by ABC News

アメリカ政府の機密文書がDiscordを通じて流出した問題で、FBIは2023年4月13日に、文書を漏えいさせたマサチューセッツ空軍州兵であるジャック・ダグラス・テイシェイラ容疑者を逮捕しました。スパイ防止法違反の疑いで起訴されたテイシェイラ容疑者は、逮捕翌日の14日にマサチューセッツ州の連邦裁判所に出廷しました。

Leak suspect appears in court as US spells out its case | AP News

https://apnews.com/article/leaked-documents-pentagon-justice-department-russia-war-5c2aca4dd971d8bc83d1260f1574f99f



Pentagon leak suspect Jack Teixeira charged in federal court, tells dad 'I love you' | Fox News

https://www.foxnews.com/politics/classified-document-leak-suspect-jack-teixeira-charged-federal-court-tells-dad-i-love-you



Pentagon knew Discord offered risks and warned soldiers about its use - The Washington Post

https://www.washingtonpost.com/technology/2023/04/15/discord-military-recruitment-pentagon-document-leaks/



今回の軍事機密漏えい事件は、4月6日にThe New York Timesが「ウクライナ軍を支援するためのアメリカとNATOの秘密計画について記した機密文書がSNS上に投稿された」と報じたことにより発覚しました。Discordに投稿された機密文書はその後、4chanやTelegramなどを通じてインターネット上に拡散されました。

流出したアメリカ政府の機密文書はDiscordに投稿され4chanやTelegramに拡散された&なぜかTRPGのキャラクターシートが含まれていたことも判明 - GIGAZINE



機密文書を漏えいしたとして逮捕されたマサチューセッツ空軍州兵であるジャック・テイシェイラ容疑者は、国防情報の保持と伝送、および機密文書の故意の保持の罪で起訴されました。これにより、テイシェイラ容疑者には最大で15年間の懲役刑が科される可能性があります。

ボストンにある連邦裁判所に初出廷したテイシェイラ容疑者は囚人服に身を包んで入廷し、最前列にいた父親と互いに「愛してる」と言葉を交わし合いました。



by Margaret Small/Reuters

8ページからなる宣誓供述書には、テイシェイラ容疑者の機密漏えいに詳しいDiscordユーザーとの面談記録を含むFBIの捜査の経緯が詳細に記されています。この文書では、証言を行ったDiscordユーザーの身元などは伏せられていますが、このDiscordユーザーは「テイシェイラ容疑者とされるユーザーは、地政学的な問題や戦争について議論するためのチャットで、2022年12月ごろから機密情報らしきものを投稿し始めた」と述べました。

Discordで活動していたテイシェイラ容疑者が「ジャック」を名乗ったことや、航空州兵の一員であると主張したこと、マサチューセッツ州に住んでいると推測されることといった情報は、この証言者から提供されたものです。FBIはその後、捜査に協力的だったDiscordから投稿に関する記録を入手し、テイシェイラ容疑者の特定につなげました。

証言者はFBIに対し、「当初は機密文書の書き起こしを投稿していたテイシェイラ容疑者が機密文書の写真の投稿に切り替えたのは、職場で書き写しがばれるのを懸念したから」と述べました。これは、テイシェイラ容疑者が他のユーザーから注目されていないことに腹を立てたことが理由だというこれまでの一部報道とは異なります。



宣誓供述書はまた、テイシェイラ容疑者が4月6日、つまりThe New York Timesが機密文書の漏えいについて報じたその日に「leak(漏えい)」で検索していたことを報告しました。FBIは、これがテイシェイラ容疑者が機密漏えいの犯人に関する捜査についての情報を探していたことを示していると考えています。

機密文書が投稿された「Thug Shaker Central」と呼ばれる小規模なDiscordサーバーでは、約20人のユーザーが集まり、自分の好きな銃の種類を語ったり、ジョークやインターネットミームを共有したりしていました。また、ロシアによるウクライナ侵攻を含む戦争も議題になっていたとのこと。テイシェイラ容疑者が機密文書をリークした動機は明かされていませんが、「証言の中のテイシェイラ容疑者は、イデオロギーよりも虚栄心に突き動かされたように見えます」とAP通信は指摘しました。

ニュースメディア・CNNの報道によると、テイシェイラ容疑者は空軍で通信ネットワークの展開と維持に携わっていたとのこと。テイシェイラ容疑者が機密文書にアクセスできたのは、ネットワークのセキュリティに関与する職務に就いていたからだと考えられています。また、漏えいされた機密文書の画像にしわがついていることが多いことから、文書は廃棄予定の資料を保管する「バーンバッグ」に入れられていたものを、テイシェイラ容疑者が発見したのではないかとの見方もあります。

「悪夢」と評される今回の機密漏えいの舞台となったDiscordは、アメリカ軍が若者を勧誘するのに活用するコミュニケーションツールでもありました。機密漏えいが発覚する直前の3月に発表された(PDFファイル)ガイドの中で、アメリカ軍の特殊作戦司令部はDiscordで活動する軍人に向けて「不特定多数の人に見られたくないものはDiscordに投稿しないこと」とくぎを刺しています。

それにもかかわらず、数百ともいわれている膨大な機密情報が流出してしまいました。ロイド・オースティン国防長官は、テイシェイラ容疑者逮捕後の記者会見で、「国防総省はこのような漏えいが2度と発生しないよう、情報へのアクセス、説明責任、管理手順の見直しを実施します」と話しました。