きく『赤血球数が減少する』ことによるものと、『赤血球が作られにくくなる』ことによるものの2つに分けられます」

【貧血の原因(1)赤血球数が減少する】

細胞を形成する膜の異常によって赤血球が破壊されたり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍から出血したりすることで貧血を起こします。これらの出血が長期間にわたると、通常より多くの赤血球を作り出す必要があるため、鉄分などの原料が不足し、赤血球の産生の低下にもつながります。

【貧血の原因(2)赤血球が作られにくくなる】

「造血細胞」という血液を作る細胞自体の異常や、赤血球を作るための原料(鉄分、ビタミンなど)の不足が挙げられます。その原料不足の原因として、無理なダイエットや偏った食事、妊娠・授乳などによる赤血球の需要の増加、婦人科疾患や消化器系疾患による慢性的な出血があります。

関連が考えられる「8つの病気」

Q.「赤血球の数が少ない」原因として考えられる疾患・病気には、どんなものがありますか。

藤井さん「赤血球の数が少ないこととの関連が考えられる病気の例は、次の8つです」

【鉄欠乏性貧血】

貧血の中で最も頻度の多い疾患で、鉄分が不足することが原因です。女性に多いとされており、無理なダイエットや生理が原因となることが多いです。また、偏った食生活を続けることや、胃がんや胃潰瘍といった消化管からの出血が原因となるケースもあります。

【胃がん】

進行すると吐血や、便に混じって血が出る「下血」が起こり、それに伴って貧血が起こります。

【胃潰瘍】

病状が進行すると胃の粘膜から出血が起こり、それに伴って貧血が引き起こされることがあります。

【十二指腸潰瘍】

胃潰瘍と同様に、病状が進むと出血が起き、それに伴って貧血になる場合があります。

【大腸がん】

初期はほとんど症状が現れないものの、進行すると慢性的な出血が起き、それによって貧血が起こる場合があります。

【子宮筋腫】

子宮筋腫が大きくなると生理痛がひどくなり、生理時の出血量の増加や、生理の期間の長期化に伴って貧血が起きることがあります。

【慢性腎不全】

慢性腎不全になると、赤血球を作るためのホルモン「エリスロポエチン」が欠乏してしまうため、貧血が起こる場合があります。

【白血病】

白血病は、白血球細胞が増加することにより、正常な白血球が作れなくなる病気で、白血球だけでなく、赤血球や血小板の量も減少します。そのため、出血が起こりやすくなり、貧血を引き起こすことがあります。

Q.「赤血球の数が少ない」と指摘された場合、どうすればよいですか。

藤井さん「まず、貧血の原因疾患を診断するために、医療機関を受診してください。採血(腫瘍マーカー含む)、内視鏡検査、画像検査などを行うかどうか、医師と相談して決めていく必要があります。

医療機関での精査で原因疾患が見つかった場合には、それぞれの疾患に対して適切な治療を行います。それ以外の場合、特に女性の貧血に多い『鉄欠乏性貧血』は、食生活の見直しや鉄分の補給などによる改善を図ります。鉄分の補給は通常、医療機関で採血など適宜フォローしながら、錠剤などで3〜4カ月かけて行います。1〜2週間程度でヘモグロビン量が増加し始めますが、そこで安心して治療を途中でやめると、貧血が再発する可能性が高くなります。

女性に多い鉄欠乏性貧血を改善するには、無理なダイエットや偏った食事をしないよう意識し、『生理時に出血が多過ぎる』といった症状があれば、婦人科を受診することが推奨されます」