70年前の1953年1月20日、静岡県を走る岳南鉄道が全通を迎えました。

「工場萌え」歓喜のミニ私鉄路線


静岡県富士市内を走る岳南電車(乗りものニュース編集部撮影)。

 今から70年前の1953年1月20日。静岡県を走るローカル私鉄、岳南鉄道(現:岳南電車)が全通を迎えました。

 岳南鉄道はもともと日産の工場専用線として1936(昭和11)年に誕生。戦後旅客化され、東海道本線の吉原駅から、吉原の中心市街地をむすぶアクセス路線として人々の生活を支えました。このように街の郊外の国鉄駅と街をむすぶ鉄道は各地で作られ、和歌山県の紀州鉄道や茨城県の関東鉄道竜ケ崎線などが”ミニ私鉄”として残っています。

 いまでもジヤトコや日本製紙の工場が沿線に立ち並び、特に岳南原田〜比奈では線路を覆い囲うように日本製紙のプラント施設が林立し、車窓のハイライトとなっています。岳南電車でもこの車窓を活かし「夜景電車」を運行。車内を消灯して、車内照明の映り込み無く、煌びやかな工場の風景を楽しむことができる仕掛けです。

 1950年代には、吉原本町から西へ分岐して市街地を通り抜け、身延線の入山瀬駅まで向かう路線整備の機運が高まりましたが、結局実現しないままとなっています。

 駅や沿線風景に昭和の面影を色濃く残す岳南電車。「ジリリリ…」と物理的に金属が鳴る発車ベルや、同じく「チンチンチン…」と電鈴が鳴る踏切など、今では珍しくなったアナログ設備も残っています。また、戦前生まれの電気機関車が長らく現役で、岳南富士岡駅などで保存展示されています。