2020年3月のコロナショックの日本株下落から、海外投資家が買い進めてきた企業をランキングにした

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日本株は外国人投資家の注目度が高まるとともに上昇力を高めている(写真:metamorworks/PIXTA)

年初には世界の株式市場の中でも出遅れが目立っていた日本株だが、夏が迫るにつれて目覚ましい上昇力を発揮している。日経平均株価は6月に入りバブル後の高値を相次ぎ更新した。


その原動力は、国内株式市場で最大の投資主体である海外投資家に広がる「日本株買い」の動きだ。東京証券取引所が発表した投資部門別売買動向では、5月第5週まで外国人投資家は10週連続で買い越している。

海外勢が日本株への買い姿勢を強めたのには、複数の理由がある。

東証によるPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業への改善要求が、業績や株主還元の改善につながると評価されたこと。さらに、世界的に影響力がある投資家のウォーレン・バフェット氏が総合商社株を買い増し、日本株にポジティブな姿勢を見せたことなどもあって、株式市場では日本企業を再評価する動きが活発になった。

外国人比率が上昇するとともに株価は急伸

海外投資家は、全体相場を押し上げるだけの資金力があることに加えて、個別株への投資判断に際して企業の成長性やESGへの対応度を厳しく問う傾向がある。そのため、海外勢がどの企業を買い増してきたのかは、中長期的に有望な企業を考えるうえで重要な手がかりの1つといえる。

そこで今回は、6月16日(金)に発売した『会社四季報』2023年3集(夏号)の特集「巻頭ランキング」から、「外国人持株比率3年前比向上度ランキング」の一部を紹介する。

東洋経済が半期ごとに集計している各社の株主データを基に、2020年3月のコロナショックの日本株下落から、海外投資家が買い進めてきた企業をランキングにまとめた。

1位は、半導体製造装置向け部品やパワー半導体基板など電子デバイスを手がけるフェローテックホールディングス。外国人持ち株比率は3年前の15.0%から直近は29.0%に向上している。

前2023年3月期は、主力製品の1つであるパワー半導体基板の売上高が前々期比2.4倍の200億円に急拡大し、会社全体の営業利益も同55.1%増の350億円に膨らんだ。半導体ではメモリーやロジックの市況が調整局面入りしたとみられる中でも、EV(電気自動車)や家電の省エネ化に役立つパワー半導体は依然、強い需要が続いている。


今後も継続的な成長が見込めるパワー半導体分野に事業基盤を築いていることが、海外投資家からの高評価につながっていそうだ。株価は、3年前の700円台前半から足元では3000円台前半まで4倍以上の上昇となっている。

業績成長の期待が持てる良好な事業環境

2位にランクインしたのは、工作機械や成形機を手がける機械メーカーの芝浦機械で、外国人持ち株比率は34.6%と、3年前比で13.0ポイント高まった。成長期待を集めるのはやはりEV関連事業だ。前2023年3月期はEVの2次電池向けバッテリーセパレーターフィルム(BSF)の成形機が全体業績を牽引、受注高は過去最高をマークした。


芝浦機械の業績推移

2024年3月期も豊富な受注残が効いて、営業利益は前期比2.6倍の150億円と急拡大を見込んでいる。EVの台数増に限らず、バッテリーの大容量化もセパレーター需要の拡大につながるため、顧客企業の間ではBSF成形機への旺盛な投資意欲が継続する見通しで、今後も業績成長の期待が持てる良好な事業環境といえるだろう。

3年前の株価は2000円台半ばだったが、今年5月以降に上昇が加速し、足元では5000円近辺で推移している。

ランキング上位にはPBR1倍前後の企業が目立つ

3位の日清紡ホールディングスは外国人持ち株比率が直近で25.4%と、3年前から12.0ポイント向上している。コロナ禍による新車の需要急減がブレーキ摩擦材や車載半導体事業を直撃し、2020年12月期は営業利益が12億円にまで落ち込んだが、2021年12月期は同217億円、2022年12月期は同154億円と業績は完全に復調した。


7月には無線・通信技術を軸に官公庁向けのソリューション事業などを展開する日立国際電気の買収を予定しており、防災・監視システムや船舶向け無線通信機器などを手がける傘下の日本無線との技術や販売面でのシナジーを通じた成長力強化を狙う。3年前に800円近辺で低迷していた株価は、足元では1100円台を回復している。

そのほか上位には4位に日本板硝子、5位に車載ハーネスや電子部品などのフジクラがランクインするなど、PBR1倍前後の製造業が目立った。外国人投資家の持ち株比率とともに、PBR1倍割れからの脱却に向けた業績改善策や株主還元の強化が発表される可能性についても意識しておくとよさそうだ。


(山田 泰弘 : 東洋経済 記者)