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家事や育児、介護などの分担をめぐって、家族間で言い争いが増えて、いつのまにか一緒にいて心地よい存在だったはずの家族が「つかれる存在」になってしまった......そんな話を聞くことがよくあります。
どうして自分の不満が家族に伝わらないの? どうしたら「つかれない家族」になれるの? そんなふうに「つかれる家族」と「つかれない家族」を考察するこの連載。

数回に分けて、同性カップルの育児生活を紹介しています。いま日本にはいろいろなカタチの同性カップルファミリーがいますが、前々回は「里親養育家庭というカタチ。同性カップルならではのメリット」について(記事はこちら)。前回は「レズビアンカップルの里親生活」(記事はこちら)を紹介してきました。

前回までで紹介したように、日本には養育里親を必要としている子どもが何万人もいます。長期はもちろん、家族の入院などで短期の預かりが必要な子どももいます。まだあまり知られていませんが、数年前から、全国の自治体で同性カップルも養育里親として認定されるようになりました。今回は「ゲイカップルの里親生活」について紹介します。

里子を預かる、LGBTカップルのお2人


自然豊かな郊外の一軒家で同居


祖母の葬儀をTomoさんに頼むことに


2人は実子は希望せず


「同性」の里親への、子どもの反応を気にしていたが


養育里親生活でわかった、里子の「自己肯定感の低さ」


ご近所付き合いもよく、友人も家に集まる環境


里子たちの積極性が増していく


親子体験をさせてもらっている


実際には「仲間」という感じ



整理されたキッチンにかけられた、2人のエプロン。それは、家事分担しつつ生活する彼らの幸せな日常を象徴するような光景でした(ただし、Tomoさんは片付けが苦手なので、Shoさんによく怒られているそうです笑)(写真:筆者撮影)

3回にわたって紹介してきた同性カップルの養育里親活動ですが、「児童相談所から養育費用は出るの?」という点が気になった人もいるのではないでしょうか。彼らに質問したところ、回答は「食費や雑費などの生活費的なもの+手当的なお金が出る」とのことでした。ただ彼らは「必要経費を除いたお金は実は貯金している。里子たちとはいまも交流があるので、彼らが成人したら渡したい」とのことでした。

Shoさんは養育里親制度についてこうも言います。

「日本は、里親制度の認知度も低いし、実際に里親の数も少ない。そういう意味ではもっと認知度は広がるといいと思うけど、かといって、審査があまりゆるくなりすぎるのはキケンだとも思う。里親は誰でもいいわけじゃない。たとえ面倒くさくても、審査はしっかりと、慎重にやることが、子どもの幸せにつながる」

彼らは今後、いい出会いがあれば、長期の受け入れもありえるかもしれないと言います。

ちなみに、里親制度とは別に「特別養子縁組」という制度もあり、これは戸籍的にも家族(実子と同じ扱い)になり、親権も持つことができます。ただ、この制度が使えるのは入籍している夫婦だけ。同性婚制度がない日本の同性カップルは養育里親にしかなれないのが現状です。

“お別れ”にまつわる活動も

ところで、Tomoさんは、里親活動のほかに、LGBT団体の代表としての活動もしています。その団体は、LGBTパートナーとのお別れにまつわるいろいろ(葬式やお墓作り、相続など)をサポートする団体だそう。僧侶かつゲイであるという特殊性を生かした活動です。

Shoさんは「いっしょに死にたい」と言っていましたが、それでもいつか、このお2人にもお別れのときがきます。きっとその日まで、2人は、この東京郊外の一軒家に、いろんな人や動物を迎え続けていくんだろうな、そんなふうに感じた取材でした。

次回は、育児中同性カップルのまた別のカタチ「実子を育てる同性カップル」について紹介します。

この連載にはサブ・コミュニティ「バル・ハラユキ」があります。ハラユキさんと夫婦の問題について語り合ってみませんか? 詳細はこちらから。

(ハラユキ : イラストレーター、コミックエッセイスト)