2022年11月にSKE48を卒業した須田亜香里が主演を務め、アクションとポールダンスに挑む舞台『Bumblebee7(バンブルビーセブン)』が、3月17日より上演中。


舞台は2080年のTOKIOCITY。表の顔はポールダンサー、裏の顔は殺し屋という須田演じる出雲をはじめとする戦う女性7人によるポップでクールなバイオレンスアクションとなっている。上演を目前に控えたタイミングで、須田と、京極役で本作に出演する関根優那の2人に話しを聞くことができた。本作の見どころや稽古時のエピソード、互いの印象などを語ってもらう。


──3月17日の上演を目前に控えた(取材時)、現在の心境を聞かせてください。

須田

私は舞台でお芝居するのが何年ぶりだろうというくらいなので、その不安はすごく大きいです。歌って踊ることは13年やってきましたが、歌と踊りは音楽がかかってさえいれば、間違えたとしても進んでいくんです。でもお芝居は自分が止まってしまうと全部が止まってしまう。自分が抜けたらバランスが崩れたり、進まなくなったり良くないものになったりするというところが、アイドルのステージとは違うなと感じています。アイドルのステージは、間違えちゃったとしても、その表情が可愛い、と認めてもらえることもあるけど、舞台のお芝居は全然そういうことじゃないので、今までとはまた違う、ピリッとした気持ちでステージに立たなければいけなくて、「ちゃんと自分にできるかな」という気持ちです。


──関根さんはどう感じていますか。

関根

稽古期間はあっという間でしたが、すごく濃い時間を過ごしたという感覚もあります。体の疲労と共に、「みんなと頑張ってよかったな」と実感しています。殺陣が見どころの舞台なので、稽古場での練習を終えた今、実際のセットでどう混じり合って良くなっていくのか、想像が膨らんで楽しみです。


──須田さんは、アクションシーンの稽古はいかがでしょうか。

須田

戦うシーンはとにかく多いです。今まで自分は身体能力が高いつもりで生きてきたんですが、「自分は平凡なのか」と思うくらい、キャストそれぞれがこれまでに培った力を発揮している舞台なんです。知念紗耶ちゃんはアクロバットができるし、優那ちゃんも刀が使えるし。みんなの気迫に負けないようについていくのが大変です。私も「魅せられる自分でいなきゃ」と、良い刺激をいただいています。


──稽古の動画を拝見しましたが、各々の武器を使いこなしていました。

須田

私は、銃とナイフを使っています。それぞれが特殊能力を持っている設定なんですが、私が演じる出雲は自由に体を柔らかくしたり固くしたりすることができるんです。そこは私のもともとの体の柔らかさを個性として生かしてもらっています。


──特殊能力で柔らかくなった体を、須田さん自身の肉体で表現するんですね。

須田

そうなんです。びっくり人間コンテストみたいですよ(笑)。


関根

本当にすごいんです。


──関根さんはどんなアクションを行うのでしょうか。

関根

私は日本刀、銃、ナイフ、ショットガン、マシンガン、ロケットランチャーなどの武器を使います。


須田

武器の数が多いんですよ。


──関根さんが演じる京極は、触れたものを使いこなせる能力があるんですよね。

関根

そうなんです。だからちょっと使えるくらいじゃだめなんです。いかに短期間に上手く見せられるかが大切なんですが、すごく難しいです。武器も重いんですよね。片手でパッと持って撃ったりするんですが、私は重いと思っているところは見せたくないタイプなんです。「女の子だから持てない...」という風に見られたくないんですけど、実際にはめちゃくちゃ重いんですよ。重すぎて芝居に集中できないこともあったんですが、だんだんとなんとか筋力がついてきました。


須田

どんどん役と一体化していくんですよ。前は見ていて「重いんだろうな」と感じる瞬間もあったんですけど、最近は重い武器を持っている姿に迫力があって、ちゃんと脅威を感じるんです。日々、進化していく姿を近くで見ていて、「格好良い、私も頑張ろう」と思えます。


──須田さんのポールダンスも少しだけ公開されていました。

須田

年末くらいから始めたんですが、稽古の数はあまりなくて、今までで7回くらいだったと思います。


──7回の稽古であんなにこなせるものですか。一般的にはもっと練習の回数が必要なものなのでは。

須田

そうなのかもしれないです(笑)


関根

すごすぎる。


──家に練習用のポールがあったりするんですか?

須田

稽古場に行かないとポールはないんです。基礎練習を5回くらいした時に、どの筋肉が必要なのかを理解して、通っているピラティスで、それ用の筋肉を作りました。前からポールダンスは格好良いなと思って、興味があったんですけど、いざやってみたらすごく難しかったです。子どもの頃に得意だった登り棒とは全然違うんですよ。肩に力を入れず、背中や脇の下の筋肉を使って無重力感を演出するんです。あざがすごくできました。見に来てくださった方に「ポールダンスを見ただけでもチケット代の価値があった」と思われるくらいにやってやるぞ、ということを目標にしていたので、妥協せずに見せられたらいいなと思います。


──アクションやダンスも大変そうですが、セリフもたくさんあるんですね。

須田

セリフ量はみんな多いですね。今回が人生で一番セリフを覚えたと思います。現代的な表現じゃないかもしれないですけど、カラオケの歌本くらい台本が分厚いんですよ。


関根

わかりやすい(笑)。


須田

それを稽古の数日前にもらって「どうやって覚えるんだろう」と思ったけど、意外とできるんですね。今までお芝居にあまり挑戦してこなかったから自分には無理だと思っていましたけど、無理と思う量でも人間はやればできる、ということに感動しました。「この量入るんだ、自分」って。


──キャスト同士の結束も高まりましたか。

関根

そうですね。7人しかいない女性だらけの現場なんですけど、戦う作品なので息を合わせるシーンも多いから、必然的に結束力は高まっていきました。あかりん(須田)が座長ということもすごく大きいと思います。


須田

何にもしてないですよ。


関根

「引っ張ってやるよ!」ということではないんですが、稽古への向き合い方は座長の空気感が大事だと思います。あかりんは一生懸命だし、本当にひた向きに向き合っていることが伝わるから、みんなも「私も頑張ろう」と思えていると思うんですよね。、


──須田さんは以前、映画でも主演をされていました。

須田

舞台の主演も実は2回目なんです。『AKB49〜恋愛禁止条例〜』という漫画原作の作品で「男の子の主人公がAKB48に入ったら?」という作品で男の子役を一度やりました。


──その経験もあって、座長としての振る舞いを意識されたのでしょうか。

須田

7年くらい前のことですし、当時はお芝居もわからないし、いつも悩んで、家でずっと泣いての繰り返しで、よくわからないままに精神すり減らして、みんなについてくのが必死、という本当に未熟すぎる感じだったので...。今は31歳の女性として重ねてきた時間や、女の子のグループにいた経験とか、今まで育った環境で感じた、「チームワークって、こうすると空気が良くなるな」とか、「人と関わる上で、相手を尊敬していたい」とか、そういう考え方で、私は心地良く現場にいることができています。座長として見てくれている部分は、そういうところなのかなとは思いますが、「座長だからこうしなきゃ」ということは考えすぎず、みんながお仕事をしやすい空気にできたらいいなと考えるようにしています。


──アイドルとしての集団生活の経験が活きているんですね。

須田

めちゃくちゃ活きています。そもそも人のことを嫌いになることがないようなタイプですし、そういう悩みはあまりないんですけど、とにかく7人みんながすごく尊敬できる存在なんです。見た目も育った環境も全然違うけど、みんなが魅力的。自分自身も助けてもらっているなと思います。


──今作の登場人物のように、須田さん、関根さんにもなにか特殊能力があるとすればどんなものでしょうか。共に過ごした期間で発見したものはありますか?

関根

あかりんは、人の心を掴む特殊能力があると思います。笑って挨拶してくれたり、いつでもニコニコ話してくれたり、スタッフさんとも分け隔てなく喋っていたりする姿を見て、細かいところにもいつも嘘がないというか。自分に笑いかけてくれてうれしい、というファンの方の気持ちがわかりました。私は年下ですけど、「良い子だな」という評判の通りの方。本当に素敵な女性で、こういう方が愛されていくんだなと思いました。


須田

私は波長が合うと思って、素直に接していたつもりなんです。それが一人歩きして良い話みたいになっている気がします(笑)。でもめちゃくちゃうれしいです。うれしいけど、照れくさい。


──須田さんは関根さんについてどう思いますか。

須田

私、めっちゃついていっているんです。座長らしからぬ発言かもしれませんけど、(関根を)座長だと思ってるくらい。みんなのことを俯瞰で見守ってくれる包容力がすごいです。みんなが必死で、稽古で疲れた時も、大変なのはみんな一緒なのに、ハードな日の翌日に、全員分、手書きメッセージ付きのフェイスパックと入浴剤を用意してくれたんです!あんなヘトヘトで大変な中、なぜ手書きメッセージをみんなに書けるのか。その人間力が素晴らしくて、びっくりしちゃいました。みんなもすごくうれしい気持ちになって、士気が高まりました。


──それはどんな特殊能力なんでしょうね。

須田

マザーテレサ力(りょく)。


関根

初めて言われた(笑)。包容力なんて言われたことないです。その日は本当に大変だったので、アドレナリンが出ていたんですよね。あかりんをはじめ、一人ひとりの気遣いも身近でずっと感じていたので、たまたまです。


須田

本当に格好良いです。みんなのことを見て、みんながうれしいなと思うことをサラッとできる。素敵です。


──須田さんは、アイドルを卒業後、今回が初の舞台となります。2022年11月に卒業してからの期間はいかがでしたか。

須田

卒業後は、地元の仕事が多いです。7割くらいが地元で、それ以外は東京でお仕事を入れてもらったりしていて、今までと全然変わらないです。変わらずに忙しくさせてもらっていたという感謝と同時に、アイドルとしてステージでバチっとスイッチを入れていたことが抜けてしまった分、背伸びをして人前に立つことが減った感覚はあります。「等身大の自分で生きていくぞ!」と卒業を決めたものの、等身大の自分だけで過ごしていると、自分が進化できないような感じがしてモヤモヤしていたんです。今回、舞台をやってみようかなと思えたのも、アイドルじゃなくなったからということがすごく大きくて。「背伸びしたい」という気持ちが自分の中に出てきたので、昔は「難しい・怖い」と思っていた舞台に、今の自分がどうやって向き合うんだろうという自分への興味もあって、飛び込んだんです。ちょっと無理をしたい。


──ありがとうございました。最後に改めて、お2人の思う本作の見どころを聞かせてください。

関根

この作品は未来のお話で、冒頭から非日常の世界に引き込まれます。女の子7人だけしか立っていない空間と、生で感じられる女子の本気の迫力はこの舞台でしか感じられないものだと思うので、ぜひ生で見ていただきたいです。格好良いシーンもあるし、笑えるし、だけど泣けるという、たくさんの感情を一気に感じていただけるので、絶対に満足していただけると思います。私は特殊能力でいろんな武器を使うので、アクションが好きな方には絶対にワクワクしながら見ていただけると思います。頑張ります!


須田

今回は職業が殺し屋ということもあってビジュアルもすごく格好良い感じなんですが、怖いというよりは「“強い”って格好良いな」「生きていくっていいな」と思えるような、希望を持って生きていくことの素晴らしさに気付かせてもらえる作品だと思います。日常の悩みは誰にでもあると思いますが、日々あざだらけになりながら、それでも立ち上がって、努力をし続ける女子たちを見て、頑張るパワーをもらってくれたらうれしいです。見終わった後に、自分も強くなったような気持ちを持ち帰ってほしいですね。それから、私のポールダンスでは、すごくセクシーなお衣装を用意していただいています!


関根

大変ですよ。ファンの人、心して見てください。


須田

鼻血を出させたいと思います。ティッシュとハンカチ必須です(笑)。


取材・文・撮影:山田健史