浜辺美波「らんまん」“オタク女子”はハマり役? 演技の裏側にある“説得力”
俳優の神木隆之介さん主演で“日本の植物分類学の父”と称される植物学者をモデルにした主人公・牧野万太郎の姿を描いているNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「らんまん」(NHK総合、午前8時)が放送中です。5月から、万太郎の東京生活がスタートし、本作のヒロイン・西村寿恵子が本格登場となりました。朝ドラヒロインとしては、初の“オタク女子”である寿恵子を好演している俳優の浜辺美波さんの演技力を探ってみます。
“オタク女子”のシンデレラストーリーを体現中
万太郎は、由緒正しき酒蔵の跡取り息子でありながら、幼い頃から植物に夢中で家業に一切興味を持てなかった男です。そんな彼の転機となったのが、東京・上野で開催された内国勧業博覧会。これは、国内産業の競争と発展を目的に行われる博覧会で、万太郎の実家で作られている日本酒「峰の月」も出品されることとなり、万太郎は当主として参加しました。
しかし、万太郎の真の目的は、憧れの植物学者・野田基善(田辺誠一郎さん)と、里中芳生(いとうせいこうさん)に会うことでした。二人との出会いが万太郎を後に植物分類学の道に進ませるのです。そしてもう一人、万太郎の心をつかんだのが、博覧会に屋台を出していた和菓子屋の娘・寿恵子。これまで女性に関心のなかった万太郎が一目ぼれするくらい、彼女は美しい女性でした。
しばらくして、万太郎は上京先で寿恵子と運命の再会を果たしました。小学校中退の身で東大生と肩を並べ、植物の研究を進める万太郎にとって寿恵子は心の支えとして、さらに大切な存在になっていきましたが、5月26日に放送された第40話で強力なライバル・実業家の高藤雅修(伊礼彼方さん)が登場しました。
高藤は、日本政府が推し進める近代化政策に疑問を持つ元薩摩藩士で、万太郎と同じく寿恵子に一目ぼれし、鹿鳴館で行われる舞踏会に彼女を誘い出しました。
そんな二人の男性の運命を変える寿恵子を演じるのが、2015年放送の朝ドラ「まれ」以来、2度目の朝ドラ出演となる浜辺さんです。2011年に俳優の沢口靖子さんや水野真紀さん、長澤まさみさんらを輩出した「東宝シンデレラオーディション 」でニュージェネレーション賞を受賞し、芸能界入りを果たした浜辺さんがみずみずしい演技で下町の小さな和菓子屋の娘から突然、舞踏会の華に選ばれる寿恵子のシンデレラストーリーを体現しています。
“オタク仕草”がハマる理由は…
寿恵子は誰かが自分の運命を変えてくれるのをただ待つだけのヒロインではありません。自ら冒険者として、未知の世界に足を踏み入れる勇気を持った女性です。
そんな、寿恵子の人格形成に影響を与えてきたのが、亡き父がのこしてくれた冒険物語。その中でも特に、寿恵子は江戸後期の小説家・曲亭馬琴が28年の歳月を費やし、書き上げた「南総里見八犬伝」がお気に入りです。八犬士の現八と信乃が義兄弟の契りを交わす場面を読み上げ、「尊い! 馬琴先生、天才すぎる〜!」と身もだえしたり、自分も八犬士になりたくて紅で自分の頬に牡丹を書いたり(八犬士は皆、体のどこかにボタンのあざがある)と、いわゆる“オタク仕草”を繰り広げました。
それが妙にハマっているのは、演じる浜辺さん自身が大の読書家で漫画も好んで読んでいるからかもしれません。2020年12月に放送された「王様のブランチ」(TBS系、毎週土曜 午前9時30分)のブックコーナーに出演した際には、愛してやまない漫画について熱く語っていました。映画「賭ケグルイ」シリーズや映画「思い、思われ、ふり、ふられ」など、漫画の実写化作品にも数多く出演。映画「約束のネバーランド」では、以前から原作漫画のファンを公言し、実写化にあたり、メインの子どもたちの年齢が変更されたことで映画自体は賛否両論だったものの、15歳の少女・エマ役を務めた浜辺さんの原作の世界観を壊さない天真らんまんでありながら芯の強さを感じる演技は、原作ファンからも評価を受けました。
2023年1月公開の劇場版アニメ「金の国 水の国」では声優にも挑戦。浜辺さんが声を当てたのは、金の国の王女・サーラでした。浜辺さんは優しい声色でサーラのおっとりとした性格を表現しながらも、一方で国の未来と大切な人のために困難に立ち向かっていく王女たる器の大きさもにじませています。
寿恵子もまた母・まつ(牧瀬里穂さん)の「男にすがるような生き方だけはしてほしくない」という思いのもとで育った抜けているようで実はしっかり者のヒロインとして描かれています。
屈託のないしぐさが愛らしくもあり、時折ハッとさせられるような強さを見せつける寿恵子役に浜辺さんはぴったりです。万太郎との恋愛模様はもちろんのこと、自分の力で未来を切り開いていく寿恵子の物語から、今後も目が離せません。