専門医が実践している「心臓のトラブルを防ぐ食習慣」

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人生100年時代を迎えて、いつまでも元気で過ごすためには、「心臓の健康」が不可欠な要素となる。

「心疾患はがんに次いで日本人の死因第2位で、循環器系の疾患を抱える人は若い世代を含めて年々増えています。私は100歳まで健康でいるカギとして『血管をしなやかに開くこと』を唱えています」

そう語るのは、血液や血管、循環器系のエキスパートである池谷医院の池谷敏郎院長だ。

「心臓は直結する大動脈へ血液を送り出し、その血液はさらに枝分かれしながら、徐々に細くなる末梢の動脈へと流れていきます。心臓自体も、心臓を養っている冠動脈がしなやかに開くことで正常に機能することができています。心筋梗塞や狭心症、心不全といった心臓のトラブルを回避するためにも、血管力のアップが欠かせないのです」

心臓への負担を減らす方法の一つが、食事のメニューや食習慣への配慮だ。池谷院長が勧める“心臓にいい食べ方”は、まず「朝食は抜かずに必ず食べる」こと。池谷院長の朝食は、季節の野菜と果物を搾り、レモン少々とエキストラバージンオイルを小さじ1杯ほどたらした「池谷家特製野菜ジュース」を1杯飲み、大豆フレーク入りヨーグルト、あるいは納豆ごはんとみそ汁を食べ、食後はブラックコーヒーと、シンプルでありながらも栄養素が凝縮されているメニューが定番だという。

「“ベジファースト”で血糖値を急激に上昇させないようにすることも大事です。ランチは今もコンビニで済ませることも多いのですが、豆類や肉といったタンパク質とサラダが中心です。ドレッシングなど調味料も、塩分を取りすぎないように心がけています。ごはんを抜くといった極端なダイエットはNGです。朝食を抜くと、午前中に空腹感からイライラして交感神経が高まってしまいます。さらに、昼食後の血糖値の急上昇を招いて太りやすくなり心臓にもよくありません」

“何を食べるか”においては、心臓を元気にする“スター成分”を含む食材を中心に、食事の内容を見直していくとよいと池谷院長はアドバイスする。たとえば、昼は菓子パン、「小腹が減った」と言ってはスナック菓子をつまみ、3時のおやつにはショートケーキ……と、甘いものばかり食べている人は、スナック菓子の代わりにチーズ、3時のおやつにはショートケーキではなく高血糖を防ぐ高カカオチョコレートを選ぶ、といったように中身を変えるところからスタートしよう。

「菓子パンやショートケーキ、スナック菓子に使われるマーガリンやショートニングなどを製造する過程でできる『トランス脂肪酸』という物質は、動脈硬化の原因といわれています。トランス脂肪酸が含まれる食材の代わりに、LTP(ラクトトリペプチド)、リコピン、スルフォラファンなど“抗酸化作用”が強い食品を積極的に取るようにすると、血管内皮細胞を正常に保ち、末梢血管をしなやかに開いて、高めの血圧を下げる効果を得ることができます。

心臓に負担をかけてしまう食べ物から、心臓の若さを保つ食べ物にシフトしていくことが、100歳まで働いてくれる心臓をつくる一歩になるのです」

夕食にはサバやアジなどを使った魚料理がおすすめ。サバ缶とトマトソースを10分煮込むと“最強の心臓強化食”のできあがりだ。

「サバやアジなどの青魚に含まれるオメガ3系不飽和脂肪酸『EPA』『DHA』は、末梢血管をしなやかに開き、血小板の活性を抑えて血液をサラサラにして、血流をよくしてくれる働きがあります。赤い色素の『リコピン』にはβカロテンの2倍、ビタミンEの約100倍といわれるほど非常に強い抗酸化作用があります。この2つの食材を組み合わせた料理は優れた“心臓強化食”になります」

もちろん食習慣だけでなく、十分な睡眠を取るといった規則正しい生活が基本。心臓に負担がかからないようにストレスをためないことも大切なポイントだ。心臓を長生きさせるための食習慣にするのは、早ければ早いほどよい。100歳になっても元気に動いてもらうために、いまの食事を一度きちんと見直してみよう。