肌に触れる衣類の材質とストレスの間には深い関わりが(写真:アフロ)

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21年の日本人の平均寿命は、男性が81.47歳、女性が87.57歳(厚生労働省発表)。日本は世界有数の長寿国だ。

「昨年9月には、国内の100歳以上の高齢者人口が9万人を超えたという発表がありましたが、人生100年時代の本格化を感じさせるニュースでした。長い人生、誰しもできるだけ元気に過ごしたいものでしょう。そのためにも『健康寿命を延ばすこと』が、ますます重要になってきます」

こう話すのは愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也先生だ。長年、アンチエイジングの研究に携わってきた伊賀瀬先生は、健康寿命を左右する分岐点の一つは50代で訪れると話す。

「これまで4千人以上の患者さんたちに抗加齢トレーニングの指導を行ってきました。そのなかで見えてきたのは、特に女性は50代から足腰の筋力の低下が顕著になること。筋肉、関節などの運動機能だけをとっても、6〜7割の人がすでに50代で何らかの自覚症状を訴えるようになります」(伊賀瀬先生、以下同)

足腰の筋肉が衰えた「サルコペニア」になると、転倒・骨折のリスクが高まり、そこから寝たきりの生活を余儀なくされてしまうケースも少なくない。足腰を丈夫に保つカギとなるのは運動の習慣だ。同時に、筋肉を維持するためにはタンパク質をはじめとするバランスのとれた食事も不可欠。

「足腰だけでなく、血管や脳、またメンタルのコンディションを保つことも健康長寿をかなえる土台として欠かせません」

「運動」からみていこう。丈夫な足腰は運動機能以外の面でも大きな意味を持つ。

「筋肉量を維持していると、糖尿病や高血圧、動脈硬化などさまざまな病気の予防になることがわかっています。同時に運動を通じて鍛えたいのがバランスを保つ力。バランス力が衰えると体をイメージどおりに動かすことができなくなるほか、サルコペニアのリスクを高めてしまいます」

バランス力の目安は「1分間、片足立ちができるか」。高齢になっても1分以上キープできる状態が理想だという。

1日3回の「1分片足立ち」を習慣にすると、足の付け根の骨に50分間ウオーキングするのと同等の負荷がかかるため、バランス力と筋力を効率よく鍛えるトレーニングになる。

日々の生活では、きちんと体を休めることを心がけよう。規則正しい睡眠がその基本となる。眠るときの衣類の“素材”にも気を配りたい。

「シルクは人間の体を構成する20種類のアミノ酸のうち、18種類を含んでいます。つまり、人肌に近い素材ということ。肌触りのよい素材は、ストレス軽減に効果が期待できます」

最後に食事について。年齢を重ねるにつれ、より積極的に取りたい食材、また避けたい食材があるという。

「バランスのとれた食事は大前提ですが、体の“酸化”や“糖化”を招くような食べ方を避けることも大切です。意識的に取りたいのは、腸内環境を整える働きのあるものや、抗酸化作用が高い食材。積極的に取るように心がけましょう」

伊賀瀬先生が注目する栄養素の一つに、老化を抑える働きが報告されている水溶性のビタミン「ナイアシン」がある。ナイアシンはレバーや鶏肉、カツオ、たらこ、落花生などに含まれているものの、バランスに気を配らないと不足しがちな成分だという。

「栄養素によってはサプリメントで補うのも手です。ナイアシンのほか、アスタキサンチン、コラーゲンペプチド、EPA、コエンザイムQ10のサプリもおすすめです。

健康のための習慣を取り入れるにあたっては、早すぎることも遅すぎることもありません。思い立ったそのときに実際に行動に移すことが大切です」

日々の生活を見直して、将来“ぴんぴん100歳”をかなえよう。