新年度が絶好のチャンス!? 習慣化したい「腸活ライフ」の始め方

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食と健康のエキスパート・管理栄養士の藤橋ひとみさんが「腸活」に関する豆知識をお届けする連載。「腸」は美容・健康の鍵を握る臓器。様々な心身のトラブルの解消のために日々の食生活の中で継続して実践できるメンテナンス術を分かりやすくご紹介していきます。

新年度がはじまりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
新型コロナウイルスによる行動制限も解除され、穏やかな日常が戻りつつありますね。

この連載がはじまって早2年以上の月日が経ちますが、美と健康のカギを握る重要な臓器の1つとして注目されている“腸”への世間の熱はいまだ冷める気配がありません。
真に重要だからこそ研究分野でも盛り上がりを見せており、一過性のブームで終わらず、今後もさらに発展していくのではないかと私は予想しています。

ここ数年で“腸活”という言葉もかなり浸透してきたように感じます。この連載に関しても、最近読み始めてくださった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、今月は新年度ということもあり、フレッシュな気持ちで“腸活”の基本について改めてご紹介をしていきたいと思います。

今さら聞けない!? “腸活”とは


一般的な国語辞典を調べても“腸活”という言葉はまだ掲載されていないように、“腸活”には、まだはっきりと決められた定義はありません。ですが、私は“腸活”の意味を「腸に意識を向けて健康的な生活習慣を送ること」と定義してこの連載を執筆しています。“美腸ライフ”も”腸活”と同じ意味です。

健康を意識すると、多くの方は「何を食べるか?」に意識を向けると思います。もちろんそれも重要ですが、その食事を「どのような状態の腸に取り込むか」にも意識を向けるのが腸活のポイントです。例えば、どんなに良いものを食べても消化不良を起こしては意味を成しません。加えて、腸内環境(腸内細菌の状態など)によって同じものを食べても、体への影響が異なることが分かってきているのです。

私たちの腸内(主に大腸)には、約1000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌が生息しています。たくさんの種類の菌たちの中には、宿主である人間に良い影響をもたらす有用菌(善玉菌)、その逆で悪影響を及ぼす有害菌(悪玉菌)、そのどちらでもない中間の菌(日和見菌)がいます。

その細菌の集合体を腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう・別名:腸内フローラ)と呼びますが、その多様性を高め、有用菌が活発に働く状態を維持することが理想的だとされています。

腸内フローラをはじめとした腸の状態は、食事・運動・睡眠・ストレスなど、様々な生活習慣の要因の影響を受けて変化します。
だからこそ、毎日の生活の中で“腸活”を意識し、継続することが大切なのです。

“腸活”を取り入れるメリットとは


この連載の中でも様々な切り口で腸活の魅力をお伝えしてきましたが、腸は心身の健康全般に幅広く関わっていることが明らかにされています。

これまでの研究で、腸内フローラは肥満や糖尿病などの生活習慣病、大腸がん、免疫機能、精神疾患などと密接な関係があることが知られています。これらの疾患をもつ患者と健康な人では腸内フローラの特徴が異なることや、腸内細菌の中には、免疫・炎症機能に関わる働きを持つものがいること等が明らかにされているのです。
まだ研究途上のことも多いですが、腸の重要性の認識は年々高まっているように感じています。

それでは、腸活とは実際にどのようなことをすればよいのでしょう?
改めて基本を一緒に確認してみましょう。

腸活は意外と簡単!食生活ではじめに意識するならコレ


成人の腸内フローラの 30〜40%は生涯にわたって変化することが分かっています。適度な運動や睡眠、ストレスケアなども重要ではありますが、食事は腸内環境を改善する最も強力な手段の 1 つとされています。

食事で意識したい腸活のキーワードは、“プロバイオティクス”と“プレバイオティクス”です。プロバイオティクスとは、健康に有用な作用をもたらす生きた有用菌のことです。食品では、ヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆など非加熱で食べる発酵食品からとることができます。ちなみに、食品中に含まれる有用菌は死んでいても体に良い働きをすることが分かっているので、加熱したらダメというわけではありません。

プレバイオティクスとは、腸内にもともと存在する有用菌を増やす作用のある食品成分のことです。具体例としては、食物繊維があげられます。食品では、野菜類や豆類、果物類、海藻類、穀物類、ナッツ類などの植物性の食品に多く含まれています。

これらの食品を積極的に、毎日の食生活にとりいれることから意識してみることから、腸活をはじめてみてはいかがでしょうか。

“いつか”やってみたい!を“今”にする絶好のチャンス!


周りにも腸活をしている人がいる、テレビや雑誌などのメディアで目にしたことがある、など腸活にご興味がある方がこの記事を読んでくださったのではないかと思います。

新たなライフスタイルを習慣化しやすいこの新年度のタイミングで、改めてご自身 の”腸”へ意識を向けてみてはいかがでしょうか。

この記事が、腸活をはじめるきっかけになると嬉しく思います。

〈参考文献〉

[1]厚生労働省, e-ヘルスネット, 腸内細菌と健康

[2]Zmora N, Suez J, Elinav E. You are what you eat: diet, health and the gut
microbiota. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2019 Jan;16(1):35-56

[3]Illiano P, Brambilla R, Parolini C. The mutual interplay of gut microbiota,
diet and human disease. FEBS J. 2020 Mar;287(5):833-855.

(すべて2023年4月7日閲覧)

※ 記事のメイン写真は記事をイメージして選定させていただきました。

画像提供:Adobe Stock

 管理栄養士 藤橋ひとみ(ふじはし・ひとみ)

株式会社フードアンドヘルスラボ 代表取締役。商品開発やレシピ開発、コラム執筆やメディア出演、コンサルティング等、幅広く活動中。同時に、東京大学大学院にて医学博士取得を目指し、栄養疫学の研究に取り組んでいる。豆腐や豆乳、ソイオイル、味噌など、大豆関連の資格を多数所有し、大豆や腸活分野の専門家として活動する中で、最近は日本人が不足しがちな食物繊維の宝庫である「おから」に注目し、有効活用できる方法を広げる活動に注力している。著書「おいしく食べてキレイになる!おから美腸レシピ(ベストセラーズ)」

●所有資格

管理栄養士、調理師、製菓衛生師、豆腐マイスター、食育豆腐インストラクター、豆乳マイスタープロ、おから味噌インストラクター、ソイオイルマイスタープロ、おから再活プロデューサー、インナービューティープランナー、発酵食品ソムリエほか

【ホームページ】https://is-food-health-labo.com/

【書籍】おいしく食べてキレイになる!おから美腸レシピ