脂肪細胞を増やすダイエットとは?「食」の三択コラム
「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「脂肪細胞」です。
文:三井能力開発研究所・圓岡太治
体脂肪はどのようして蓄えられるか
「太る」とは、体脂肪量が増えることですが、そもそも体脂肪はどのようにして蓄えられるのでしょうか。体内に脂肪を蓄える役割を担っているのは、脂肪細胞です。脂肪細胞のはたらきを知ることで、より効果的なダイエット法が考えられます。脂肪細胞に関する次の文章のうち、正しいものはどれでしょうか。
(1)脂肪細胞の数が増えるのは、胎児期、幼児期、思春期、妊娠中で、それ以外に増えることはない
(2)ダイエットによって、脂肪細胞の数を減らすことができる
(3)脂肪細胞には、脂肪を燃焼させて体脂肪量を減らすものがある
「白色脂肪細胞」と「褐色脂肪細胞」
答えは、(3)で、脂肪細胞には、脂肪を燃焼させて体脂肪量を減らすものがあります。
脂肪細胞には、「白色脂肪細胞」と「褐色脂肪細胞」の2種類があります。このうち白色脂肪細胞には、過剰なカロリーをおもに中性脂肪として細胞内に蓄えるはたらきがあります。体脂肪の正体は、この白色脂肪細胞に蓄えられた中性脂肪なのです。
一方、褐色脂肪細胞は、脂肪を燃焼させて熱に変え、体温を維持する働きがあります。両者は正反対のはたらきをし、褐色脂肪細胞のはたらきが活発だと太りにくく、逆に活発でないと太りやすい体質だと言えます。褐色脂肪細胞は脂肪細胞のうち約1%ほどしかないと言われています。幼児期に多く、成長するとともに減少し、成人になると激減してしまいます。
白色脂肪細胞は脂肪を取り込み、肥大します。しかしある程度大きくなると、それ以上脂肪を取り込めなくなります。すると脂肪細胞の数を増やして脂肪を蓄積するようになります。やっかいなことに、白色脂肪細胞の数は、いったん増えるとなかなか減ることはありません。白色脂肪細胞は約10年という長い寿命をもつためです。ダイエットをしても、細胞内の中性脂肪は減りますが、白色脂肪細胞の数自体は減ることはありません。したがってひとたび白色脂肪細胞の数が増えてしまうと、太りやすく痩せにくい体質となってしまいます。
白色脂肪細胞の数は普通の体形の成人で250〜300億個と言われています。白色脂肪細胞の数がもっとも増えるのは、胎児期、幼児期、思春期、妊娠中です。したがって、妊娠中は別として、このような時期に肥満体質にならないように、特に子どもの親は心がけることが大事です。
熱産生を行う「ベージュ脂肪細胞」
白色脂肪細胞は、通常は脂肪を燃焼させて熱を発生させる「熱産生」をしません。ところが、白色脂肪細胞の中に、褐色脂肪細胞のように熱産生を行う「ベージュ脂肪細胞」を誘導できることが明らかになってきました。
その方法の一つが、「寒冷刺激」を与えるという方法です。たとえば、お風呂で温まったら、シャワーで冷たい水を浴びたり、冷水浴をしたりして体を冷やす、ということを交互にくり返し、体に体温を上げる必要があることを感じさせるのです。褐色脂肪細胞やベージュ細胞がある部位は、ある程度決まっています。首周辺、肩・肩甲骨周辺、脇の下、脊髄周辺です。シャワーで冷やすときは、これらの場所に水をあてると効果的です。
また、ベージュ脂肪細胞を増やす方法として、ベージュ脂肪細胞のある肩甲骨周辺を動かす運動も効果的だと考えられています。魚油に含まれるDHAやEPAの接種も、ベージュ脂肪細胞の発言を高めると考えられています。
ダイエットというと、食事制限と運動が二本柱ですが、脂肪細胞に関する研究が進むにつれ、ダイエット法のバリエーションも広がってきています。
(参考)
[1] 脂肪細胞の分化メカニズム(筑波大学)
https://www.md.tsukuba.ac.jp/basic-med/biochem/gene/research3.html
[2] 脂肪の褐色化による糖尿病治療(日本糖尿病学会誌第59巻第11号)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/59/11/59_744/_pdf/-char/ja
[3] 魚を食べると体脂肪が燃焼するメカニズムを解明 EPAとDHAの効果
https://dm-net.co.jp/calendar/2015/024570.php