「睡眠改善薬」を長期的に服用すると、どうなる?

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 寝つきが悪いときや眠りが浅いときによく使われる薬として、「睡眠改善薬」があります。睡眠薬と違い、ドラッグストアなどで購入できるのが特徴です。

 ところで、睡眠改善薬を長期的に服用すると、どうなるのでしょうか。睡眠改善薬を服用しても睡眠の質が改善されない場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。こころと美容のクリニック東京(東京都中央区)の院長で、医師の大和行男さんに聞きました。

依存や副作用のリスクが増大

Q.「睡眠薬」と「睡眠改善薬」の違いについて、教えてください。

大和さん「睡眠薬は、処方箋がないと入手できない薬です。睡眠薬の多くは『ベンゾジアゼピン系睡眠薬』といわれるもので、これは脳神経全体の活動を抑える神経伝達物質『GABA』の働きを促し、眠りに導く薬です。

一方、睡眠改善薬は、通称『第1世代抗ヒスタミン薬』に該当し、ドラッグストアなどで購入可能です。抗ヒスタミン薬は、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状を抑える製品ですが、眠くなる作用もあります。

現在、第1世代抗ヒスタミン薬は、医療機関で処方されていません。処方されるアレルギー薬の多くは、第1世代抗ヒスタミン薬の副作用として多かった眠気を軽減しており、逆に第1世代の眠気の作用をうまく利用したのが睡眠改善薬です」

Q.「睡眠改善薬」を服用するメリット、注意点について、教えてください。

大和さん「睡眠改善薬は、特に花粉症などのアレルギー症状が強い人が服用するのに向いていると思います。ただ、どの薬にも当てはまりますが、記載されている用法、用量を順守することが大切です。『昼寝をしたい』などという理由で、気軽に使わないでほしいと思います」

Q.「睡眠改善薬」は、長期的に服用しても問題ないのでしょうか。

大和さん「第1世代抗ヒスタミン薬の場合、服用を続けていると、次第に決められた用量では薬の効果が発揮されなくなります。そのため、一度に多く服用したり、アルコールと併用したりすると、薬に依存するリスクが増大します。

また、第1世代抗ヒスタミン薬は、『てんかん発作を起こしやすくする』『食欲が増す』などの副作用があり、合併症に注意が必要です。市販の睡眠改善薬では眠りが改善されない場合は、速やかに精神科や心療内科の受診をお勧めします」

Q.「睡眠改善薬」を服用しても、寝つきの悪さや眠りの浅さが改善されない場合、どのような原因が考えられますか。

大和さん「例えば、不眠症は、寝つきが悪い『入眠障害』、夜中に目が覚める『中途覚醒』、朝早く目が覚めて眠れない『早朝覚醒』の3種類に分けられます。特に早朝覚醒は、うつ病などを発症している人に多く見られます。

また、睡眠の質が悪い理由として、若い女性に多く、主に鉄分不足で生じる『むずむず脚症候群』や、中年男性に多い『睡眠時無呼吸症候群』といった病気の可能性も考えられます。不眠症の診療時は、そうした病気の可能性も考慮する必要があります。

現在では、かねてから依存性が指摘されていたベンゾジアゼピン系睡眠薬以外にも、睡眠・覚醒リズムに関与する脳内神経伝達物質である『メラトニン』『オレキシン』に作用または阻害することで夜に眠りやすくさせる、いわゆる依存しにくい薬を選択できます。

同時に、カフェインの過剰摂取を避け、『日中に日光を浴びる』『日中の身体活動を増やす』『熱いお湯で長時間入浴しない』など、生活習慣の見直しが重要です。また、寝室の温度、湿度を調節したり、自分に合った照明、寝具を選んだりする工夫も必要となります」