運営会社社員が学生装い…就活イベントで相次ぐ“サクラ”行為、法的責任を問われる可能性は? 弁護士が解説
人材サービス大手のリクルート(東京都千代田区)が6月5日、就職活動中の大学生向けのオンラインセミナーで、同社社員が、参加学生のふりをして質問をするなどの行為をしていたとして謝罪しました。マイナビ(東京都千代田区)も、主催する大学生向けのオンラインセミナーで同様の行為が確認されたことを明らかにしています。
このように、イベント会場などで主催者の関係者が客を装うことは、「サクラ」行為と呼ばれていますが、この場合、主催者側が法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
経済的・精神的な損害の有無によって異なる
Q.イベント会場などで主催者側がサクラ行為をした場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。
牧野さん「人をだましてお金を支払わせるといった、いわゆる詐欺などの犯罪行為に加担しない限り、法的責任を問われることはありません。イベントの主催者の関係者が客を装うサクラ行為の場合、客に経済的・精神的な損害を与えない限り、基本的に民事・刑事の法的責任は発生しないでしょう」
Q.では、イベントの主催者から、イベント内で客を演じるよう依頼され、応じてしまった場合でも、基本的に法的責任を問われないということでしょうか。
牧野さん「その行為によって客に経済的・精神的な損害を与えない限り、基本的に法的責任を問われることはありません」
Q.イベントなどでのサクラ行為がきっかけで客が経済的・精神的な損害を被った場合、主催者側に損害賠償を請求することは可能なのでしょうか。
牧野さん「主催者のサクラ行為が、例えば『詐欺』に該当するもので、それにより客が損害を被った場合には、賠償請求が可能です。この場合、主催者側は、詐欺として、民事の損害賠償責任、詐欺罪の刑事責任、両方の法的責任を負う可能性があります」
Q.サクラ行為に関する事例について教えてください。
牧野さん「2013年から2014年にかけて、男性会員のサクラを使った虚偽の出会い系サイトで複数の女性から利用料をだまし取ったとされる事件があり、その後、このサイトの運営者やサクラ役の男らが逮捕された事例があります。このサイトの運営者らは他にも多くの女性をだましていたとされており、被害総額は約21億円といわれています。
このような“出会い系詐欺”の場合、会社や詐欺グループからの指示でサクラ行為をすると、詐欺に加担したとして詐欺罪(10年以下の懲役)に問われるほか、詐欺行為を組織的に行ったとして組織犯罪処罰法違反(1年以上の有期懲役)に問われる可能性もあります」